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ピピッ……
2度と使われることのない無線機に、緑色の光が灯る。
無線機に表示された番号は、「8.68」。
すると、ノイズ混じりの音声が無線機越しに聞こえてきた。
「ダーさーん?やっぱ使えなさそう」
「んー、やっぱ街越しに使うの無理だったか」
「こいつ自体もボロボロだったし。流石に無理っしょ」
聞こえてきたのは男女の声。
後ろの方でガヤガヤとなにやら騒がしい音も聞こえてくる。
「でもさ、せっかく見つけたんだし何か残しとこうぜ」
「残すって言ってもこいつに録音機能なんて無いでしょ」
「声にするだけでも変わるでしょ。ほら、ダーさん何か言いな」
「えー……」
無線が渡されたようで、男の声が先程よりも大きくなった。
「あー……まぁ、とりあえず俺らは元気にやってるよ。そっちは多分相変わらず賑やかで楽しいんだろうね」
誰も、何も返ってこない。
そんな事を分かりきっていながら、男はそのまま話を続ける。
「手紙、そっちに送れずにいるけど。忙しいから、許してくれよ。……こんなの、言い訳にしかならないけど。
突然、帰るって言って驚かせたよな。今ではもう少しそっちにいたらどうしてたんだろう、なんてたまに考えたりしてる。でも、俺は自分の選択を後悔してない。お前らと過ごせた毎日、楽しかったよ。元気で過ごせよ」
男がそう言い、少しの間静寂の時間が訪れた。
「タコ、これでいいー?なんか恥ずかしくなってきた」
「いーんじゃない?」
「俺に言わせたんだからタコも何か言えよ」
「えー……あ、大型来たわ。私先行ってるからそれ捨てるなり置いとくなりしといて!じゃ!」
「はっ?あ、おい!」
パタパタと足音が遠のいていく。
次に聞こえてきたのは小さなため息だった。
「あいつ逃げたな……」
無線はまだ付けっぱなしで、残された男の声聞こえてくる。
「また、会えたらいいな」
小さな独り言を残し、無線機の光が消えていった。
コメント
3件
8️⃣6️⃣8️⃣は続くよ、どこまでも。 ってね、会いたいよ〜🥲
コメント失礼しますm(_ _)m やろやはやっぱり最高ですね、、!! ありがとうございます!
ああ、もう、冒頭から胸がぎゅっとなりました……。壊れた無線機に一瞬灯る光、そして「また会えたらいいな」という最後の一言。この一文に、別れたあとの時間の重さと、それでも消えない想いが全部詰まってる気がします。語られない過去や、街の向こう側にいるはずの誰かの存在が、逆に想像を膨らませて切なくなりました。短いのに、映像が浮かぶような情景描写が美しかったです。続きが読みたい気持ちと、この余韻に浸っていたい気持ちで揺れてます……。いいお話をありがとうございます🌷