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人形パロ
むだしき
四季くんは人形⇒転生してます。
無陀野 無人:幼少期、街中のドールショップ
で見た、 四季にそっくりな人形
が忘れられない。四季が好き。
一ノ瀬 四季:店のショーケースから見えた
無陀野に会いたくて転生した。
無陀野が好き。
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学パロ
鬼桃関係なし
START
────────────────────────
幼い頃の俺は、今と変わらず無表情で、愛想の一片も持ち合わせてはいなかった。
大人たちの目には、何を考えているのか、あるいは何も考えていないのかさえ判別できない、空虚な子どもに映っていただろう。
けれど、両親だけは違った。そんな俺の無機質ささえも慈しみ、溢れるほどの愛情を注いで育ててくれた。
ある日のことだ。
暖かな春風とともに、街の中を、母と一緒にゆっくりと歩いていく。
いつものように感情の読み取れない眼差しで、とりとめもなく辺りを眺めていた俺の視線が、ふと、ある一点で止まった。
街の喧騒から取り残されたような、一軒の店がそこにあった。
そこは、中世のヨーロッパを感じさせる雰囲気を醸し出す、
かなり年期の入ったドールショップ。
その雰囲気に惹かれ、母を連れて店の近くまで寄った。
店のには沢山の人形が陳列されていて、どれも同じような金髪で、服装も全て似たようなもの。さらには、髪型までも瓜二つ。
まったく、どれも個性がないな。
興味を失った俺は、その場から離れようとした。
その時、
店の奥に見えたドールケースに飾られている
一つの人形の姿が、俺の目に飛び込んできた。
ほかの人形とは違い、
髪は長く、艶があり、美しい紺色で、
瞳は紅く、宝石のよう。
目元には、愛らしい二連ぼくろ。
唇は潤んでいて、水のように透き通っている。
俺は、その妖艶な見た目をした人形に視線を奪われた。
もっと近くで見たかったがために、店のガラスに張り付く。
じっと観察していて、あるひとつの違和感に気づいた。
その子は、頭に純白のレースをかぶり、服は白く薄汚れたワンピースを着ている。
でも、
ほかの人形は、貴族の着るような、鮮やかで豪華な服装をしている。
なぜ、あの子だけワンピースなのだろう。
あの子にも、綺麗な服を着せてあげたら良いのに。
そう思っていたら、店主らしき人物が、
その子だけを店のショーケースから取り除いた。
雑に持ち上げられては、不清潔な袋に入れられて、店主と共に、路地裏へと消えていく。
「…え、」
気づけば声に漏れていた、遺憾の念。
あの子は何処に連れていかれてしまったのだろうか、
追いかけそうになったところを、母に止められて、その日は渋々帰ることになった。
今日見たあの人形は、もう二度と会えないのだと、母から告げられた。
その事実に俺は肩を落とす。
でも、
なぜか、”あの子”と
また、会えると思っている自分がいた────
────────────────────────
硝子一枚を隔てた向こう側。
1人の幼い子供がこちらを見つめる。
鋭く冷ややかな眼窩に沈む、漆黒の瞳。
表情に揺らぎはないが、その苛烈な感情は言葉よりも雄弁に行動へと宿る。
その行動を、その子の親らしき人物は、 撫でるような目でみまもっている。
指を通せば滑らかに流れるであろう、手入れの行き届いた黒髪。
――俺とは違う。
あの子は、人の温もりを”知っている”。
俺は、
手入れをされることはあっても、その指先はいつも雑で、時には忘れ去られる。
纏わされるのは、決まって一番古びた、年季の入った服。
店の奥で隔離されているから、誰の記憶にも残らず、誰の熱も届かない。
俺はこの冷たい空間の端で、透明な壁の向こうをただ見つめるしか、許されていなかったから。
