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【竜蘭】


(9800文字)


※この作品は『贖罪』のリメイク作品になります。

中盤までの内容はほとんど変わりませんが、最終章あたりからの展開が大きく変わる予定です。

(もし続けばの話ですが…)

※竜胆のメンタル的な部分の解釈が当時と大きく変わっているため、過去作に比べると竜胆のセリフや反応がかなり変わっています。


以下注意事項↓ (1話~最終話まで)

・蘭病み

・自傷・自殺未遂

・過呼吸

・幻聴・幻覚

・錯乱

・嘔吐表現

・10割捏造

・キャラ崩壊


○蘭→竜胆への理不尽な発言があります。

○竜胆→蘭への激怒もあります。

○蘭がイザナにべったりになります。

○当作品に登場する人物は皆、原作から酷くかけ離れた性格・話し方をする場合があります。

○誰も死なないし誰も殺されません。

○蘭のメンタルがシャボン玉以下です。


本当になんでも大丈夫な方のみご覧下さい。

読了後のクレームは受け付けておりません。





「おい竜胆、なんでここ片してねぇの?俺昨日片しとけって言ったよな?」

「ご、ごめん。今からやるから怒らないで〜…」


「はぁ…使えねぇやつ。次からちゃんとしろよ。」


「ごめんね…?」


「てか竜胆邪魔。見たいテレビあるからソファ貸せ。」


「あ、うん。」


「…話聞いてた?」


「え、うん…座っていいよ?」


「いや、ソファ貸せって。寝っ転がれねぇじゃん。」


「あ、ごめん…」


「はぁ…」



ここ最近、兄ちゃんの様子がおかしい。

具体的には、俺への態度”だけ”変わった。

以前までなら俺が近くにいたらすぐにくっついてきたり、隣に座ったりしていたのに、最近の兄ちゃんは邪魔だと言って俺を遠ざける。

それに、家事をやらないのは元からだったけれど、最近の兄ちゃんは家事を後回しにすると怒る。

今まではそんなの気にしたこともなかったのに。

俺と一緒にいる時は大抵不機嫌で、怖い。

周りの奴らに仲良しだなんて言われていたのに、今じゃその面影もない。

喧嘩中でもなければ、何かした覚えもないし、とにかく原因が分からない。

兄ちゃんのことは誰よりも理解している自信があるけれど、今回は何も分からないのだ。

兄ちゃんの様子がおかしくなってからもう2ヶ月以上経っているが、状況は悪化していく一方。

兄ちゃんを怒らせるのが怖くて、今までのように会話をする事も減ってしまった。

どうしたら前のような関係に戻れるのだろう。




「ふわぁ…よく寝た…」


前までは兄ちゃんと一緒に寝ることが多くて、よく兄ちゃんに起こされて水取ってきてとか言われてたから熟睡できない事が多かった。

でもここ最近はそんな事もめっきり無くなってしまった。

なんだか寂しい。

今日も兄ちゃんは機嫌が悪いのだろうか。

何か理由があるのだろうけれど、俺には何も分からないから何もしてあげられない。

そろそろ不機嫌の明確な理由が知りたい。

理由さえ分かれば、どうにでもなるはずだ。

凄く怖いけれど、直接聞いてみようか。

つまらない理由だったら良いなぁ…



「兄ちゃん、今いい?」


「…何。」


