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突然だけど、僕
風楽奏斗は渡会雲雀のことが好きだ
相手は男
不毛だと思った?
そうだよ。不毛だよ
だって、雲雀には好きな子がいるから
______________
片想いの終わりは案外呆気なかった
夕焼けに染まる教室
雲雀が教室に忘れものしたとかほざいていたからついていった
それだけだった
「お!あったー!!」
『よかった。じゃ帰ろ。』
雲雀が忘れものを鞄に入れるのを横目に
教室から出ようとする
「あッ!ちょっと、待って、」
『?』
何かあったのだろうか
そう思い振り向くと
顔を桃色に染めた雲雀と目があった
可愛い と不意に思う
むず痒い雰囲気が教室を漂っている
「…あのさ、っ俺、好きな子…できたんよね。」
二組の…吉田さん、
そうポツリと呟く雲雀
一瞬 時が止まったような気がした。
いや確実に。俺の頭の中は真っ白になった。
嫌な冷や汗が頬を伝った
『そう、…なんだ。』
曖昧な返事しか口から出てこない
吐きそうだ。
不意にそう思った
「応援してな!奏斗!」
そう笑う雲雀を
自分のものにしたい。と心の中が暴れている
『…うん。』
不毛だ
その言葉が
俺の耳元を通り過ぎていった
______________
それからと言うもの、
吉田さんと雲雀の距離は次第に高くなっていった。
吉田さんは
可愛い女の子だった
勉強もできるし
コミ力もある。
雲雀と話しているといっつも楽しそうに笑い
楽しそうに話すその横顔は
どんなにまぶしく僕の目に映っているのか
彼女には分からないのだろう。
今も2人は
僕の目線の先にいる
「雲雀くん!あのさ、今日ね一緒に映画とか…行かないかなーって、思ったん、だけど」
「えぇ!?マジ!!?行きたい!うわー…まじかー、…うれしー……」
楽しそうに話す2人をただ見つめるだけ
僕には間に入って雲雀を奪い去るとか
そんな器用なことはできない
その場に張り付いたように僕の足は動かない
嫌になる程心臓がうるさくなっていた
______________
キーンコーンカーンコーン
終わりのチャイムが鳴る
そろそろ下校時間のようだ
雲雀、映画行くのかな。
…別に僕には関係のないことだけど
『雲雀〜帰ろ』
「あ!奏斗…、ごめん!今日吉田さんと帰る!」
『…そっか』
そう言う雲雀の顔はすごく嬉しそうで
幸せそうだった
…僕といる時はそんな顔しないのに
_いや、違うか。
僕と吉田さんじゃ
まず優先順位が違うからか
「今日、映画見に行くんよね!楽しみ…っ!」
知ってるよ。聞いてたから。
「…うぇーー、服どーしよっ。どんなのがいいかな!?」
なんでそんなこと、僕に聞くんだよ
『自分が好きなの着ればいいだろ』
自分の口から低い声が出る
なにしてんだ、僕
「え?…あ、っと…かなと?」
「雲雀くーん!帰ろ〜!」
可愛らしい声が聞こえる
鬱陶しいなんて
最低だな 僕。
「あっ、うん!!…じゃあ、またな!奏斗」
そう言って雲雀は俺の横を通り過ぎる
「あ、奏斗くん良かったの?話してたみたいだけど…」
「うん!だいじょーぶ!後で機嫌取りしなきゃな!」
「え〜?なにそれ〜?」
2人が教室から出て行く
その後ろ姿を
ぼんやりと眺めていた
______________
「…この頃、元気ないですね?奏斗」
『…え?』
アキラが俺の顔を見て
心配そうに眉を顰めていた
『あ〜…ちょっと、ね』
_雲雀が好きだけど雲雀に好きな人ができて落ち込んでます〜!
…なんて、言えるわけないだろ
男が好きなんて言ったって
引かれるだけ
4人の関係が全部壊れるくらいなら
言わない方がマシだ
「……言いたくないならいいですけど、溜め込みすぎないでくださいよ。」
『あったりまえ〜。ありがと』
ポンポンとアキラの肩を叩く
みんなは知らなくていいよ
俺の気持ちなんて
______________
おぼつかない足取りで
家に帰る
妙な寒さに身震いをした
今頃、2人は映画に行っているのだろう
告白するのだろうか
もしかしたら手も繋いで
付き合ってしまうのだろうか
そうなったら
きっと、僕は邪魔者だな
_決めた、
雲雀が付き合ったら
身を引こう
距離を取って
気づかれない内にこの思いを捨ててしまえばいい。
誰にも気づかれないように。
消えて無くなって仕舞えばいいんだ
こんな想いなんて。
_____________________
ピンポーン
インターフォンが鳴る
_荷物だろうか
“奏斗〜!きたぞー!開けて!”
