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一人の少年が公園にあるベンチに座っていた。
空を不思議そうに眺めている。
空には何も無い。ただ雨が降っているだけだ。
少年は言った。
「おそらからみずがおちてくる!こんなのはじめ て!すごい!すごい! 」
どうやら少年は雨を見るのが初めてらしい。
そこへ一人の青年が歩いてきた。
白髪に燃えるような赤い眼。人間にしては尖った耳と爪。その容姿はまるで御伽話に出てくる吸血鬼《ヴァンパイア》の様だ。
容姿は…だが。使い古した黒いジャージに丈があっていないズボン、赤いスリッパというなんとも吸血鬼《ヴァンパイア》とは思えない服装だ。
青年は少年に近づくと言った。
『こんなとこで何してんだよ。かなえ』
かなえ と言われた少年は弾んだ声で言った。
「みずがね、おそらからおちてくるの!ぼくこんなのはじめて! 」
青年は言った。
『あぁ、雨の事か。』
「あめ?」
『空の雲から水が落ちてくることが偶にあるんだよ。そのことを雨って言うんだ。』
「あめ…すごい!」
少年は更にはしゃいで言った。
「葛葉はものしりだ!」
葛葉と言われた青年は優しく微笑んだ。
『分かったら帰るぞ〜』
それを合図にしたかのように雨はやんだ。
「あー!とまっちゃった…」
かなえは残念そうに俯いた。
『そんなに気に入ったのか〜? 』
「うん!」
『変わってるねぇ』
二人の楽しそうな声は次第にベンチから遠のいて行った。
雨が止み、雲が動くと太陽が徐々に大地を照らしだした。
先程は暗くてよく見えなかった周りの景色も顕になったことで一つの間違いに気がついた。
ベンチがある場所は公園の中だと思っていたが違った。いや、正確には元公園だ。
そこは公園と呼ぶには荒れ果てていた。
木や草が生い茂り、廃墟となっていた。
そこだけでは無い。地球そのものが廃墟と化していた。