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夜のベランダ。気温は少し低め。ふたり分の足音と、煙草の火だけが静かに灯っていた。
「……寒くねぇの?」
キルがぶっきらぼうに言う。
「寒い。でも、ここじゃなきゃ吸えないから」
「てかお前、最近吸いすぎじゃね?」
「……心配?」
「してねぇわ」
そう言いながら、キルは自分の煙草に火をつけた。
ふたり、隣り合ってベランダの手すりにもたれ、しばらく無言。
煙の匂いと夜の静けさに、弐十がふと呟く。
「……今日、さ。配信中に***と仲良さげにしてたでしょ」
「は?」
「俺、ちょっとだけムカついたんだけど」
「……知らねぇし。仕事だろ」
「……俺の前では、そういう顔しないのに」
キルが煙を吐き出す。少し咳き込んで、睨む。
「……なんだよ。妬いてんのか?」
「……妬いてるよ。俺、案外独占欲強いから」
「っ、は? なんだそりゃ」
「なにその反応。悪いけど、俺、“トルテさんは俺だけのもんだ”って思ってるから」
弐十がキルの顎をつかむ。
強くないけど、逃げられない力加減で、顔を正面から見据えた。
「俺以外に、そんな顔すんなよ。……ムカつくから」
「……っ」
顔を赤くしたキルが、目を逸らす。
「弐十、お前、ちょっと最近おかしいって……」
「自覚あるよ。トルテさん可愛すぎるから、そうなるだけ」
「……バカか」
弐十は煙草を灰皿に押し付けた。
そのまま、ふたりの距離が近づく。
「なぁ……ベランダで、すんのかよ」
「…………だめ…?」
そして、静かに唇が重なった。
煙と夜の静寂の中、少しだけ熱を帯びたキス。
「……お前、ほんと、ずりぃよ」
「知ってる。でも……お前が俺に甘える時の顔、もっとずるいよ」
「……っ、うるせぇ……」
———
そのあと、ふたりはソファに移動して、
時間をかけて、互いの体温を確かめ合った。
煙の匂いと、肌の温もり。
心の奥の、独占欲と執着と愛情。
全部、今夜だけは——
許されるような気がしていた。