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300話目はまさかの小説
「……おい。キヨ、何してんだよ」
低い声に思わず振り向く。腕を強く掴まれ、予期せぬ痛みに思わず顔を顰めた。相手の低い目線が合い、目を見開いて本当に本人かしっかりと確認する。
「な、なんでうっしーが…………」
「……何、お前そういうタイプなの?もしくはそういう趣味?」
あのままうっしーに連れて行かれ、今うっしーの家に上がって正座している。絶賛詰問中だ。何故こんな事になったのか、それは俺が一番よく理解している。
俺が今の仕事を始めたのが丁度一年程前の事だ。世間で言うところの夜の仕事。客の欲求不満を埋めてお金を貰う。客と言っても相手の性別は男性。埋めると言っても俺は掘られる側な訳だが。
俺は昔から男が好きで、抱くより抱かれたいタイプだった。女性が恋愛対象外な訳じゃないが、女性よりも男性への好意の方が有利に働いていた。本職(と言っていいか分からないが)の実況は楽しいし、日々過ごしていて不満な点もない。だが、反比例して性的欲求は溜まっていくばかりだった。復職を始めた根本の理由はそれだ。でも、本当は別の理由がある事を、自分で自分を見ないふりして生きている。
それは。
「…そう。俺、女性より男性の方が好きなんだよね」
「………別にお前の価値観を否定するわけじゃねぇけどさ、顔が広いお前がこういう事やってて大丈夫ですか?って話」
うっしーが好き、ってこと。
同性の恋愛が成就する事なんて奇跡に等しい。分かってるけど、自分の気持ちに嘘は吐けなかった。うっしーへのこの気持ちは墓場まで持っていくつもりだ。死ぬまで埋まることがない恋愛の欲求を、無理矢理埋める為に働いている。態々うっしーに雰囲気や見た目が似てる人を選んで行為に及ぶ俺は、諦める様子なんて見せていないのだが。どうせ叶わない。なら別に諦めなくても結果は変わんないか、なんて都合の良いことを考えている。
「やっぱマズい?」
「マズいだろ。…お前は有名なんだから。せめて特定の一人に絞るとか、恋人作るとかにしろよ。色んな人と体の関係持って良いことなんかほぼ無いし。今回会ったのが俺だったからまだ良かったけど、視聴者に偶然遭遇したらどうするつもりだったの?」
説得(説教)の言葉を並べるうっしーはいつもより饒舌だ。勿論怒りも伝わるが、言葉の節々から俺に配慮してくれているのが分かって、こんな状況でも頬が緩みそうになる。この優しさは”友人”としてだ。分かっている。分かっているけど。
「だって……」
「だってじゃないだろ…なんか理由あんの?言いたくないならいいけどさ」
「……そうでもしないと埋まんないもん…」
駄々をこねる子供の様な俺に、うっしーは諭しながら話を聞こうと身を寄せる。胸の内に秘めたこの感情を忘れたいのに、そういう事してくれるから、すみっコに隠していた筈の感情が引き摺り出されてしまう。
「……好きな人、忘れたいから」
「…それは、男性?」
「ん」
墓場まで持っていくと考えていたのに、優しい口調と仕草につい口をついて出た。しかも当事者に。
「叶わないからさ…諦められないけど、忘れようとしてるの」
「……そうか、辛いな」
膝の上に乗せていた俺の拳に、うっしーは手を乗せ柔く包む。何故、男が好きな俺に優しくするのだろう。惚れられたら困る、とか思わないのか。…また、無理をさせていると思った。うっしーの内面の優しさに漬け込んで甘えている。好きな人に無理をさせてまで甘えたい、なんて。俺はどれだけ性悪なんだろうか。
「その仕事は辞めれないの?」
「……辞められるなら辞めたいよ…?でも、辞めたらもう埋めらんないし…」
未だに手の甲に乗ったままのうっしーの手から伝わる温かさに、眉間に皺を寄せながら答える。顔を上げて家に来てから初めてうっしーと目を合わせた。瞬間、背筋が伸びる。
何で、そんな真剣な顔してんの?