羨ましい。
人の体温を知りたい。
人に触れてみたい。
そう願う俺にとって、その子の存在は、
薄暗い店内に差し込む日光よりも眩しかった。
深淵を湛えたその瞳に、俺は果たして「個」として映っているだろうか。
それとも、ただの器としての写像に過ぎないのか。
その瞬間、
思考を遮るように、視界がぐにゃりと歪み上がった。
ああ、終わる。
俺を、心のない「物」として、どこかへ捨て去るのだ。
あの子もどうせ、塵を払うような手つきでこの場を去るに決まっている。
そんな諦観を抱いて見上げた先――。
その子の表情が、俺の拙い予想を鮮やかに裏切った。
そこにあったのは、冷徹な拒絶などではない。
引き裂かれるような、遺憾の色だった。
あの子は俺を「物」としてではなく、唯一無二の「個」として見てくれていたのだろうか。
路地裏へと連れていかれる俺を、あの子は懸命に追いかけてくる。
まるで、自分の一部を奪い返そうとするかのように。
遠ざかっていく視界のなか、あの子は今にも泣き出しそうな顔で、母親に宥められながら立ち尽くしていた。
――ああ、そうか。
俺は、あの子にとっての「必要な存在」に、なれていたのかもしれない。
あの子に、また、会いたい。
その思いだけが、自分の魂に、深く刻み込まれていた。
どれほどの間、車に揺られていただろう。
やがて、冷え切っていた俺の体は熱を帯び、激しい炎に包まれ始めた。
「人形」としての俺は、この業火の中で終わりを迎える。
けれど、この熱さは、この痛みは、新しい幕開けの鼓動だ。
次は「人間」としての人生を、あの子と一緒に────。
そう強く信じて、俺は燃え盛る炎のなかで、静かにまどろみへと落ちていった。
────────────────────
時は経ち、俺ももう高校2年生という、大人に近い年齢になってきた。
今日も朝早くから起きては、身支度と朝食を済まし、学校へと向かう。
いつもの通学路を、いつもどおりの時間で通っていく。
途中にある、長く待たなければならない信号を、今日はタイミングよく青で渡ることができた。
何かいい事があるかもしれないな。
浮ついた心で登校し、学校に着いた時刻は、いつもより15分早かった。
一番乗りに、教室に入っては、自分の席に座る。
しかし、異様に落ち着かない。
気を紛らわすべく、常に持ち歩いている、お気に入りの小説を読み返す。
内容は、”人間に恋をした人形が転生して、その恋した人間と結ばれる。”という、転生ものの恋愛物語だ。
… 人形が転生して、か
もし、そんなことがあるのなら、
あの日に見た人形も、誰かを探して、転生していたりするのだろうか…
まぁ、そんな事、現実で起きるわけがない。
ただの夢物語で、
俺の、勝手な妄想…。
ぱたりと小説を閉じては、窓の外を眺める。
眩しい朝日を浴びて、心を落ち着かせていた時。
「え、? 」
と、抑揚のない声が教室に響く。
声に導かれるまま顔を向けた俺は、激しい既視感に襲われた。
そこにいたのは、
かつて店の奥で見た「あの子」の化身のような男の子だった。
雅な紺色の髪に、吸い込まれそうな紅の瞳。目元の二連ぼくろに至るまで、
その容姿はドールケースの中から、俺の心を完璧に射抜いた人形と、あまりに瓜二つだ。
そして、残酷なまでに整ったその顔立ちは、人間離れした、凄絶なまでの美しさを放っていた。
しばらくの沈黙が続く中、
「……やっと、見つけた」
と、少年の無機質な唇から、微かな吐息とともに言葉が零れた。
わけが分からず、黙り込んでいると、
「覚えてないのか、?……ドールショップに居た、人形のこと」
彼が落としたその声は、ひどく脆く、今にも消えてしまいそうに寂しげだった。
その問いは、まるで俺と遠い過去に会ったことがあるかような、確かな記憶を宿している。
まさか、本当に小説のようながあるのか?
