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ヌーオスタ村の前で待機するチーム莉子。
彼女たちは空気の読める乙女。
ルッキーナを命懸けで異界の門へと走らせた村人と、その行為にしっかりと報いて援軍を連れて戻って来た彼女。
積もる話もあるだろうと察するのがデキる女の配慮。
「いやー! どうも、こんにちは! あれ、時計は夜中だ! じゃあ、こんばんは!! 現世から来ました、チーム莉子です! なかなか良いところですねー! 皆さん戦闘力はまるでないのに、建造物のクオリティが高いったら!! その鍛冶スキルをちょっとくらい戦闘スキルに割り振る事ができたら、もっと色々対応もできたでしょうに! はじめまして、逆神六駆です!!」
デキないおっさんは、自然とこうなる。
莉子の監視を掻い潜って、感動の再会を果たしている現場に突入。
さらに現場の空気をぶっ壊してからの自己紹介。
これは熟練のおっさんにしかできない匠の技。
素人が真似をすると火傷では済まないので、ご注意されたし。
「……サカガミ! サカガミと言ったか!?」
「確かにそう言った! サカガミ!!」
普通なら「空気読まんかい、このボケ!」と怒られて、手近な石でぶん殴られても文句は言えないはずなのに、何故か熱い視線を浴びる六駆。
既に諸君はご存じのことと思うが、念のためもう一度言っておこう。
スカレグラーナは、かつて六駆の父である逆神大吾が平定した異世界である。
もう30年以上も前の事になるが、住民たちは覚えていた、
禍々しいドラゴンを封印して、国の穏やかな時を取り戻してくれた事を。
ちなみに、「六駆の異世界転生周回者の時間が29年って事は計算がおかしくないか?」と思ってはいけない。
逆神家の転生は異世界を平定する度に元の時空に戻るし、それぞれの異世界の時の流れも違うしと、何やら言い訳めいた解説がズラリと並ぶことになる。
それは諸君にとって目が滑ること請け合いであるし、こちらとしても面倒な事は極力避けたい。お察し頂けると幸いだ。
「あなたは、サカガミか?」
「はい。何を隠そう、僕の名前は逆神六駆です」
「では、サカガミ、逆神大吾はあなたの父上か!?」
「……ちっ」
異世界で親父の名前を不意に聞かされた六駆。あろうことか舌打ちをする。
これはいけない。
印象が悪すぎる。主人公がやっていい行動ではない。
「おお! まさにサカガミ! この態度、間違いない!!」
「ああ、そうだとも! かの英雄も初対面で同じことをした!!」
「まさか、英雄の子孫が来てくれるとは! これは大地の神ピョッコラのご加護だ!!」
が、その舌打ちで六駆が英雄の子孫認定を受ける。
どうも大吾がこの地に転生して来た時も、ファーストコンタクトは舌打ちだったようである。
改めて、何と言う酷い家系だろうか。
本当に義務教育を終えているのか。
「みんな、聞いて! この逆神さんと、チーム莉子の皆さんはね、ナグモの部下の人たちなんだって! ナグモもこの地に来てるよ! 今、サーベイランスで空の上から敵情視察してくれてる!!」
「おお! ナグモ!」
「どんなに呼んでも返事をしてくれなかった、ナグモ!!」
「今更来てくれても遅い気がするが、一応我が国の守り神のナグモ!!」
この地では南雲よりも逆神の名の方が知名度、信頼度、求心力の全てにおいて優れているらしかった。
「あのぉー。すみません、うちの六駆くんがお邪魔しちゃって!」
「にゃははー。いつもの事だから諦めなよ、莉子ちゃん! へーき、へーき!」
「みみっ! 芽衣も既に慣れているです! 師匠は自由を愛する人です!!」
ここでチーム莉子の全員がヌーオスタ村の中へと入る。
「皆の者! 宴の準備じゃ! この村を救ってくれた勇者をもてなすのじゃ!!」
「村長!! しかし、食料もないし、水だってない!」
「ならば伝統武芸でおもてなしじゃ!! 8人バトルロイヤルを開催せよ!!」