「…お前はその忘れたい”好きな人”の隙間が埋めれれば良いんだな?」
「っ、え?…うん………」
「……その役割、俺じゃ駄目か?」
包む手に力が込められたのが分かる。何それ。そんなん俺しか得しないじゃん。でも見つめられた瞳は、嘘を言っている様には見えないものだから、より困惑した。
「…………それって、どういうこと……?」
「好きな人の代わり…とはいかないだろうけどさ、お前がその仕事辞めれるなら…」
「何それ…。俺のこと好きじゃないのに?そんな優しさなら要らない」
酷いことを言ったと自分でも分かってる。うっしーはうっしーなりの優しさで俺をこの窮地から救おうとしてくれている、と。でも、叶わないのだから、最早嫌われた方が諦めが着くかもしれない。なんて、変にポジティブに考える。
「……ごめん、今のは表の理由」
「…?」
「俺、キヨが好きだよ」
「っ、は?」
うっしーが、俺のことを好き?ついに俺は幻覚や幻聴に襲われるくらい拗らせてしまったのだろうか?現状に理解が追いつかず呆けていると、握られている手に更に力が込められたのが分かった。真っ直ぐ俺を見つめるうっしーの瞳に頰が熱くなる。
「何で、俺じゃなくて見知らぬ男に抱かれてんだろって、俺に抱かれてほしいから」
「ちょ、ちょっと、待ってよ」
「俺は…っ、お前が、どれだけ忘れる努力をしても、諦めきれないくらい好きな人の代わりになりたいんだよ……!」
うっしーが前のめりになって俺に呟く。いつもみたいにスラスラと声が出てこず、突っかかりながらも紡ぐうっしーの言葉に嘘は見えなかった。段々と今の状況を喉に通していくと、顔が熱くなる。うっしーから即座に目を逸らして、下を向いてモゴモゴと口籠る。
「…っお、俺が好き、って………ほんと…?」
「うん、好きだよ」
正面から隠さずキッパリと告白されてしまった。手がゆっくり俺の人差し指に絡み、柔く握られる。うっしーも俺も手汗をじっとりかいていて、ぴたっと指がくっ付いた。
「……………キヨ」
「はぃっ!?」
何分ほど経っただろうか。静寂を破るうっしーの低い声に吃驚して情けない声を上げる。うっしーは気まずそうに目線を逸らして続けた。
「…やっぱ、俺に代わりは無理か…?」
絡められた指の力が少しずつ抜けていく。ほとんど諦めたような声色に俺は必死に声を張って弁解した。
「いや!!!俺もうっしーのこと好きだし!!!」
「…はっ?」
「俺の好きな人はうっしーだし!!!うっしーを諦めるためにこの仕事も始めて!!!わざとうっしーっぽい人相手にしてたり、した…………し…………………」
話してる途中で自分がとんでもないことを言っていると気付いて語尾を窄めた。互いに俯いて再び静寂が訪れる。チラリとうっしーを見ると、片手で口元を隠し耳を赤くしていた。それを見て俺も茹で上がりそうなほど熱くなる。
「……じゃあ、その…、…………お、お付き合い、しませんか」
うっしーが左手を差し出して此方をじっと見つめる。反射的に俺も手を握って返事をした。
「ぜ、ぜひ……これからよろしくお願いします…」
「こちらこそ……」
顔を上げて二人で顔を見合わせる。一緒にふはっ、と笑ってうっしーが俺を抱き寄せた。俺もうっしーの背中に手を回して温もりを分かち合う。
「愛してる、キヨ」
生きていて一番欲しかった言葉を耳元で囁かれた。ゆっくりと涙が乾いた目を閉じ、小さく返す。
「うん、俺も」
コメント
2件
ふぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!! まず300話目おめでとうございます!そして付き合えてよかったな!!!!おめでとう!!!!! 語彙力無くなったから分かりずらいけどなんかすごいすごかった!!!! てか300話目ってがちすごすぎる…

初コメント失礼します☺️ キヨの努力が報われなくてよかったです😭(うっしーと両思いになれたから) 2人お付き合いできてよかったぁ、、と読みながらウルッときました! 短い文章でイメージがしやすい物語りでとても面白かったです!