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転生林檎
二次創作
第1話/転生する前のお話
「今月も金ないな…、」口座残高を睨みつけながらそう呟いた。何をしても金が増える訳もなく、溜息を吐きながら今日も学校へ向かった。
毎日毎日学校へ行って勉強をして、論文を書いて、バイトへ行って、その足を引き摺るように家に帰り、さして美味くもないレトルトの飯やコンビニの飯を食べ、寝る。いつまで続くのかも分からない、本当に平凡な大学生活。
さして友達が多いわけでもなく、勉強が飛び抜けて出来るという訳でもなく、別にそんなにいい大学に通ってたりなんてしないし、将来なんてどうでもよかった。なんなら将来なんてなくても良かった。
ただ淡々と同じことを繰り返すだけなんてもう疲れた、そう思い始めたころ、バイトからの帰り道、たまにはと思いフラフラと知らない道を歩いてみていた。いつの間にか細い路地に来てしまっていて、このまま帰らなくてもいいかもなんて思っていた所、謎の老人が路地にいるのが見えた。別に声をかける必要も感じず、通り過ぎようとしたところで急に声をかけられた。それは見た目とは裏腹に、少し綺麗な声だった。「そこの青年よ、お前はこの世に飽き飽きしておるな、顔を見ればわかるのだよ、それ、少し転生には興味が無いかね、これを食べればたちまち他の人になれるのだよ、」そう言いながら青い林檎を取りだし、俺の前に近付けてきた。俺は胡散臭さから無視を決め込もうとした、ただそれは出来なかった。どうせ嘘だろう、そう思いながらも、心のどこかでは魅力を感じている自分が居た。それを見透かしているとでも言いたそうに「最近はこれを買っていく若者も多くてな、世界のどこかに居るその人になれるなんて魅力的だろう、」その言葉に惹き付けられたように、気づいたら家で1人、青い林檎を握っていた。 何が起こったのかもよく覚えていなかったし、とりあえずこの日は寝てみることにした。朝、学校へ行くために起きると、机の上には昨日置いた青の林檎が置いてあった。それを見た途端、急に馬鹿馬鹿しくなり、林檎を手で掴むとそのままゴミ箱に放り投げた。
それから数日が過ぎた頃、林檎なんてもう忘れていたし、もう腐ったとしか思っていなかった。