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「涼ちゃん、今日、これ使うから〜。」
仕事が終わり、帰り支度をしていると、元貴が僕に『藤澤涼架お呼び出し券』を渡してきた。一体僕は、これを何枚綴りであげたんだっけ?
「そんなのもういらないだろ。」
若井が、元貴の後ろから覗き込む。確かに、僕を誘うのに、もうわざわざそんなの使わなくても。
「なんか、今さら捨てにくいから、早く消費しちゃおうと思って。」
「おーい、そんな理由かい。」
僕がツッコむと元貴が笑う。
そして、若井がすかさず口を挟む。
「俺、もらったその日に即捨てたけど。」
「まじ。俺もそーすれば良かった。」
「おいおい…僕の気持ちを…。」
二人して僕をいじってくる。僕たちの間に流れる空気は、こんなにも穏やかなものになっていた。僕は、あれからも変わらず僕たちに接してくれる若井に、心から感謝していた。
元貴は、フェーズ2になって、より自由に動ける様になった。とても生き生きしていて、楽しそうに活動する姿に、僕もホッと胸を撫で下ろす。
相変わらず忙しそうにあらゆる仕事へ奔走 しているが、どの現場にいる元貴も、輝いて見えた。
「今は落ち着いてるの?」
元貴の部屋へ入り、僕は持ってきた荷物を片付けた。元貴の家に呼ばれるのは久しぶりだ。元貴の仕事が立て込む時は、僕は自分からは決して元貴の家へ来ない。僕がいない間に邪魔にならぬ様、元貴が忙しくなるタイミングで、いつも自分の荷物を元貴の部屋から全て引き上げることにしている。元貴の支えでありたいと思うが、重荷にならない様、気を付けていた。
「うん、ひと段落ついた。まあ、またすぐに次が控えてるんだけどね。」
「ほんと、元貴は休みが嫌いだよね。」
「嫌いってか、苦手、かな。なんかしてないとすごい不安になる。」
そっか、と僕はソファーに座っている元貴の隣へ腰掛けた。
「…涼ちゃん、嫌になってない?」
元貴が僕に問う。少し不安を含んだ表情をしている。
「なるわけないでしょ、何年こういう元貴を見てきたと思ってんの。」
「もう十年かぁ。」
「そうだね、出会ってからは。」
「十年越しの恋だな。」
元貴がぼそりと呟く。
「…なが…。」
「…ね、ヤバいね、俺たち。」
クスクスと笑い合う。僕は、改めて元貴に向き合った。
「元貴はさ、僕のどこが好きなの?」
「顔。」
もっと悩むとか、何聞いてんだって怒られると思っていたのに、即答されて、僕は目を丸くした。
「か、顔?」
「顔。」
「そ、うだったんだ…へえ…。」
もし好きなところを言ってくれるなら、もっと内面的な、なんかそんなのを期待してただけに、僕はちょっと納得いかない感じで視線を外した。
「…このタレ目でしょ。」
僕の目の横をなぞる。僕はびっくりして元貴を見る。
「んで、ちょっと曲がった鼻。」
笑いながら、鼻を触る。
「…薄い唇。」
僕の顎に手を添えて、唇を指でスルッと撫でる。僕は恥ずかしくなって、下を向く。
「な、なんだ、もっと内面とかの理由かと思ったのに…。」
「涼ちゃんに好きになる内面なんかないでしょ。」
「あるよ!」
「どこ?」
「えっと〜…。」
…ないか。
元貴が、クスッと笑って、僕の顔を両手で挟む。
「…うそ。外も中も全部すき。」
そう言って、ゆっくりと顔を近づけ、唇を重ねた。僕の心臓が痛いほどに早くなる。
出逢った時は、あんなに幼く見えた元貴は、実はすごく大人びた子だった。そして、共に成長してきた今、名実共に逞しく、立派な青年へと変貌していた。
いつの間に、こんなに大人になったんだろう…。僕は目を閉じて、元貴の永く優しいキスを受け入れる。
「…一緒にお風呂入ろ。」
「え…。」
昔は、若井やその他の人と一緒にわやくちゃでさっさとお風呂を済ませることもあったけど、それとこれとは全く意味が違うことだけは、わかる。
「…電気は、消して欲しい…。」
「なに乙女みたいなこと言ってんの。」
