テラーノベル
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「先抜けまーす。」
間抜けな声を上げて俺はバイトを終えた。
カップ麺を買い、コンビニから出た。
空を見ると茜色と群青色の正反対の色が混ざり合って溶けている。
一瞬、その現象に目が飛び出したような気持ちになったがすぐに理解した。
そうだ、今は5時くらいの微妙な時間。
こんなことがあっても不思議じゃない。
そうして、家に帰るために車にも乗らず一歩を踏み出した。
しばらくすると、茜色が沈み切って三日月が浮かんだ。
薄い雲に隠れて、オレンジジュースをこぼした紙のようにぼやけていた。
それは届かない夢や、意味のない希望にも見えた。
…その例えは良くないな。
もう、あたりは青しかない。街灯の光が何故だかうっすら、虹色。
虫が光にたかっているから一瞬しか見えなかった。
寒い。
秋の終わりの秋風が吹いて、そう感じた。
少し前までは虫も鳴いていたのにもう何も聞こえない。代わりに、冬に近づいてきている秋の終わりの風が俺を襲うだけ。
そのとき、何かが手のひらに乗った気がして、手を見た。いや、何もない。
少しすると、トンネルが見えた。
このトンネルは、近所の小学生だとかがよく遊んでいるトンネルだ。
トンネルについている温かな黄色が俺を照らす。そうすると、影が何重にも重なった。
抜けた時、風が止んでいるのを感じた。
…寒いのは変わらないけど。
あと少しで家に着く。
そうして、少し足を早めて帰ろうとすると、何かが手のひらについた。
それは、冷たくて、すぐに温かくなった。
…したじゃなく前を見てみると、ちらちら雪が降っていた。
しかし、月は見えている。
雲があるのに月が見えていて、それは幻想的だった。
上を見ると、なんとすぐそこが雲と群青の空の境目だった。
すぐに触れて、溶ける。まだ、小さな雪。
…冬だ。冬になったんだ。
こうして、俺の冬は始まった。
コメント
5件
ああ、読了しました。夕方から夜へ移ろう空のグラデーションの描写がすごく丁寧で、時間の経過が肌に感じられるようでしたね。特に三日月を「オレンジジュースをこぼした紙」と例えたところ、一瞬の違和感と日常の詩が混ざり合ってて好きです。雪が降る直前の静けさ――風が止んで、手のひらに落ちた雪が溶ける温度。あの一連の感覚が刺さりました。冬の始まりと一緒に、何かが始まる予感も感じます。続き、気になります。