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(もうすぐ楽になれる。俺は13年間も頑張って生きたんだ。それで十分だ。)
俺は心の中でそう呟きながら、歩道橋から下を見下ろす。沢山の車が通っている。正直、怖い気持ちはもうない。この世に未練はない。俺は目を瞑る。そして手探りで歩道橋の手すりに手をかける。次の瞬間、目を開け、思い切り車の流れの中に身を投じる。
クラクションの音と衝撃と共に、俺の視界は真っ暗になった。
(またか。)
テレビで最近よく聞く中学生が自ら命を断つニュース。受験を控えた自分の身としては、物騒なニュースすら本番試験でミスをする要因になり、間接的に命取りの原因になりうるのだ。俺はテレビにチャンネルを向け、電源を切った。そして、風呂に入る。
シャワーを浴びていると、学校の体育の授業で、バカにしてきた奴らを思い出す。気にしない。風呂から上がり、勉強机に向かう。30分で集中力が切れた。
(誰も信じられないな。)
でも、俺は志望校に受かってあいつらを見返すんだ。本当は誰かに愛されたいという自分の深層心理に気づいていた。俺の意識だけでこの現実が変わればいいのに。
そして俺は布団に入る。昔を思い出す。小学生の頃の俺は、子供ながら鋭い視点を持ち、冷めていた。そんな俺を父母は敬遠し、弟を可愛がった。でも祖母は違った。俺はよく祖母の家に遊びに行った。祖父はだいぶ前に逝っていたため、祖母は独り身だった。俺は祖母と、よく雑誌のニュートンを開いて、科学の世界について語らい、浸った。祖母と話している時の俺は生きているという実感があった。
俺はいつの間にか夢の中の世界を歩いていた。花畑を歩いている。俺がいるのと反対側の方向にたくさん人が群がっている。でも、みんな優しそうな顔をしてた。寝る前に見たテレビの報道の写真で見たあの中学生の子もいた。
俺は「でも確かにさ、君は優しい。」と口ずさんでいた。好きな曲のフレーズだ。
(そうか、俺は祖母が亡くなってから、ずっと人に心を許してなかったんだな。俺もこっち側だったんだ。)
もう恐れは無くなっていた。俺の魂の旅が始まろうとしていた。