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# 第4話 白い廊下で
野球部の練習中だった。
いつも通りの練習。
いつも通りの動き。
――のはずだった。
「っ……!」
ボールを捕ろうとした瞬間、指に強い衝撃が走った。
鈍い痛みが、じわじわ広がっていく。
「すち!大丈夫か!?」
「……うん、たぶん……」
そう答えたけど、指は不自然に腫れていて、まともに動かせなかった。
結局、そのまま近所の総合病院へ行くことになった。
診察の結果は骨折。
軽いものらしいけど、しばらく固定が必要だと言われた。
処置を終えて、白い包帯を巻いた手を見つめながら、ため息をつく。
「……らしくないな」
会計を待つため、廊下の椅子に座る。
消毒液の匂いと、靴音が響く、静かな空間。
その時だった。
ふらり、と視界の端で人影が揺れた。
「……?」
入院患者らしい青年が、
壁に手をつきながら歩いている。
足取りが不安定で、今にも倒れそうだった。
「だ、大丈夫ですか?」
反射的に立ち上がって、近づく。
顔が見えた瞬間、心臓が止まりそうになった。
「……らん、らんらん?」
その人は、ゆっくりと顔を上げた。
少し痩せて、顔色が悪くて。
でも、間違えようのない幼なじみ。
「……す、ち……?」
かすれた声。
それだけで、胸がぎゅっと締めつけられる。
「どうして……ここに……」
「それは、こっちの台詞……」
言葉が、うまく出てこない。
再会したかったはずなのに、喜びより先に、驚きと戸惑いが溢れてきた。
近くにあった椅子に、らんらんをそっと座らせる。
手首は細くなっていて、制服じゃない病衣がやけに現実を突きつけてきた。
「……ごめんね、急にいなくなって」
らんらんは、困ったように笑った。
その笑顔が、昔と同じなのが、逆につらかった。
「……病気、なの?」
震えそうになる声で、聞く。
らんらんは、少しだけ目を伏せてから、静かに頷いた。
「うん。今、入院してる」
「癌…なんだ…ッ」
それ以上、何も言わなかった。
でも、それで十分だった。
噂は、噂じゃなかった。
予感は、現実だった。
白い廊下の真ん中で、
俺はようやく、らんらんが消えた理由を知った。
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