半信半疑な思いが募る中、今一度、彼とあの子を重ねる。
薄暗い店の奥、埃の舞うドールケースの中で、麗らかな髪の間から、俺をじっと見つめていた深淵の紅い瞳。
永遠に動くはずのなかった、その「彼」に酷く似た少年が、紺色の髪を揺らし、同じ紅い瞳で、俺を真っ直ぐ見つめている。
本当に、”あの子”なのだろうか……。
現実的に考えたら、これはただの空想に過ぎないのだろうか。
そんなことを考えていると、
少年は一歩、俺との距離を詰めた。
その足取りは、名匠が極限まで磨き上げた自動人形のように優雅で、どこか非人間的な静けさを纏っている。
目元の二連ぼくろが、あの子の目元にあった場所と同じところで、酷く鮮烈に躍動した。
「ずっと、探してたんだぞ、?…お前に会いたくて」
彼の声は、声を震わせて俺にそう訴えかけてきた。
でも、
表情は笑顔ひとつ見えず、冷酷で、恐ろしく端麗な硬い表情。
まるで、あの日の人形のように────
(……疑う余地など、どこにある。)
間違いない。
この少年は、俺が幾夜も思い描いてきた、あの人形そのものだ。
胸を焼く熱い衝動が言葉となり、溢れ出す。
「忘れられるわけがない。……あの店の光景も、おまえという存在も、」
そう言葉を漏らした途端、彼は駆け寄っては俺を抱きしめた。
揺れる紺色の髪に見惚れては、彼のことを
優しく抱きしめ返す。
腕の中で閉じ込めた体は、驚くほどしなやかで、そして――温かい。
かつて飾り窓の向こうで凍りついていた、あの冷たい磁器のような質感ではない。
衣服越しに伝わるのは、速く、確かな心臓の鼓動だ。
「……なんで、俺が、あの人形だってわかるんだよ。」
少年は震える声で俺に囁いた。
俺は迷わず
「お前のその目が、あの頃と変わらず、綺麗だったからだ。」
と、今にも泣き出しそうなこの子の顔に、そっと触れて答えた。
その子は俺の胸に顔をすぼめて、顔を隠す。
そんな行動も、愛らしく思えた。
あの冷たく、薄暗い店の、ショーケースのなかで、ただ見つめることしかできなかった
「人形」が、
今、俺の腕の中で、深く息をする。
────────────────────
俺が、 まだ「物」でしかなかった頃、俺をただの骨董品としてではなく、ひとりの存在として見つめてくれた唯一の人。
表情の動かない磁器の頬を撫でることはできなくても、その視線が俺の心らしきものを、じりじりと焼いていたことを覚えている。
「忘れるわけがない。……あの店の光景も、おまえのことも」
彼がこぼした、問いへの答え。
驚く程にか細く、潤んだ声を聞く。
その瞬間、俺はその子に抱きついた。
この子が覚えてくれていたことへの高揚と、
いち早くこの子に触れたいという衝動にかられて。
抱きしめ返してくれた彼の手のひらは、
優しくて。
暖かい────────。
この子に触れた時、
俺の中に眠っていた「人形の記憶」が、生まれ変わった意味を成した。
(……この”温もり”を知るために、俺は生まれ変わったんだ。)
重なり合う胸から、ドクン、と不器用な音が跳ねた。
初めて知る、自分の鼓動。
かつては冷たく固まっていたはずの体が、この子の腕の中で、驚くほど柔らかく、熱く綻んでいく。
俺はたまらず、その子の 服を強く、千切れるほどに掴む。
(……やっと、触れられた。)
「人形」だった俺には決してなせなかったこと。想い人の腕の中で、俺の心は静かに喜びを帯びていく。
その時、俺の視界が、初めて、じわりと熱い涙で滲んだ。
言葉にはならない。けれど、抱き締める腕の力に、俺のすべてを込めて。
(離さない。……もう二度と、あの冷たい硝子の向こうには戻らない。)
俺を人間にしてくれたこの子を、今度は俺が、壊れるほどに抱き締めていた。
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おまけ
それからお互いに名前を教え合い、何が好きなのか、今は何をしているのかと、他の生徒達が登校してくるまでの時間の間、ずっと聞きあっていた。
「なぁ、四季。」
「んー?」
「なぜ、四季はこの学校へ来たんだ?」
「それは─────」
「……無人がいそーだなって、思ったから。」
「そうか、 」
「んへへ」
「四季?どうした?」
「いやー、」
「無人をこーやって、ショーケースなしで見れて嬉しいなって!」
「俺もだよ、四季」
ちゅ
「!?///」
「ない、と!?今!?///」
「俺がしたいからした。ダメだったか?」
「~!!!///俺もするっ!!!///」
ちゅ
「///四季」
「ん?///」
「愛してる、///」
「!!!」
「俺も!!」
愛してる!!!
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いかがでしたか??
今回かなり長かったですよね!?
おつかれでした!ご愛読ありがとうございました!
それでは、また別のお話しでお会いしましょう!
ばいばい
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