「だって!恥ずかしいじゃん!」
「このお腹とか?」
プニッと僕のお腹をつまむ。
「もう!絶対一緒に入んない!」
「ごめん、ごめん!うーそ!」
僕が怒って立ち上がると、後ろから縋って抱きついてくる。全く元貴は…人の気も知らないで…。
結局、浴室の電気は消して、脱衣所だけ点けておく、という妥協案になった。元貴が先に入っているので、僕が服を脱いで後から入る。
「こっち見ないでね。」
「はいはい。」
そっと浴室のドアを開けると、元貴が目を瞑っている。
急いで中に入り、ざっと身体だけ洗って、浴槽へ身体を沈める。
「もういい?」
「はい…。」
元貴が目を開ける。真正面から向き合って、やっぱりなんだか照れ臭い。
「こっちおいでよ。」
「ん?」
「背中こっち向けて、ん。」
元貴が手を広げて待つ。僕は浴槽内でなんとか身体を回して、元貴の腕の中に後ろ向きにすっぽりと収まる。
元貴が後ろからお腹に腕を回し、僕の肩に顔を乗せた。
「…あー、しあわせ…。」
元貴がしみじみといったように呟く。
「…うん、僕も。」
そう返すと、元貴が首筋にキスをした。ビクッと身体が震え、身を硬くする。
「…怖い?」
「…ううん…いや…うん…ちょっと…。」
元貴が怖いんじゃない。これから何をどうしたらいいのかわからないから、それが少し怖い。
「…ごめん、僕、その…全く経験がないから…どうしたらいいのかわかんなくて…それがね、ちょっと…怖い…かな。」
元貴はきっと、僕たちの関係を先に進めたいと思っているんだろう。もちろん僕だってそうだ。十年越しの恋がやっと実を結んで、相手の心も身体も全て欲しいと思ってしまうのは、きっと当たり前の感情なんだと思う。
「俺だって、別に経験ないけど。」
「…そう…か。…ど、どうしたら、いいんだろうね…。」
「涼ちゃん…。」
名前を呼ばれて、ゆっくり顔を元貴へと振り返ると、唇へ優しくキスをされた。僕は目を閉じて受け入れると、元貴が何度もキスをくり返す。まるで、僕の口を食べてるみたいだな、とちょっと思った。
「涼ちゃん口開けて?」
少し唇を離して、元貴が言う。僕は薄目を開けて、元貴の言う通り、唇の力を緩めた。
元貴からのキスが再び始まり、隙間から舌が入ってくる。ん、と声が漏れてしまって、その声と舌が絡まる音が浴室内に響き、僕は顔がみるみる熱くなっていった。
胸の奥がツンとするような、お腹の下あたりが切ない様な、深いキスをくり返すうちに、身体がどんどんと欲を持つのが分かる。
「…いきなりは、無理だろうけど、ゆっくりでいいから、俺、涼ちゃん抱きたい…。」
とろける様なキスの後、切ない顔で元貴にそう言われた。あ、僕が、その、受け入れる側なんだ…と頭の隅で意外と冷静に考えてしまって、ちょっと可笑しい。
「…やり方、調べないとね…。」
僕がそう言うと、元貴は嬉しそうに抱きついてきた。
このままだと上気せてしまうので、元貴から順番に頭を洗って、お風呂から上がった。
お互いにバスローブを羽織り、リビングで少し水分を摂る。
「もう、寝ようか。」
元貴がそう言うので、こくんと頷いて、歯磨いてくる、と洗面所へ向かう。
元貴もついてきて、後ろから抱きつかれながら、二人で歯を磨く。
元貴と恋人同士になれてから、しばらく経つけど、ずっと元貴が仕事で忙しくしていた為に、キスまでと、たまーにハグをして一緒に寝る、そこまでの関係だった。
僕は、永い片思いの末だったので、気持ちが通じ合えただけでも充分幸せすぎるくらいだったが、そこはやっぱり大人の恋人同士。ここへ踏み込まないわけにはいかないみたいだ。
「いこ。 」
「うん…。」
歯磨きを終え、元貴に手を引かれて寝室へと向かう。僕も、元貴の身体を触りたいし、触って欲しい。だけど、ゆっくり、とは、どんな事をどこまでするのだろう。あまりのわからなさに、不安と期待と欲と、頭の中がパンパンになってきた。
ベッドに横たわり、元貴が上に被さる。この体勢は…元貴に委ねればいいのかな…?
