彼奴に幸せになって欲しかった。
だから、 俺は彼奴に何も求めない。
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太中注意
地雷さん回れ右
・BEAST軸(ネタバレ含みます)
・R18描写あり
・セフレ関係
BEASTを読んだ上で見る事をおすすめします。
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コツコツと革靴が床を踏む音が廊下に響いている。
辺りはもう何十回、何百回、下手したら何千回も見た景色だ。
乱雑に目の前の扉を開け、部屋に入る。
俺は「ほらよ」と、手に持っていた書類を男の居る机に放った。
「君ねぇ、許可無しに入室していいと思っているのかい?指揮系統は大事にと云っただろう?」
俺の目の前にいる男、太宰はいつもの様に憎たらしい笑みを浮かべている。
「勝手に云ってろ。くだらねェ」
「全く、躾がなっていないよ。この駄犬は」
「五月蝿えよ」
会話が途切れ、数十秒無言になった。
部屋にはただ、時計が一秒一秒を刻む音だけが響いている。
ふと、太宰の手元を見ると山積みの資料と書類があった。
「終わんのか?その量」
特に意図も持たず、何となく質問してみた。
太宰は「ん?」と意外そうな顔をして答えた。
あまり見ないキョトンとした表情に新鮮味を感じたが、直ぐに先刻の顔に戻った。
「さあ、ねぇ…。でも、やらなければならないのは変わらないしねぇ」
「…手前らしくもねェ事云いやがって。一寸前の手前なら誰かに丸投げしてる所だろうによ」
「……」
気の所為だろうか。太宰の肩が一瞬ビクッと震えた。本当に気の所為かもしれないが。
「そうかもねぇ、でも私は私だよ。いつでも、何処でも」
「はぁ…?」
貼り付けた様な笑顔の太宰を暫く見つめた。
そして、ある事に気が付いて俺は太宰の顔に手を伸ばした。
「えっ…何」
親指で、すっと目元をなぞった。
「隈…出来てる。手前、随分寝てねえだろ」
太宰は答えず、薄く微笑んだ。
その笑みに何処か先代の面影を感じた気がした。否、少し違う気もするが。
「少しは寝ろよな」
俺はそう云い残して、部屋を後にしようとした。が、寸前で呼び止められ、振り向く。
「中也。今夜、ね?」
「わーったよ」と雑に返事をして、今度こそ部屋を出た。
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外は雨が降っていた。
ざあっという雨音はピタッと閉められたこの密室には入ってこない。
ベッドが軋む。
荒らぐ二人の息が混じる。
肌と肌がぶつかる音が響く。
「はっ…てめっ、あんま激しくすんなっ……!」
「無理無理。こっちは忙しくて溜まってるんだから……さっ」
ずんっと奥まで入ってきた。
「がッ!……はあっ、はぁっ」
強すぎる快感に目がチカチカする。
自然と腰が浮いてしまう。
幾度も繰り返したこの行為。
そこに愛情やら恋情やらは無い、筈だ。
ただ、気持ちいいからするのだ。
少なくとも太宰は。
「うっわぁ、ぐしゃぐしゃじゃん。泣く程気持ちいいんだ?」
俺の目元の涙を親指で拭いながら云う。
優しい仕草をしていても、やっぱりいつもの憎ったらしい顔だ。
「るっせェよ…手前だってっ、汗だくで…余裕ねェじゃねえか」
息を荒くしながらも、負けじと云い返す。
「こう云う私も悪くないでしょ?」
「ふはっ、どうだか」
床には使いかけのローションや空箱とかが物寂
しげに転がっている。
でもそんなのはお互い気にしていない。
気付いてもいない。
それ程夢中なのだ。
「おい、見えるとこに痕付けんじゃねェ」
「見えないとこならいいの?」
「そう云うことじゃっ…!いっ!?」
首、胸、足、腕、ありとあらゆるところに、何度も何度も痛みが走る。
「っはは!いい眺めっ!」
太宰は俺の躰に付いた無数の痕をなぞりながら云った。
「接吻しよ、中也」
俺の返事を待つ事もせず唇を重ねた。
「んっ……はっ、んんっ…!はぁっ」
「相変わらず息継ぎ下っ手くそ。君はちっとも変わらないね」
太宰は何処か、懐かしそうな目をしていた。
俺は何故だか、どうしても居た堪れなくて、太宰の背中に回していた手を離して、そのまま此奴の頬に触れた。
大事なものに、優しく触れるみたいに。
「手前は…、」
なんだか言葉に詰まってしまって、一度深呼吸をする。
「手前は、変わったよな」
「えぇ?何処が?」
太宰は笑いを含みながら聞き返してきた。
正直、上手く云えない。
でも、変わったのは確かだ。
いつからだったか、それは覚えていない。
でも何かこう、太宰らしい何かが取り憑いたみたいな感じがするのだ。
良く考えれば意味が分からないが。
「……わかんね」
「なぁに、それ」
また、笑いながら返してくる。
俺は頬に触れた手で、太宰の少し長い蓬髪を掬って、その侭耳にかけた。
「ははっ、色男の完成ってな」
太宰は困った様に笑って云った。
「あはは、如何したの。変な中也」
「手前にだけは云われたかねェよ」
また唇を重ねる。
ただ快楽を求めて。
長い夜になるだろう。
この間も、雨は二人に気付かれない侭、アスファルトを濡らし続けていた。
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「今、何時?」
「三時半」
「そっかぁ〜」
いつの間にか、雨は上がっていた。
雲の隙間からはぼんやりと月が姿を見せている。
薄い光が今は心地良い。
俺は同じベッドに寝転がる太宰の背中を見つめていた。
この関係になってからこうやって寝るのはもう慣れっこだ。
暫く沈黙が続いたが、太宰がそれを破った。
「中也」
名前を呼びながら此方を向いた。
月明かりに照らされる太宰は、絵になる。正しく美しい名画の様だ。
ほんと、顔は悔しいくらいに、惚れてしまうくらいに良い。
俺は無意識に見惚れていた。
「中也ってさ」
太宰の言葉ではっと我に返る。
「中也ってさ、私の事好きでしょ」
続く
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どうもどうもお久しぶりです︎🙌🏻
いや、小説書かないみたいに言ったじゃないですか。
でも書きたくなっちゃったんですよ🫠
もうどうにでもなれ精神ですね😇
悪あがきで限りなくR18をR18ぽくない感じにしました 😇
3話完結にする予定なんでよかったら最後まで見てください🙇🏻♀️
ついでにカバー画像です↓
とても雑👍🏻
見てくださった方、ありがとうございました!
よければ❤、💬お願いします🙏🏻
泣いて喜びまっする。
ではまた!!
コメント
19件
え…やばいやばい逝きそう👼 えっ(( と文学が両立されていて さらに話の起承転結がとてもわかり やすいし表現方法が神ってる… つくちゃんの書く物語めっちゃ良い👍🏻 キャラとかめっちゃ掴めてるし ほんと好きだわ… ♡一万任務達成(?)
全私が涙した。待ってましたこの時を やっぱつーちゃんのR18最高だわ…🤦♀️「///」とか「♡」とか使わずにちゃんといたしてると分かるこの文章力。えぐし ちゅやんがだざむに対して急に色男とか言ってたからもう私は昇天。唐突なデレか?と思いきや雰囲気オシャレ。えぐ。 太中なのに中也の色っぽさを残しつつ太の子供っぽさを出してくれるのありがたすんぎ🙏🏻🙏🏻🙏🏻 最高です好きです
うぉ。すげぇ。えぐ。 え、えぐ。え、えぐ。 え、おぉ、え、すげ。