『…ぇ、?』
なんで、雲雀?
手元にはなにやら可愛らしい紙袋を下げていた
…嫌な予感がする
どうか当たらないように。
そう願いながら玄関の扉を開けた
_______
「不機嫌そうな奏斗さんにケーキを買ってきました〜!」
『…はあ?』
デデン!っと言ってケーキを机に並べる雲雀
なんなんだ、急に
「さっき元気なかったじゃん!」
さっき、というのは
僕が無愛想に質問に答えた時のことを言っているのだろうか
「あ!…分かったかも!奏斗、失恋したんだな?」
ドクン
心臓がなる
なんにも言えないで黙っていると
雲雀はニヤニヤしながら僕に話しかけてきた
「やっぱりそうなんや〜!誰?同じクラスの子??」
今目の前にいる奴だよ
そう言いたくなるのをグッと飲み込む。
ヒントくらい、言ってもいいだろう
どうせ。気づかないし
『同じクラスの子』
そう言った瞬間
目を見開く雲雀
「ええー!!マジィ?!特徴は?」
キラキラと目を輝かせながら目を乗り出してくる雲雀
…もういいか
好きなとこ全部言ってやるよ。雲雀のお望み通り。
『…鈍感で、 馬鹿で、マヌケで、
でも優しくて、気遣いが出来て、
愛想が良くて、運動もできて、
一緒にいると楽しくて、』
雲雀の声が聞こえない
『世界一大好きで、
隣にいたくて、
誰のものにもなってほしくなくて、
…それで
それで、
俺が一番。世界で一番。愛している人』
僕の中で史上最強の告白だよ。雲雀。
_お前には伝わってないかもしれないけど。
「…や、やっばー!!プロポーズみたいになってんけど!俺が聞いちゃって良かったん?」
『ひばが聞いてきたんでしょ』
全部お前に言ってるんだよ。
『世界一、大好きだよ』
雲雀
この思いが届いてますか。
「ふぅー!ロマンチック〜!!…頑張れよ!奏斗」
…届いてなくても
僕は雲雀が好きだよ
______________
それから1週間が過ぎた
雲雀と吉田さんは
まだ、付き合っていない。
「〜〜〜〜」
先生の授業を右から左に流す
僕の視界には雲雀しか映っていない
_まだ、諦めきれてないみたいだ
その事実にうんざりする
恋は盲目
その通りだよ、本当に。
雲雀の視線は僕に向かない
ずっと吉田さんを捉えて離さない。
その瞳は確かに熱を含んでいる
____僕も女の子を好きになりたかった
そんな思いが僕の頭の中を埋め尽くしていた
______________
______________
「おーい。奏斗〜?なにボーッとしてんの?」
『うわっ…雲雀』
いつのまにか授業が終わっていたようだ
目の前にいる雲雀に気づかなかった
「あ!分かった〜!好きな子見つめてたんだろ?」
そう言って僕の視線の先に目をやる
やばい、雲雀の席…見つめてたことバレる
「…もしかして、」
_______やばい、
「花乃さん!見つめてたんだろ!」
『……はぁ??』
ほら、あそこ!