元貴の顔が近付いてくるので、僕は目を閉じて再びキスを受け入れる。キスをくり返し、どんどんと深くなっていく。
ビクッと身体が震える。元貴の手が、僕のモノを触ったからだ。すっかり反応しているそれを、優しく手で撫でたかと思うと、暖かく包んで上下に動かし始めた。
これは、思ったより、恥ずかしい…!しかし、自分で触るより遥かに気持ちのいいそれを、僕は身を捩りながらも受け入れる。
元貴はキスを止めると、僕のモノを触っていた手で、僕の手を取り、自分のモノへと持って行く。元貴のも、熱くて硬い。
「…涼ちゃんも、触って…。」
「…うん…。」
バスローブの隙間から、お互いのモノを触り合う。また元貴がキスをしてきて、僕は堪らなく興奮した。元貴も僕も、熱い息を繰り返し吐き、それでもお互いに舌を絡め合う事をやめない。だんだんと互いの手の動きが激しさを増す。僕は声がどんどんと出てしまって、元貴のを触る手が疎かになっていく。
元貴が荒い呼吸をしながら、唇と手を離す。僕も、一度手を離して、元貴の次の動きを待つ。
「…涼ちゃんに、舐めて欲しいんだけど…だめ?」
僕は頷きながらも、できるかな…と少し不安になる。歯を立ててはいけない、ということくらいは知ってるけど、大丈夫かな…。
元貴と上下を入れ替わり、僕は元貴の足の間に入り込む。元貴は完全に寝そべらず、少し上体を起こして僕の様子を見ている。
片手で元貴の熱いモノを握り、とりあえず先の方を舌で触ってみる。ぬる、と先端から溢れていた液が、舌に付いた。それと僕の唾液を一緒に塗り広げる様に、先の部分を満遍なく舐める。
元貴の小さな声が漏れて、それがとても可愛いと感じた。僕は、思い切って全体を口に含む。
「ぅわ…。」
元貴が声を漏らし、僕のやり方が合っている事を示してくれる。口の中で舌を動かし、それと同時に頭も上下に揺する。
「うわぁ〜…ヤバいそれ…。」
元貴が身体をベッドに沈めて声を出す。僕の動きが激しくなって、元貴の足がモゾモゾと動き、快感を逃がそうとしてしているようだ。小さな呻きのように、吐息と声が入り混じる。
僕は、少し顎が疲れてきて、ぷは、と口を離した。
「涼ちゃん、きて。」
元貴が腕を広げる。僕はそっと横になり、元貴の腕の中へと収まった。元貴が、ぎゅーっと力を込めてくる。
「…めっちゃ気持ちよかった、ありがと。」
おでこにキスをされた。
「…もういいの?」
僕がそう言うと、元貴が困った顔で僕を見た。
「…ほんとは、最後までしたい。」
「最後?」
「…涼ちゃんの中に入れたいよ〜…。」
頭を抱きしめられて、ぐりぐりと顔を摺り寄せられる。中にって…?
「…えっと…それは…どこ…。」
「…ここ。」
お尻を触られた。え!で、でも、ゆっくりって言ってたし…え…?!
「き、今日じゃ…ないよね…?」
「…うん…。」
元貴が上体を起こして、僕を見下ろす。
「…でも、そのうち…がいいかな。チャレンジしていこう?」
潤んだ瞳でそう言われるともう、うん、としか言えないじゃん。僕って、案外流されやすいのかも知れない、気を付けよう…。
「…ちょっと解してみる?」
「え゛…!そ、それはちょっと…まだ…。ごめん…。」
元貴がしゅんとする。うぅ…でもなんの準備も出来てないし、知識もないし、怖いし…。
「…じゃあ、入れなかったらいい?」
「…ん?どういう事?」
「大丈夫、痛くないから。気持ちいだけだから、たぶん。」
そう言って、元貴はサイドテーブルからローションを取り出す。い、いつの間にそんなモノを…。
「えっ…、なにするの…?」
「ん?」
元貴はニコッと笑って、答えない。え、怖いんですけど、大丈夫だよね…?まさかそんないきなりなんて…ねえ?