「えっと…最近兄ちゃん結構機嫌悪いこと多い、よね。」


「…」


「あ、ごめん。別に悪口とかじゃなくて!」


「…だから何?」


「理由、知りたいなって思って。俺何かしたかなって色々考えたんだけど、バカだから何もわかんなくてさ…」


「…はぁ。めんどくさ。嫌われたんじゃねぇの。」


「え。」


「…」


「まって、兄ちゃん!それってどういう意味…?」


「あ?そのままだろ。」


「え、俺やっぱ何かした…?謝るからさ、何かしちゃったなら教えて!」


「…知らねぇよ。部屋戻る。」


「兄ちゃん…!」




あぁ。俺、兄ちゃんに嫌われたんだ。

考えていない訳じゃなかった。

薄々そうなんじゃないかって考えてはいたけれど、知らないフリをしていた。

現実になって欲しくなかったから。

でもこれが現実だ。

誰よりも大好きな人に、嫌われた。

理由も分からないまま。

悲しさと、何も分からない悔しさで涙が出た。


「だっせぇな、俺…」


久しぶりに泣いて疲れた俺は、いつの間にか寝てしまった。

この時は知る由もなかった。

兄ちゃんが俺にだけ冷たくて不機嫌だった理由も、

兄ちゃんの秘密も________





「痛っ…はぁ…はっ…しんど…」


強まる頭の痛みに耐えかねて、意味もないのにまた3錠程薬を追加する。

段々と目眩も酷くなってきたような気がする。

随分と慣れてしまった動作に、思わずため息が零れる。

頭痛を抑える為の服薬では無いから、薬を飲むこと自体が馬鹿馬鹿しいのだ。

頭痛や目眩はあくまで副作用でしかなくて、追加で服薬したところで意味は無いし、薬さえ飲まなければ頭痛に苦しまずに済む。

しかし薬を飲まなければ、もっと苦しむ事になる。

だから俺は、この地獄のような痛みに耐えなければならないのだ。

幸い、服薬の量を変えたところで頭痛の痛みはこれが最高値だと分かっているので問題は無い。

副作用なんかよりももっとずっと辛い物があるから、今更こんな痛みは屁でもない。

そもそも、薬を飲んだところで俺の最大の敵は消えてはくれないし、最近は飲んでも飲まなくてもさして変化がないような気がするのだが。

それでも薬を飲んでしまうのは、少しでもいいから安心するためだと思う。

精神安定剤とは別の、心の拠り所みたいなやつ。

でもやっぱり、薬に慣れてしまったせいか、効果はほとんど感じられない。

現に今だって、少しずつ悪夢が近づいてきている。


『兄ちゃんなんていらない。』


『兄ちゃんは俺のためにいっぱい金を稼いで、俺のために地位を確立してくれたら後は用無しだよ。』


『俺別に兄ちゃんのこと好きでもなんでもないよ。ただ良いように利用してあげてるだけ!』


『飽きたらポイしちゃうけど許してね笑』


嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!

竜胆はそんなこと言わない。

言わないはずだ。

でも今竜胆が俺に向かって言ったのだって事実だ。

いや違う。これは幻聴で、本物の竜胆はそんなこと言わない。

だけど昨日も一昨日もその前も、竜胆はずっと同じことを言ってる。

それならこれは竜胆の本音なんじゃないか…?

違う、違う、違う!


