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「この度、僕達付き合う事になりました!」
いむくんがまろちゃんの隣に立ち、そう言った。最初、何を言われたのか理解出来なかった。ただ、呆然としていた。こんな事を言われるなんて思いもしなかった。今日はいむくんが突然、家に呼び出すから来たのに。いざ、来てみればまろちゃんと付き合った?、嘘やんな?何かのドッキリやんな?
お願いだからそうだと言って欲しい。
「、初兎ちゃん、大丈夫?」
心配そうに僕の顔を覗き込み、いむくんが聞いた。
「、、あぁ、ごめんごめん。考え事してたわ笑」
はは、と笑いながらなんとかその場を誤魔化す。
「本当?なら、良いんだけど、。初兎ちゃん今回の件はありがとう!初兎ちゃんが協力してくれたお陰で付き合う事が出来たの。だから、本当にありがとう!」
少し心配そうにしながらも、僕に感謝を告げ嬉しそうに笑ういむくん。笑ういむくんの横で優しく微笑んでいるまろちゃん。2人はもう、友人なんていう軽い言葉で済ませられる様な関係じゃない。“恋人”、なのだと唐突に理解する。僕、失恋したんや、、。そう思うとズキッと心が痛む。
いや、今理解したのは少し違うのかもしれない。
だって、本当は最初から分かりきってた事だったから。
僕はいむくんがまろちゃんを好きだという事を知っていた。それを承知の上でいむくんに協力した。最初から叶わないなんて分かってる。それでも、分かっていても、こんな愛おしくて、好きなんだ。
「ごめん、ちょっと用事あるから先帰るな、」
涙が出そうになるのを堪え、足早にいむくんの家を後にする。だって、幸せそうな2人を邪魔したくないから。家に帰ると真っ先に部屋のベットに飛び込む。柔らかい感触と温かさが体中に広がる。目を開き、ぼんやりと天井を見つめる。先程の事を思い出すと、また涙が出てきそうになる。
あぁ、もっともっと早く僕が思いを伝えれば、まろちゃんが告白を承諾しなければ、いむくんの隣に居たのは僕だったかもしれないのにッ、
そんな事を思いながら僕は意識を手放した。
「んっ、」
目覚めるともう、夕方だった。窓から西日が漏れ、ほんのりと部屋を赤く照らしている。
、、気分転換に散歩でも行くか、。僕は家を出て、行く宛もなく永遠と歩き続ける。すると、聞き覚えのある声が前から聞こえてきた。思わず顔をあげると、目の前には今1番見たくなかった2人の姿があった。いむくんが笑い、それを愛おしそうに見るまろちゃん。2人の手は繋がれている。また、苦しくなって、思わず心臓あたりの服を掴む。
辛い、悲しい?いやそんな簡単な感情じゃない。
悔しいんだ。
僕の方がずっと前から仲が良くて、一緒に居たのに。いむくんを、いむくんの隣を奪われた事が悔しくて堪らない。本当は奪われてなんかない。こんなのただの自分の自己満でしかない。そんなのは分かってる、分かってる筈なのに、
「何で、こんなに悔しんやろッ、」
自分が呟いた一言は空っぽの心に静かに響き渡った。