と言って
雲雀の前の席に座っている女の子を指さした
_予想外だ。
確か、名前は 花乃 あかりさん
一部の男子に人気があるとかないとか
僕には全然関係ない人だ
「ふ〜ん?そんな熱心に見つめちゃってぇ〜♡」
『は?いや、ちが_______』
いや、その方が
都合がいいのだろうか、
僕が花乃さんの事を好きという設定にしたら
雲雀を見つめていたこともバレないし
僕の好意もバレない
_一石二鳥じゃないか。
プライドなんて捨ててやる
『…そうだよ。花乃さん見てた』
「うわー!マジか!やっぱそうだと思った〜!!!」
バカ、大外れだわ
『もういいだろ?飯食べよー』
「うん!…ふふ、へぇー…へへ」
ニヤニヤしながら俺を見つめる雲雀
その顔すらも可愛いと思ってしまった
______________
______________
「いやー、びっくりしたわー、花乃さんが好きだったとはなー…」
『まだ言ってんの?』
モグモグとご飯を食べながらそう呟いている雲雀
僕がそう言うと勢いよく顔を上げて覗き込んできた
「親友の好きな人だぞ?気になるに決まってんじゃん!」
_______親友
『…親友、ねぇ…』
「え?もしかして親友と思ってない!?」
『いや、親友だよ。ちょっと感心しただけ』
「はあ?なんそれぇ〜!」
そうだ、親友でいればいいんだ。
…親友を演じてたら
きっとこの想いも消えてなくなるから
そう、それまでの辛抱。
______________
______________
雲雀と一緒に教室に戻る
僕が席に座ると同時に雲雀の瞳が
誰かに釘付けになった。
その瞳の先を追う
『…吉田さん……』
友達と楽しそうに話す吉田さんの姿が
僕の瞳に映った
雲雀はその光景を見ている
_______羨ましい
なんて。
勝ち目もない僕が思っても無駄なだけか
「…あ、あの…奏斗くん!」
凛とした声が横から聞こえてきた
この、声は
『花、乃さん』
関わることがないと思っていた相手の登場に少々言葉が詰まる
「急に、ごめん!ちょっと来てもらいたいんだけど。」
そう言って真っ直ぐ僕の瞳を見つめる
_告白じゃ、ない
そう確信した
花乃さんの瞳は何かを訴えかけるように真っ直ぐ僕の瞳を見つめていた
______________
______________
『それで、用ってなに?』
人気のない教室に入る
花乃さんは気まずそうに下を向いた後
意を決して喋り始めた
「あの、奏斗くんに…彼氏のふりを、してほしいの。」
『…え?』
「きゅ、急にごめん!…でも、奏斗くんにしか、頼めなくてッ…」
その子は涙をポロポロと流し始めた
これじゃあ埒があかない
優しくぽんぽんと背中を撫でる
花乃さんは時々しゃくりを上げながら
事の経緯を話し始めた
______________
______________
簡潔にまとめると
ストーカー被害に遭っているそうだ。
犯人を導き出すために彼氏のフリをしてもらいたいという事だった。
他の人に頼めばいいのに。と言ったが頼れる人は奏斗くんしかいないとお願いされた。
「1週間くらい、お願いしても…いいかな?」
『……うん。いいよ』
断る理由もなかった。
少し考えた後返事をした
ここから1週間
花乃さんとの偽の恋人生活が始まった
_______
_______
教室に花乃さんと2人で戻ると
雲雀は辺りをキョロキョロと見回していた
僕を探しているのだろう
雲雀に声をかけようとした瞬間
花乃さんに声をかけられた
「奏斗くん。本当にありがとう」
『え…あ、いや。全然。僕の方こそ上手くできる自信ないけど…』
「ううん。引き受けてくれただけで嬉しい。
…あの、このことは、誰にも言わないでほしいんだよね。」
「…もし仮ってバレたら、ストーカーも出てこなくなるかもだから。友達にも付き合ってるって嘘ついてもらえれば…嬉しい。」
ストーカーが分かった後に仮でしたって報告してほしいな!