「あの、すみません。お気遣いは結構ですので。と言うか、皆さん疲弊されてますね。回復するのでじっとしていてもらえますか?」
「逆神の子孫殿! バトルロイヤルはお嫌いじゃったか!?」
「あの、僕は何に見えてるんですか? バトルロイヤルをお好きな方はそうそういませんよ?」
六駆が呆れながら、『気功風』を広域展開で発現。
彼は村人たちを癒しながら、「その土地の習慣って理解に苦しむものが時々あるよねぇ」と、周回者時代を思い出して、なんだか心がモニョっとしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
スカレグラーナのモンスターは、無機物系が多い。
だが、少し離れた平原に凄まじい速さで走るオンペレペンと言う鳥のモンスターが生息しており、普段はそれを狩って食料にしているのだかとか。
その情報を聞いた異世界ではメインヒロインの椎名クララ。
「芽衣ちゃん、行くぞなー!!」と、後輩を担いで出動して行った。
「あああ! すまぬ、すまぬ!! 勇者一行に回復までしてもらい、食料の調達までさせてしまうとは!! こうなれば、16人バトルロイヤルでご恩返しを!!」
「この世界はちょっと僕には合わないかな。帰りたくなってきた」
「ちょっとぉ! ダメだよ、六駆くんってば!!」
「ああ、この反応! やはりサカガミ!!」
「そうだとも! すぐに帰りたがる、サカガミ!!」
「でも帰らない、サカガミ! 確か、彼の国ではツンデレと呼ぶはず!!」
「本格的に帰りたくなってきたから、僕は早退してもいいかな? ほら、久坂さんとの約束も現地調査だったし? なんかヤバい感じでしたって言えば、200万ゲットじゃない。本当にもう帰ろうよ、莉子」
六駆にとって、尊敬する部分が顕微鏡を用いても見当たらない父親の大吾が崇められているスカレグラーナの居心地は最悪だった。
父方の地元に里帰りしたらよく名前も知らない父の旧友に「お前が小さい頃、抱っこしてやったんだぜ。オムツもかえてやった!!」と絡まれる現象に近い居心地の悪さは、六駆からやる気を根こそぎ奪い去っていた。
南雲の特製ブレンドを飲んだ時のように苦い顔をしている六駆を見て、ルッキーナが慌てた様子で村長に駆け寄った。
「あの、あれ! 村に伝わる秘宝の剣! あれを逆神さんに渡すって約束になっていたの! 村長、いいでしょう?」
「ああ、もちろんじゃとも!! 秘宝の剣を受け取ってくださるか? 逆神様!」
「はい! 秘宝と名の付くものならいつでも何個でも頂きますよ! いやぁ、ここは良いところですね! ねぇ、莉子さんや!!」
「こーゆうところは、わたしが少しずつ直していけばいいんだもん! おじさんだからって見捨てちゃダメ! 莉子、頑張れー! ファイトー!!」
この2人を残して行くのは悪手だったとクララに伝えたい。
いや、もしかすると、彼女はそれを承知で狩りに出かけたのかもしれない。
こうして輝きを取り戻した六駆。
ヌーオスタ村は、勇者の到来で沸きに沸いていた。
そこへやって来るサーベイランス。
どうやら、南雲が情報収集から戻って来たようだった。
お忘れかもしれないが、今回のチーム莉子のミッションは「3匹の古龍退治」に書き換わっている。
多分、1番忘れているのが六駆なので、誰か大きな声で教えてやって欲しい。
コメント
1件
ちょっと待ってこのエピソード面白すぎんか!?😂💕 父親の大吾が崇められてる異世界で六駆さんが「ちっ」って舌打ちしたら逆に英雄認定される流れ、マジで逆神家の呪いすぎるww バトルロイヤルでおもてなししようとする村長も意味不明すぎて笑う🤣 でも秘宝の剣って聞いた瞬間機嫌直す六駆さん、結局それかい!ってツッコミ入れたくなったw しかも肝心の古龍退治ミッション忘れてるのほんとこのおっさんらしい😭✨ 莉子ちゃんの奮闘が報われますように…!次回も楽しみすぎる!