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楽園の様な景色を目にしたナターシャは唸るように言うのであった。
「えっと、これは? あの、どー言うー?」
ルキフェルは光り輝き捲る白金の天使、いや、神か? に、姿を変じさせて答える。
「滅びの中だけに再生があるのだ…… 誕生は即ち痛み、苦しみの始まり…… 終わり、終末は再生への希望の始まり、復活への期待、輪廻の答えへと繋がる…… 今から、戦いへとその身を投じるターシャ、君にマロが送るべき言葉は一つだ…… 良く聞くのだぞ? それは、『んねぇ、キャシーに言っといてよ、前回のってチョコチップが少し小さかったわよ、ってぇ!』、むむむ? あれれ? そうじゃなくてな、えっとぉ、そうだっ! これが言いたかったのだった、ターシャ、マロが言いたかった事はたった一つ、それこそが『うおぅ! うっかりしていたのでござるぅ! パソコンのデータを消してないとは…… 某とした事がぁ! ねえ、ナターシャ? 消しといてくれ、でござるよぉ! おねっ! 消してよぉ!』」
「…………あ、うん…… えと…… チョコレートのチップはもう少し大きい方が良いってキャスリンに伝えるのとぉ、えっと、パソコンのデータ消去、それだけで良いのね? ルキフェルさん」
光り輝く魔神王、ルキフェルは慌てて答えた。
「違うぞターシャ、良いか? 良く聞くのだぞ? 人々が希望を失いそうな時こそ、そなたら『うわっ! そう言えば先週録ったドラマ見て無かったわぁ! んねぇ美雪に言っといてくれない? 『羞恥プレイ? せ、先輩ぃ、こんな所でですかぁ?』ってドラマなんだけどぉ、代わりに見て絆で教えてちょうだいってぇっ!』、あああ、ち、違うぞターシャ! 今のドラマ云々とか何の意味も無い戯言(たわごと)だからなっ! えっとな、アタシが言いたい事はたった一つ、常に希望を持っている限り、『ああぁぁぁ、忘れていたのでござるよっ! 一昨日漬けたキュウリを糠床から出し忘れていたのでござるよぉぅ! ねえ、ナターシャぁ、美雪に伝えて欲しいのでござるよぉ、漬かり過ぎてるだろうからそのまま食べないで、調味料的に使いなさいってぇ! ピクルス的に? でござるぅ!』、…………調味料的に使えってさ…… どうだ? 判ったか?」
「は、はい……」
「そうか、じゃあ、その前に言っていた羞恥だったか? こんな所で、とか何とか言っていたドラマも見て置くように、美雪に、ってかそこに居たな、見といてよ、美雪……」
「うん、見て絆で感想とあらすじを伝えればいいんだよね? お母ちゃん?」
ルキフェルは既に無言である。
「『そうよっ! 頼むわよ? あらすじってか時系列で言ってよ? ネタバレとか止めてよねっ! 上手く伝えてくれなかったら容赦しないわよ! オケイ?』」
「う、うん、頑張るよ」
「『キュウリは判ったのでござるか? 長短っ! はっきり答えるのでござるよっ! どうなのぉっ!』」
「は、はいお義父さん! 無駄にはしませんから、どうかご安心をぉっ!」
「『んじゃ、頼むでござるよ、はぁー手が掛かるのでござるなぁー、んねえ、長短、これから困った時とか、拙者やコユキ殿に通信送らなければ駄目でござるよ? 判ってるのぉ?』」
「は、はい、勿論です! その様にいたします!」
「『そうして、でござる』」
「『悪い事は言わないわ、そうしなさいよね』」
「は、はい」
………………
ルキフェルが長短に聞いたが、若しかしたら自分の中に居る、より上位の存在に聞いたのかもしれなかった。
「もう良いかな? 『……』『……』」
「え? あ、はいっ! 僕は良いです」
三者とも良い様である、この機を逃さない、そんな感じで魔神王ルキフェルは、やや慌てた素振りで空を見上げて言った。
「来たれ! ブラック・ナイト、セエレよ! 我が天の鳥船(あめのとりふね)、運びの天使よ! 来たりて自ら空に届かぬもの共を運ぶのだぁ!」
言った瞬間、広大な大地に影が射したのである。