テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
223
一週間後。
ピンポーン。
「……!」
インターホンを見た瞬間、ちょっとだけ期待してしまう。
ガチャ。
「こんにちは。本日もよろしくお願いします。」
「……あ。」
山中さんだった。
「……よかった。」
「……?」
「……いや、なんでもない。」
「そうですか。」
そういうと、山中さんは家事を始めた。
俺もパソコンを開く。
落ち着く。
「…なんかいいことありました。」
「えっ?」
「いや、なんかニコニコしてたから」
「いや、別に。」
「…そうですか。」
えっ俺そんなニコニコしてた?
「てか、山中さんっていつからこの仕事始めたんですか?」
「…一年前くらいですかね。」
「へぇ……じゃあ、結構長いんですね。」
「そうですね。」
「なんで家事代行の仕事を始めたんですか?」
「……家事が好きなので。」
「……なるほど。」
なんとも山中さんらしい答えだった。
「じゃあ、料理とかも得意なんですか?」
「一応。」
「やっぱり。」
前から思っていたけど、山中さんは本当に何でもできる。
掃除も、洗濯も、料理も。
俺とは正反対だ。
「……山中さんって、家でもちゃんと家事してそう。」
「しますよ。」
「やっぱり。」
「でも、面倒な時もあります。」
「……え?」
思わず顔を上げる。
「山中さんでも面倒って思うん?」
「思いますよ。」
「なんか意外。」
「……俺を何だと思ってるんですか。」
「いや……完璧な人?」
「……そんなことないです。」
そう言って、山中さんは少しだけ笑った。
「…………」
……今、笑った?
ほんの一瞬だったけど。
なんだか、初めて見た気がした。
「……どうかしました?」
「いや……」
なんでもない。
そう言おうとしたけど――
「……笑った?」
「……え?」
「いや、今ちょっと笑ったやろ。」
「……そうですか?」
「うん。」
山中さんは少し考えるように黙った。
「……気のせいじゃないですか。」
「そっか。」
なんとなく、嬉しかった。
このあと仕事が終わって、
「では、また来週。」
「……はい。また来週。」
山中さんが帰る。
ガチャン。
「……また来週、か。」
コメント
1件
読了しました!今回は「また来週」という言葉がすごく効いてましたね。山中さんがほんの一瞬笑ったシーン、あの「……気のせいじゃないですか」の間(ま)が絶妙で、思わずにやけちゃいました。主人公が「完璧な人」と言った後で「そんなことないです」って返す山中さんの距離感もいい。日常の何気ない会話だけで、二人の関係が少しずつ変わっていく空気感が丁寧に描かれていて、次が気になります。週一の家事代行という設定も、待つ時間のときめきが際立って素敵ですね。また来週を楽しみにしています!🌷