テラーノベル
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「──────ハローエブリワン!」
天使と悪魔の戦争が再開し始めた時、不意に死角から声が聞こえ、思わず振り返る。しかし、背後には誰もおらず、上にも、横にも、前にもいなかった。空耳だろう、そう切り替えて、私が戦場に向かおうとする。けれど、それが空耳ではないとわかった。何故ならば体が金縛りにあったかのように動かない。どうして、という声をすらも出せなかった。
「この声はどこから?と思った皆様は賢い方ですね!こちらの声は、天使と悪魔、両方の方の脳内に直接流していますよー!平等にするため、同時にですよ!」
脳内。つまりテレパシーということか。と納得しかけたがそれだとどうもおかしい。この声の主の言っていることが本当であれば悪魔と天使の両方にテレパシーなんて無茶だ。まず、範囲が広いし、相手に同意のないテレパシーはさらに魔力を使う。それに、戦場で戦う悪魔もいるだろう。最近の戦法の主流は魔力を遮断する霧。それを無視してテレパシーをすることもできなくは無いがそれは自分の魔力全てを注ぐのと同義であり、魔力がなければ反撃ができずにそのまま死ぬから無意味なはず。
ダラダラとこの状態の異常さについて考えたが、ありえないが、もし、全てを真実と仮定するならば───そいつは魔力を無限と言っていいほど持っていることになる。
「コホン、名前を名乗るのを忘れました。私は神様の使者である《メテヲ》と言います。」
その言葉と同時に、私の頭の中に突然金髪のロングヘアの生命体が現れる。しかし、やつの姿は異常であった。整った顔立ちに、夕焼けのような瞳、金の絹のような美しい髪色と髪質。それだけ見ればただの顔の良い奴になるのだが、その頭上に浮かぶのは天使の光輪。そして彼の上半身から生えているのは悪魔の翼。──────目の前のそいつは天使と悪魔の性質を両方兼ね備えている、不気味な生命体であった。
「自己紹介も程々に。私は神様の信託の元、天使と悪魔の戦争を止めにまいりました。」
それはつまり、どちらかを意図的に勝たせようとする神の介入が入る、という意味だった。ある程度生きたものならばわかるそいつの異常な魔力量とそして異常な見た目。見た目だけではどちらの味方になるかはわからなかった。だから、やつの次の言葉を待つ。
「私は、神様のご意向のままに。───天使と悪魔を全て滅ぼし、新たな者共で新たな魔界、天界を作り上げます。」
───私は、途端に全身に寒気が走る。こいつは誰の味方でもない。全てを滅ぼす悪魔より悪魔で、天使よりも平等な───。
「私は隕石のように広範囲を全て滅ぼします。そして、メテヲのヲは終わりのヲってことで!メテヲ、って言います!いい名前でしょ?」
「あと月が3回沈んだ時、それは天使と悪魔の終わりを告げる鐘として君達を絶望へと落とす。終末まで、お好きなようにお過ごしください。それでは!良い終末を!!」
そう言って、脳内に現れた人物像とともにその声はその後聞こえることはなかった。
…月が3度沈んだ時、それは3日後には命がない、ということ。
ひとまず、私のやることは決まっている
「限定アイス買お。」
──────無名の悪魔視点
──────メメさん視点──────
2日前に、天才が狂ってしまい、自害した、と茶子からの報告が上がっている。死ぬ直前に天使と悪魔が滅ぶだとか、全てが無意味だ、とか神は代替わりするだとか。そんな戯言を吐いて死んだ、と茶子は言っていたが、私はそうは思わない。仮にもこの世界から《天才》という名を冠したやつが適当なことを言って死んだわけではない。しかも、詳しく聞いてみた限りこの先の未来に希望が見えないから先に死のう、という考え方のようだった。
つまり、これは真実───?