『兄ちゃんは都合のいいおもちゃだよ。』


違う。そんなはずない。違う。

何も分からない。

もう嫌だ。聞きたくない。


『________________』


『________________________』


助けて。聞きたくない。黙ってほしい。

これは幻聴。本物じゃない。

大丈夫、大丈夫。

でも、もし竜胆の本音だったら…


「いやっ…違うって言って…りんど…」



今日も俺は、悪夢から逃げられそうにない。




約半年前。

竜胆と喧嘩をした。

よくある事だが、その時竜胆に言われた言葉が思いの外胸に刺さった俺は、上手く眠れなかった。

その時言われた言葉は今となっては覚えてすらいない。

眠れないから何か食べようと思ってリビングへ向かうと、竜胆が電話で誰かと話していた。

なんとなく聞き耳を立ててみると、話の内容は喧嘩の愚痴。もとい、俺の愚痴だった。

普段なら喧嘩の後に俺の愚痴を話していたところで気にしないはずなのに、何故かその日は妙に傷付いてしまったのだ。

俺は竜胆にバレないように急いで自室に戻った。

思えばこの時から、俺の精神がおかしくなっていったように思う。

自室に戻った俺は、竜胆の言葉が頭から離れなくて、余計に眠れなくなってしまった。

喧嘩の勢いで言っただけで、きっと本心じゃないと自分に言い聞かせても、頭の中でリフレインして消えてくれない。

竜胆に言われた言葉と、眠れない事への不安で考えがネガティブになってしまう。

もし本心だったらどうしよう。

朝起きて竜胆に嫌われていたらどうしよう。

このまま仲直りできなかったらどうしよう。

そんなことをぐるぐると考えているうちに、その日はいつの間にか眠っていた。

翌日目を覚ましてからは気まずくて竜胆と目を合わせることが出来なかった。

元々喧嘩の後に自分から話しかけることは無いので困りはしなかったし、どうせそのうち竜胆から謝ってくるだろうからとあまり気にしていなかった。

予想通り、俺がソファで寛いでいる時に竜胆が謝ってきたので、俺もいい加減許してやろうと思った。

しかし、そんな気持ちとは裏腹に、俺は竜胆と目を合わせることが出来なかった。

竜胆の顔を見ると、喧嘩中に言われた言葉が頭を過ぎるのだ。

きっとこれが、幻聴の前触れだったのだろう。



それからというもの、ふとした時にあの言葉が頭を過ぎるようになってしまった。

例えば竜胆に文句を言われた時や、竜胆にちょっかいをかけた時。

最初は竜胆が俺に対してムカついている時にしか頭を過ぎらなかったのだが、いつしか全く関係のない普通の会話をしている時にも、ふと顔を出すようになってしまった。

ある日、竜胆となんでもない話をしている時に、突然竜胆にあの時の言葉を言われた。

俺は驚いて、思わず黙り込んでしまった。

すぐにでも文句を言ってやろうかと思ったのだが、あまりに突然過ぎて反応できなかったのだ。

そんな俺を見て竜胆は不思議そうな顔をしてこちらを見つめていた。

遅れて俺が文句を言ってやろうと口を開くより先に、竜胆が俺に「急に黙ってどうしたの?」と聞いてきた。

「お前がいきなり変なこと言うからだろ。」と言うと、竜胆は訳が分からないとでも言いたげな顔で「何の話?」と言ってきた。

聞き間違えか、或いは竜胆が口を滑らせたのを誤魔化そうとしているのか。

確認するために、竜胆に質問した。


「さっきなんて言った?」


「え?さっき?何も言ってないけど…」


「嘘つくな。」


「え、まってほんとに何の話…?」


「え…」


竜胆は確かにバカだが、俺が問い詰めれば絶対に口を開く。

だからこの反応はおかしいのだ。

つまり、竜胆は本当に何も話していなくて、俺の聞き間違い。…いや、幻聴だ。