っと付け加える花乃さん。
『うん。分かった。とりあえず、今日は一緒に帰ろっか』
「!うん!ありがとう!」
適当に帰る約束をし
花乃さんから離れる
雲雀に視線を向けると
嬉しそうにニヤニヤしていた。
『…はあ』
ため息を一つ溢し雲雀の近くに行く
「ええー!?めっちゃ発展してんじゃん!……もしかして、付き合った?」
なんで雲雀はこうピンポイントに当たるんだろう
反対に怖い
『…うん。そーだよ。付き合った』
「え”ええ!?マジでええええ!!!」
『うるさ』
「あ、ごめん!…いやでも、付き合ったって!!…進展早過ぎんでしょ!やば!!」
雲雀は興奮したように息を荒げる
反対に僕の心情は複雑だった。
_嫉妬して欲しかったな。
なんて叶いもしない願い事が頭の中をよぎった
_______
_______
下校のチャイムが鳴る
荷物を整理していると
紫髪が視界の端に映った
「奏斗!かえろーぜ!」
元気なその声にまた心を奪われる
『うん、帰ろ______________』
ああ、そうだった。
今日は花乃さんと帰るんだった
『あーごめん。今日は花乃さんと帰る』
「わ!噂の彼女と!?えーラブラブやん!お幸せに!」
そう言ってそそくさと教室を出て行ってしまった。
今日はアキラ達と帰るのだろうか。
もうちょっと、躊躇ってくれても良かったのに
「奏斗くん!帰ろっか!」
『うん』
愛想笑いを向けて花乃さんと一緒に教室を出る
恋人、だから手を繋いだ方がいいのだろうか
無防備の花乃さんの手を握る
「!!…」
一瞬ビックリしてフリーズした彼女だったが優しく手を握り返してきた
「か、奏斗くん凄いね、ビックリしちゃった…//」
そう言って頬を染める花乃さんを見る
どこか雲雀に似ていて思わず笑みが溢れてしまった。
『なんか、雲雀に似てるね』
無意識に口から言葉が出た
「…ふふ、奏斗くんは雲雀くんのこと大好きだよね」
『え?』
「いや、全然変な意味じゃないよ??ただ、すごく仲良いなーって思っただけで…!」
慌てたように付け加える花乃さんを見ていたら無意識に頬が緩んでしまった。
どこか雲雀と似ていて
何故だか気が緩む
「…、雲雀くんのこと…応援してるよ」
『…は、?』
「ふふ、んーん!なんでもない!」
そう笑う花乃さんは全てを見透かしたような表情で笑っていた。
______________
______________
ピンポーン ピンポーン ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
『もおお!何!?』
勢いよくドアを開けると
ニヤニヤした雲雀が立っていた
「手繋いで帰ってるとこ見ちゃった〜!!」
そう言って嬉しそうに笑う雲雀
「やるね〜奏斗〜!」
よっ、モテ男
と言って僕を茶化す雲雀
『…はあ。ほら、入りな』
「ん〜!ありがと!」
玄関に入る雲雀
そんな無防備だったらいつでも襲えるけど
そう言いそうになるのをグッと堪えて
いつもと変わらない笑顔を雲雀に向けた
______________
______________
「_でさ!吉田さんクッソ可愛くて!!」
家に入れた後、散々惚気話を聞かされている。
「な!奏斗もさ、花乃さんがしたら絶対可愛いって思うだろ?」
『まぁ…うん。そーだね』
雲雀の話を頬をつきながら聞く
雲雀の楽しそうな顔はいつ見ても好きだ。
例え誰かを想って言ってる言葉でも
僕は嫌いになれなかった。
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______________
2日目
学校に行くと花乃さんが僕に近寄ってきて優しく微笑み話し始めた。
「昨日は家まで送ってくれてありがとう。安心して帰れたよ」
『ううん。僕の方こそ楽しかった』
横にいる雲雀はずっとニヤニヤしている。
「今日も一緒に帰っていいかな?」
『うん。もちろん』
そう返すと嬉しそうに笑った。
じゃあ、また後で!
と言って手を振り友達のところへ走っていく花乃さんを見てほっ…とため息をつく。
昨日は何もされてないみたいだ。
多分僕がいたからだろう
…もしかしたら僕、ストーカーに目をつけられてるかもな。
少々ボーッとしながら考え事をしていると雲雀が横から覗き込んできた
「もー!そんな熱心に見つめちゃってさぁ?幸せオーラ出過ぎじゃない?うらやましー!」
キー!だと言って地団駄を踏む雲雀
『そっちこそ吉田さんとラブラブなのによく言えますねー??』
「う”ッ////うるさい!!それはそれ!これはこれだわ!ボケ!」
『はぁ?ボケっていう方がボケなんですぅー』
そう言って雲雀の頬を摘むと
いだだだだ!と非難の声を上げて苦しむ雲雀
_あーあ、雲雀も僕のこと好きだったら良かったのに。
そんな思いが宙を待って消えた
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______________
昼の時間になると雲雀は吉田さんに声をかけに行っていた。