それを確信させるかのように、先程脳内で神の使者と名乗るメテヲというやつがこの世界の終末を予言した。残り三日。たったそれだけの日数で私は死ぬ。だって、全ての天使と悪魔がいなくなれば戦争が終わるのだから。こんなにも単純な方法で私は自由になれたんだな、としみじみ思うが、どうせ実現できない、ということはとうの昔に納得していた。だからこそ、現実的に行こうとしていたのに。こんな、突然現れたよく分からないやつによって私達は死ぬらしい。
と、物思いにふけっている場合ではない。我々にとって3日は瞬きひとつで終わってしまう時間なのだ。最後は有意義に過ごそう。
残り三日目はルカさんだった魂で作られた神器を天使から返してもらった。戦争はもう無意味だと悟った天使はさすがに戦争を続行させることはなく。全て返してくれた。そうして、なんとも呆気ない第三次天使悪魔戦争の幕の閉じ方だった。
残り二日目。全ての悪魔の墓参りに行った。時間がなくて行けなかったり、死体がなかった悪魔達の。戦争が終わったことで、弔う余裕のなかった悪魔たちの死体を火葬し、土に埋めた。数え切れないほどの死体だったが、協力してくれた悪魔達も思いのほかいたりして一日で全てを終えることができた。その中には私のために命をかけた悪魔もいた。名前も、顔を未だ鮮明に思い出せる悪魔もいれば、見たこともない悪魔の死体もあった。
私達が全員死ねば、また輪廻して転生して巡り会えることを願っておく。
ラスト一日。私は、すでにこの終末最後の日に何をするかを決めていた。それをするためには2人必要で。そのうちひとりはもういないから。だから私は最後のひとりを誘う。
「私と一緒に踊ってくれませんか?」
「…え?」
月明かりに照らされたその緑髪が風に揺れる。その髪が揺れたことで、その表情がよく見える。その顔には嫌そうな気配ひとつなく、ただただ驚いている、という驚愕の表情だった。
その相手───イエモンは確認するように、慎重に話し始める。
「えと、どうしてですか?今日が終われば俺たち死ぬんですよ?」
「そうですね。だからこそ、ですよ。最後くらい仲良くいきましょ?」
私がそう平然と言い切れば、イエモンはしばらく黙考した後、とある条件を出してくる。
「条件があります。」
「なんですか?」
「…これから踊るのは今の俺達ではなくて、昔、小さかった頃の俺たちというていで踊りませんか?」
「…その方がいいかもですね。」
そう言って了承すれば、イエモンは私の手を取り、そして踊り始める。
小さい頃、最低限のマナーはと、踊りを習わされてた時期があり、そのお陰でワルツが踊れるようになってしまった。
終末によって死への恐怖と、緊張によって上がった心拍数が私たちのダンスのリズムを刻み、私達はそれに合わせて足を動かし、手を動かして踊る。
子供の時、と言っても今はそれとだいぶ違う。立場も、顔立ちも、声も、見た目も、関係性も、何もかもが違う。けれど、唯一の良い点はダンスの講師がいないお陰で、ステップを間違っても怒られることはないし、自由に踊っても何も言われない。全ての束縛から放たれ、浮き世にでも来た気分だった。
「そういえば、その服どうしたんですか?」
そういいながら、私の服を見てくる。いつもなら青系の服しか着ない私が、今日は赤の服を着ていた。私は、あぁ、と自分の服を見てから、イエモンに目線を移してから答える。
「これは師匠から貰った服ですよ。1番、思い入れがありますので。」
「師匠…あぁ、ラテさんか。懐かしいなぁ。俺達3人で炎魔法を一緒に覚えたわ。」
「そうですよ。私たちの初めての攻撃魔法ですから。…ちなみにラテさんは教え子と一緒に終末を過ごすらしいですよ。」
「メメは良かったの?ラテさんのとこ行かなくて。」
「別にいいですよ。死んだ後、皆と話せますから。けど、踊ることは体がないとできませんから。」
「相変わらず変な感性をしてますね。」
「イエモンも、結局悪魔を見る目は最後までなかったですね。表面だけの情報だけ見るのはやや不正確かと。」
「そこは、来世に期待しといてくれ。もう今世で直せる時間はないし、そこでだいぶ苦しんだからなぁ。」
「ヒナちゃんの気持ちに寄り添わなかったあなたも良くなかったですよ、あれは。」
「過去を掘り返すのはやめましょうよ。」
「未来はもうないのにですか?」
「今があるじゃないですか。」
そんなに最後の雑談をしながらも踊る手を緩めない。1、2、1、2───繰り返して、繰り返して。少しアレンジを加えてみたり。
そんなダンスとともに私達は死を受け入れた。
これでIルートは終わりとなります!てことで、あと数話でれいまり編も以上となります!!長い!!
ちなみに、この結末にしようと考えていました。イエモンとメメが手を取りあって踊る。無事締められて良かったです!ちなみに、踊る悪魔という言葉がありまして、
☆GoogleAIから引用☆
踊る悪魔…主にベネズエラの伝統的な宗教儀式(Diablos Danzantes)を指し、赤色の衣装で善と悪の葛藤を表現する行事
・文化儀式的な意味
ベネズエラのサン・フランシスコ・デ・ヤレなどで、聖体祭の際に悪魔に扮して教会にひざまずき、神への服従と善の勝利を誓う祭事。
情報は置いたので解釈は皆様のご想像に。
ちなみにこの物語を投稿する前は全ての物語を合わせて666話になってたんですよねぇ…ギリ入らなかったのでそこは惜しいと思ってます。やっとれいまり編も終わる…めっちゃめちゃ長いですね。うん、疲れた。
それでは!おつはる!
コメント
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悪魔の踊り方っていう曲を思い出した