今までは頭を過ぎっていただけのものが、いつの間にか幻聴として聞こえるようになってしまっていた。

あの言葉がそんなに深く心に刺さっていたのかと驚いたが、それだけではないような気がした。

まあこの程度の幻聴ならば竜胆にバレることはまず無いし特に気にしなくていいだろうと思っていた。

しかし、この幻聴が数日続いた後、竜胆がいない時に突然竜胆の声が聞こえるようになった。

あの言葉ではない。別の言葉。

聞こえてくる言葉に特に一貫性は無く、強いて共通点をあげるならば全て俺への罵倒や悪口だという点のみ。

これはまずいんじゃないかと思ったが、幻聴が聞こえていたところで他人にはバレっこないし、たかが幻聴だと思っていた。



幻聴の恐ろしさを知ったのはこの数日後だ。

竜胆が近くにいない時ならまだ良かったが、竜胆と話している時に聞こえてくると、実際に竜胆がそう言っているように聞こえてしまう。

区別がつかなくなるのだ。

もちろん竜胆はそんなこと言わないと分かっていても、喧嘩した時の電話越しに自分の愚痴を話す竜胆を思い出すと、確実に言わないだなんて思えなかった。

それに、竜胆の声と重ねて幻聴が聞こえると、実際に竜胆がなんと言っていたのかが分からない。

適当に誤魔化してその場を凌いでいたが、その度に竜胆が不思議そうな顔をするのが申し訳なかった。

そこからまた数日後。

竜胆と話している時以外ならば幻聴などどうでもいいという考えが覆ることになった。

あの喧嘩から1ヶ月も経たないうちに、自分の精神は存外傷付いていたらしく、幻聴によって放たれる言葉に胸を痛めることが増えてしまった。

幻聴だと分かっているのに、これは竜胆の本音なんじゃないかと疑ってしまう。

確たる証拠もない、竜胆に言われたことも無い言葉なのに、竜胆を疑ってしまう自分が憎かった。

この時から既に、ほとんど毎日のように幻聴に苦しめられるようになってしまった。

いつの間にか幻覚まで見えるようになっていた。

最初はそのうち聞こえなくなるだろうと思って我慢していたが、次第に幻聴の辛さから逃げ出したくて薬に手を出してしまった。

薬を飲んでいる間だけは、幻聴が聞こえることもなかったから安心できた。

しかし、薬が切れればまた幻聴が聞こえてくる。

それが嫌で、また薬を飲んだ。

そんな生活を続けていくうちに、規定量の薬では幻聴を抑えることができなくなっていった。

気付けば1日に飲む薬の量が、規定の量の2倍、3倍と増えていってしまった。

今ではもう何十倍にもなってしまっている。

それに、薬の摂取量が増えるのに比例して、幻聴を抑えられる時間が短くなっていった。

今ではほとんど効果が無いほどに。

そんなこんなで、俺は幻聴や幻覚から逃れるために薬の過剰摂取をするようになった。

薬の副作用で頭痛やら目眩やらに苦しめられるようになったが、幻聴に比べたら何倍もマシだった。

絶対に竜胆にはバレたくなかった。

幻聴や幻覚のことも、薬の過剰摂取のことも、副作用で毎日のように頭痛や目眩がすることも。

ついでに、薬だけでは誤魔化せなくなって手を出してしまった自傷行為のことも。

弱い部分は絶対に見せたくない。

強い兄でなければ嫌われてしまうから。

でもなんとなく、竜胆にバレるのも時間の問題なんじゃないかと思っている。

隠す気が無くなったとかそういう話ではなく、現実の竜胆と幻聴の竜胆の言葉の区別がほとんどつかなくなってきているのだ。

このままだと竜胆の前で盛大にやらかしてしまいそうで恐ろしい。

毎日竜胆にバレませんようにと祈りながら生活している。





どうやら竜胆は、俺のことを利用したくてそばにいるらしい。

これも恐らく幻聴で、実際に竜胆に言われたことなどないはずだが、真偽なんて俺にはもうさっぱり分からない。

