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花音は、静月と共に「時を戻す者の書」を開いた。蝋燭の灯りがゆらゆらと揺れ、ページに刻まれた不思議な文字たちが影を落とす。

古びた羊皮紙の匂いが漂い、書の中から声が聞こえた気がした。


代償を払え。

選択を違えれば、同じ夜を繰り返す。


花音の心臓は強く脈打ち、手が汗ばんでいた。

「……本当に、これで戻れるの?」

震える声に、静月は淡々と頷く。

「試すしかない。凛を救いたいんでしょう?」


花音は唇を噛み、震える指で書に記された呪文をなぞる。

その瞬間、世界はぐにゃりと歪み、視界が黒に飲み込まれた。

耳鳴り、心臓を締めつけるような痛み、そして、目を開けると。


そこは「事件が起こる前の朝」だった。


「……戻った?」

制服の袖口を掴み、花音は息を詰めた。

街路は昨日と同じ、桜はまだ舞い落ちていない。人々の表情も、まだ悲劇を知らない。

そして、少し前を歩く凛の姿。

彼女は振り返り、無邪気に笑った。

「おはよう、花音!」


胸が熱くなり、涙が出そうになった。確かに凛は生きている。

「……凛!」

花音は駆け寄り、その手を強く握った。驚いた凛が首を傾げる。

「どうしたの? なんか変だよ」


花音は、何も言えなかった。どう説明すればいい? 未来から戻ってきたなんて信じてもらえるわけがない。

ただ、心に誓う。今度こそ守る。凛を絶対に失わせない。


だが、運命は簡単には変わらなかった。


学校での一日は普段と変わらないように思えた。

だが花音は常に周囲を見張り、凛から目を離さなかった。

授業中も、休み時間も、下校の時も。

「何が原因で…凛はあんなことに巻き込まれたの?」


やがて夕暮れ。

例の“事件”が起こる時間が迫っていた。

花音は胸を押さえ、緊張に震える。

「この時間帯…この場所……」

思考を巡らせたが、事件の詳細は曖昧で、はっきりとした記憶がない。

ただ「凛が突然倒れ、助からなかった」という結果だけが焼き付いている。


だからこそ、花音は必死に凛を引き止めた。

「今日は寄り道しないで、まっすぐ帰ろう!」

「え? どうしたの急に。まぁ、いいけど」

凛は少し不思議そうに笑いながら、花音と並んで歩いた。

だが、運命の糸は執拗に彼女を追う。


人混みの中、不意に凛が人影にぶつかった。

相手は黒いフードを深くかぶった男。

目が合った瞬間、花音は背筋に冷たいものを感じた。

その視線はまるで、「すべて知っている」とでも言いたげだった。


凛は何事もなかったかのように謝り、歩き出す。

だが、次の瞬間、悲鳴が響いた。

街の先で車のブレーキ音。人々のざわめき。

花音が振り返った時、凛の姿はもう見えなかった。


血の匂い。赤い夕陽が街を染める。

「いやぁぁぁぁぁっ!!!」

花音は叫び、駆け寄った。だが、凛は既に…


その瞬間、視界が再び歪んだ。

花音の叫び声は闇に吸い込まれ、世界は静かに反転する。

そして、目を開けると、また“あの日の朝”に立っていた。


「……また、戻ってきた……」

息を荒げ、涙を流しながら花音は理解する。

失敗すれば、何度でも繰り返される。

運命を変えるまで、終わらない。


遠くから、凛の声がまた聞こえる。

「おはよう、花音!」


今度こそ、今度こそ守らなければ。

花音は強く拳を握りしめた。

その瞳の奥には、恐怖と決意、そして深まる狂気の影が混じり始めていた。

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待って、ほんとに言葉選びが天才。書き方大好き。めっちゃ表現力高いじゃんクソほど尊敬やばい大好き。こういうガチ小説みたいなめっちゃ本格的な書き方尊敬大好きめっちゃ好き。我みたいに細かく書かれすぎてないし、かといって説明が不十分なわけじゃない😇え、めっちゃ完璧に書くじゃんめっちゃ好き最高次回も楽しみにしてます

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