一緒に食べよう。とでも誘っているのだろう
「奏斗くん。一緒に食べよ」
『…そうだね。食べよっか』
一瞬断りそうになったが
そうだった、仮の恋人同士だった。
それを思い出し花乃さんの後についていく
通りすがりに見た吉田さんと喋っている雲雀の顔は。凄く幸せそうだった。
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______________
『名前呼び?』
屋上でご飯を食べていたら急に言われた一言
「うん。苗字呼びってなんか違和感あるって言うか、奏斗くんにも名前で呼んでほしいなって思って」
『…うん。分かった。』
そう返事をするとまたふわっと笑った
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______________
ご飯を食べ終わり階段を降りる
花乃さんと他愛もない話をしながら廊下を歩いていると、
好きな人の声が聞こえた
「へぇ!吉田さんお兄ちゃんいるんだ!」
「うん。写真見る?」
「見たい見たい〜!」
_お似合いだ
見たくなかった
『…』
「奏斗くん。あっち行こう」
そう言って僕の腕を引き2人に見えないように通り過ぎるあかりさん
僕の心が見えているのだろうか
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______________
『…聞きたいことはさ、山ほどあるんだけど。あかりさんは気づいてるよね。僕が雲雀を好きなこと』
これで知らなかった。と言われたら自爆した事になるけど細い事は考えないようにしよう。
「…うん。女の勘ってやつだよ!……
ってのは、嘘なんだけど。私も、女の子が好きだからさ、分かっちゃったんだよね。ごめん」
そう言って頭を下げるあかりさんになんと言えばいいのか分からなかった
僕と同じ人がこんなにも近くにいるとは思わなかった。
「い、いつでも相談してよ!力になれるかは分からないけど、話聞くからさ!」
そう言ってまた変わらない笑顔で笑った。
『…うん。ありがとう。あかりさん』
心なしか 気分が軽くなった気がした
______________
______________
教室に戻り席に着く
あかりさんが僕の席に近づいてきた
「あのさ!今週の土曜日、水族館行かない?」
『水族館?』
「うん!もしかしたらストーカー誘き寄せれるかもしれないし、しかもチケット2枚あるから!……えと、……どうかな?」
急にしおらしくなるあかりさんを見る
やっぱり、雲雀に似てる
『…ふは、いいね。いこっか』
「!!やった〜!またメッセージで伝えるね!」
『うん』
嬉しそうに席に戻るあかりさんを見つめる
どこか雲雀に似ている彼女を見ていると無意識に頬が緩むのを感じた。
雲雀もああいう喜び方するよな
『かわいい、』
「花乃さんが〜?」
『…ッ!?び、ビビったー!』
「んふふ〜、熱心に花乃さん見つめてるかと思ったら、かわいいって呟いてるの聞こえちゃってねぇ?」
ニマニマして僕の頬をツンツンする雲雀
_雲雀に言ったんだよ。ばーか
『可愛いから仕方ないじゃん』
(雲雀が)
「…へぇ〜え?もー惚気ちゃってねぇ?」
『うっさい。』
「あー、そうそう!!今週の土曜日さ一緒に遊ばねえ?」
『…土曜日はごめん。無理だわ』
「え?なんかあったん?」
『あかりさんと水族館行くから、日曜日でいい?』
「あ、そうなんや!うん日曜日でええよ!」
焦ったように言葉を並べていく雲雀を見つめる
何故だか可愛らしくて愛らしくて思わず吹き出してしまった。
「ッちょ!なんで笑うんだよ!!」
ゲシッと足を蹴られる
『いってぇ!?…いや、あかりさんに似てたからさ面白くて…んふ』
また笑いそうになるのを堪える
「…あかりさん」
一瞬雲雀の雰囲気が変わったことに気づく
『?どうした?雲雀』
「あ、いや名前呼びになってたからさ〜?そんな進展したんだなーって思って」
くそ!うらやましー!
と言ってバシッと背中を叩いてきた雲雀
『きっと雲雀も吉田さんとうまくいくでしょ。大丈夫よ』
「…へへッそうかな?俺も奏斗に負けてられん!」
『なんの勝負だよ!笑』
大丈夫、このまま忘れられる。
もう少しの辛抱だぞ。奏斗
______________
______________
それから数日
雲雀と吉田さんの距離はもっと近くなった。
僕とあかりの関係はだいぶ変わってしまった。
互いに呼び捨てになり、愚痴を聞いてもらうようになった。
あかりの存在は僕のメンタルを支えていた
『でさ?無自覚なんだよ?可愛すぎじゃない!?』
「それは罪だね。あ、ねえ覚えてる?明日水族館だからね?」
『大丈夫。覚えてるよ_______』
キーンコーンカーコンコーン
『鳴ったね。戻るかー』
「うん」
ゆっくりと立ち荷物を持つあかりを横目で見てドアを開ける
「よっこいしょ。行こっか」
2人一緒に屋上から出る
その光景を誰かが見ているなんて
僕は気づきもしなかった。