いつになったらこの幻聴は聞こえなくなるのだろうか。

竜胆の前でボロを出してしまう前に聞こえなくなって欲しいと願わずにはいられなかった。

竜胆の前で弱い所を見せるのだけは絶対に避けたい。

嫌われたくない。

しかし、今の自分の精神状態を考えると、弱い部分を隠すのにも限度がある。

そうすると、弱い自分を確実に隠せる方法は一つしかなかった。

逆に竜胆に強く当たることだ。

わざと最低な自分を演じていれば、必然的に弱い部分は隠れる。

そう考えた俺は、2ヶ月程前から竜胆に冷たく当たっている。

竜胆はきっと、毎日のように不機嫌な俺を見て意味が分からないとでも思っているのだろう。

こんなことをしていたら逆に嫌われるだろうが、弱い自分を見られて嫌われるより何十倍も良い。

冷たくされて落ち込んでいる竜胆を見る度に胸が痛むが、それしか方法が思いつかないのでどうすることも出来なかった。

心の中でいつも竜胆に謝りながら、何とか取り繕っていた。



暗に嫌いだと言うような発言をした時の竜胆の酷く悲しそうな表情が頭から離れなかった。

嫌われたくないからというどこまでも自分勝手な理由で、何も悪くない弟を傷付けてしまっている自分が許せなくて、何の罪滅ぼしにもならないが必要以上に薬を飲んだ。

薬を飲むという行為に今となっては効果なんてなくて安心したいがための行為だと言った通りで、飲めばその分副作用が出るのも承知の上だ。

最初のうちは幻聴が少しでも良くなるからと言って薬を飲んでいたが、今はそれも逆効果のようになっていて、飲みすぎると逆に幻聴が悪化することもあった。

今はまさにその状態で、いつも以上に酷く幻聴が聞こえていてうるさくて仕方がない。

耳を押えても目を閉じても静かになってはくれない。

あまりにうるさくて、おまけに頭痛が酷くて、逃げ出したかった。


『兄貴だからって偉そうにするな。』


あれ、竜胆…?


『兄ちゃんなんて何の価値もないくせに。』


なんでそんなこと言うの。


『兄ちゃんって良いところ1つもないよね。』


そんなこと分かってる。


『兄ちゃんなんていない方が良かった。』


嫌だ。聞きたくない。

ごめんなさい。


「嫌だっ…!やめて、そんな事言わないで…わかってるから…謝るからっ…!!」


「くすり、飲まなきゃ…もっと…」


近くにあった薬を乱雑に手に取って口に放り込んだ。

これで少しは楽になれるかな。


『________________』


「ぁう…うる、さい…だまって!いゃだ…」


「兄ちゃん?」


あれ、薬飲みすぎちゃったかな。

幻覚まで見えるようになってきた。


『______________________』


「ぅう…やだ…っ、うるさい…」


「兄ちゃん、兄ちゃん!!」


『_______________』


「ちがうっ、ちがう…!!」


「兄ちゃんってば!!」


「えっ…」


突然誰かに肩を掴まれた。

ここは俺の家だしそもそも俺の部屋だから誰もいないはず。

それなら今ここにいるのは…


「兄ちゃん、大丈夫…?」


「り、んどう…」


なんで。

どうして竜胆がここにいるの?

あれは幻覚じゃなかった…?

いつからいた?

どこから見られた?

いや落ち着け。冷静になれ。

弱いところは見せちゃダメ。

何事も無かった振りをしていれば、それ以上竜胆は詮索してこないはず。

普段通りにしないと…


「兄ちゃん様子変だったけどどっか痛い?それとも体調悪い?」


「…なんでお前が俺の部屋いんだよ。」


「あ、えっとね。水飲みたくて起きたんだけど、兄ちゃんの部屋の前通ったらなんかしんどそうな声聞こえたから体調悪いのかと思って。何回か声掛けたんだけど返事無かったから勝手に入っちゃった。ごめんね?」