元貴が、僕の足の間に入って、ローションを手に取る。手のひらに塗り広げて、温めているようだ。
それを僕のモノと元貴のモノに、両手で塗っていく。
「あっ…なに…。ん…っ。」
手で触られただけなのに、ヌルヌルが加わるだけで、快感が倍増した。思わず声を上げる。
元貴が僕の両脚を持つと、ギュッと脚を閉じさせて内腿に元貴のモノを挟んだ。
「…これ…?」
「うん、スマタ。やってみていい?」
もう訊く前にやってるよね?と思っていたら、元貴が腰を動かし始めた。僕の内腿と、さらに元貴と僕のモノが擦り合わさって、くすぐったいような、気持ちいいような、初めての感覚だった。
「あ…結構…いい、感じ。」
元貴の熱の籠った声に、僕は喜びを感じた。元貴が、僕で気持ちよくなってくれるのが、すごく嬉しい。
僕は、脚の間から覗く僕と元貴のモノを、両手で包んだ。
「あ、ヤバ、それ気持ちいい…!」
「うん、ぼく…も、きも…ち…!」
元貴の腰を動かすスピードが早まり、果てようとしているのがわかった。擦れ合う水音がいやらしく響いて、僕たちは息を荒げる。
「あ、イキそ…イッていい…?」
元貴が僕に懇願する。僕はドキドキしながら、頷いて、下半身を見つめた。
「ん…!」
元貴が小さく声を漏らして、僕のお腹に白濁液を出した。胸の辺りまで飛んできて、僕は目を瞑った。
肩で息をしながら、元貴が僕に覆い被さってキスをくり返す。
「涼ちゃんの脚、めっちゃ気持ちよかった…。」
「…ん…。」
そう言ってまたキスをしながら、元貴の手が僕のモノを強く擦り上げる。僕は脚をもじもじしながら、元貴に塞がれた唇で声を漏らす。
「ん…ん………あ…っ…。」
「涼ちゃんも、イッていいよ。」
耳元で囁かれ、お腹の奥がゾクゾクと疼く。ローションでヌルヌルになった手で、激しく擦られ、僕は呆気なく達してしまった。元貴が、僕の欲が出てくる様をじっと見つめる。
「わー…涼ちゃんもまだまだ若いねぇ…。 」
「…やめ…。」
力無く、恥ずかしいからやめてと言うも、声にならなかった。
「…すごい、二人ともベタベタだ。」
「うん…もーいっかい、お風呂入らなきゃ…。」
元貴は、僕にチュッと優しくキスをして、行こ、と手を引いた。僕たちは、バスローブで上手く包んで、身体についたいろんな液を床に落とさないように浴室へと向かう。その姿がなんだか滑稽で、二人で笑いながら並んで歩いた。
自分たちの身体やベッドなどの後処理を終えて、二人でくっついて横になる。
「んー、今日はよく寝れそう。」
「そう?よかった。」
「…涼ちゃん。」
「うん?」
「これからもさ、仲良くやってこうね。」
「うん、よろしくね。」
「俺たちの関係もさ、フェーズ上げてかないと。」
「ふふ、うん。そうだね。」
「…あっちの方も、そのうち、ね。」
元貴が耳元で囁くから、僕はまた顔が熱くなる。僕は静かに頷いて、元貴の胸に顔を埋めた。
まだ少年と呼べそうな君と、あの日に出会えた奇跡。仲間といる素晴らしさも、苦悩も、全部一緒に経験してきた。
君は、自分の世界を持っているし、この世界にも懸命にその痕跡を遺そうとしている。
君の強がりなところも、必死なところも、可愛いところも、脆いところも、儚いところも、全部、僕が掬い上げたい。そんなことはできないんだろうけど、心からそう思うよ。
「元貴、愛してる。」
「うん、俺も、愛してるよ、涼架。」
僕たちは、十年分の愛を以て、これからの二人の道を作り続けていくんだ。
僕たちの道は、きっとすごい形になるんだろうな、と目を閉じながら、笑みが溢れた。
これからも、君の歌を、一番傍で愛し続けるよ。そして、そこに、ほんの少しでも、僕が彩りを添えられたら、
それだけで
幸せだ。
コメント
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なんか面白そうだなぁ〜…と昨日から追い始めてみたら昨日完結だったんですね! おめでとうございます! なんかもう…💙が💛ちゃんに話を持ちかけてきたときぐらいから気持ちグッチャグチャになってたんですけど…❤️くんも💛ちゃんも幸せでいてくれるならそれで プリ小説で一応ミセス書いてるんですがこっちでもおんなじの書こうと思ってるので…出来たら報告しにきます!(独り言として扱ってもらっても大丈夫です…)
完結おめでとうございます✨ありがとうございます😊 なんだこの可愛いアラサーたちは!とニマニマしながら読みました笑 この💛ちゃんが続編ではオトナのあれこれ言い出すのかと思うと、これまたニマニマです🤭 (今回のお話は時系列的に23年末ぐらいですか?もう少し先ですか?🥹)
完結ありがとうございます💕 2人の不器用で慣れてない感じが、とても素敵でした✨ 途中、もう💙ちゃんにしちゃいなよ💦 って思っちゃったけど、2人の思いが通じて良かったです✨ そしてセンシティブ🤭 初々しくて、もう、きゅんきゅんでした😍 続編の2人も楽しみです💕