既に亡き彼奴を想う。
生きていた時代こそよく覚えていなかったが、今になるともう少し深く思い出すことが出来る。
真っ当な人生を生きる事が出来ないまま死んでいった。
何時もどこか哀しげに微笑んでいた。
何処からか盗んできた刃物を握った時も泣きながらだったが笑っていた。
片方だけ前髪に隠れた眼が実験の所為でで真っ赤になっている事を俺に明かした。
どれだけ手で梳いてもその髪は癖があるまま直らなかった。
片手が見えなかったがそれも変形していることを教えてくれた。
少し声高で体が細かった。
そこまでは思い出せるのに、番号と密かに教えてくれた名前が思い出せない。
もはや既に、手遅れだった。
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