「…あっそ。もういいから出てけ。」


「え、待って!兄ちゃんさっき薬飲んでたよね。あれ何の薬?どっか痛いんじゃないの?俺にできることあるなら何でもするよ。」


「…お前には関係ない。いいから早く出てけって。」


「え〜…じゃあ無理しないでね?何かあったらちゃんと呼んでよ?すぐ来るから!」


「…」



最悪だ。

まさか竜胆に見られるとは思わなかった。

遠回しにでも嫌いだって言ったのにわざわざ部屋まで来るとは思わないだろう。

しかも薬飲んでるところを見られたらしい。

概ね普通のリアクションだったから他人から見ても普通の量を飲んでいるところしか見られていないとは思うけれど。

というか、竜胆の目元少し赤くなってたな。

恐らくあの後1人で泣いたのだろう。

それなのにわざわざ声がしたからって声をかけてくるなんて、本当によくできた弟だ。

少しは見習うべきだろうか。

兄であるはずの俺は、もしかしたら心配してくれたのかもしれないなんて少し喜びそうになっているのに。

でも、もし心配してくれていたなら、本当に最低な態度を取ってしまったことになるな。

最低なのはいつもの事だけれど、せっかく心配してわざわざ部屋まで入ってきてくれた弟にあんな態度をとってしまったなんて、ますます嫌われてしまうな。

もう手遅れだろうけど。

ああ、なんだか眠くなってきた。

色々あって疲れたのだろう。

考えるのは辞めにして、大人しく眠りにつく事にした。





「あ、兄ちゃん。おはよ。起こしちゃった?」


あれ、竜胆…?


「りんど…?」


『________________』


なんでそういうこと言うの?


「ぇあ、ごめ、なさい…」


「え?」


『_______________________』


あ、俺があんな態度取ったからか…

それならこれは当然の報いだよね。


「あやまる、から…ゆるして…っ」


「兄ちゃん、兄ちゃん!聞こえてる?大丈夫…?」


『________________』


「うる、さい…っ!しずかにして…っ」


いつになったら何も聞こえなくなるのかな。

寝ても覚めてもまるで地獄だ。

早く解放されたいのに。


「に、兄ちゃん…ほんとに大丈夫…?」


『________________』


突然、竜胆が近付いてきた。

殴られる。怒鳴られる。


「いやっ!こないでっ…!!」


「え、あ、ごめん!」


『______________』


すごく怒っている。

どうしよう。怖い。

とにかく謝らなきゃ。


「ごめ、なさい!やめてっ、ゆるしてっ…あやまるから…!!」


「兄ちゃん、何もしないよ…?大丈夫だから…」


『_______________________』


「ごめんなさい…っ、ごめ…っ」


どうしたらいいの。

酷いことばっかり言われてるのに、誰にも助けて貰えない。

苦しい。つらい。


「兄ちゃん、何に謝ってるの…?大丈夫だよ、大丈夫だから…」


『________________』


怖い。怖い。

呼吸が出来ない。

何も分からない。


「ひゅっ…は、ひゅ…かひゅ…」


「兄ちゃん?大丈夫…?」


『______________________』


「ひゅ、はっ、はぁ、はっ、ひゅ…ぁう、ひっ…」


「え、待って、兄ちゃんゆっくり息して!吸っちゃだめ、落ち着いて…!」


竜胆が何か言ってる…?

また酷いこと言ってるの…?


『________』


「ぃ、や…こほっ、ひゅ…はっ、ひゅ、…」


「大丈夫、大丈夫だよ…俺に合わせて息吸って。ゆっくりね…」


竜胆の声。だけど、優しい声だ。

いつもとは違う…?

ゆっくり?息?


「そうそう、上手だね。そしたらゆっくり吐いて…」


「はっ、はぁ…はぅ…はっ…」


「できてるよ、大丈夫…大丈夫だからね。」


よく分からないけど、もう怖くない、かも…

なんだか意識が遠くなってきた…


「寝ちゃっていいよ、おやすみ。兄ちゃん。」





「ん…あれ、寝てた…?」


「あ、起きたんだね。おはよ。」


「ぇ、あ…おはよ…」


「どうしたの?どっか痛い?」


「痛くない、けど…竜胆なんでここにいんの。」


「なんでって…あ、もしかして意識失う前の記憶ない?」


「え…?」


竜胆に言われてようやく思い出した。

俺は眠ったというより、気を失ったの方が正しいと。

確か、現実と幻聴の区別がつかなくなって過呼吸を起こしてそのまま意識を飛ばしたはず。

そして俺が目を覚ますまで竜胆は傍にいてくれた。

また迷惑をかけてしまったのだ。

それなのに竜胆は、俺を責めることも呆れることもしないでいてくれる。

本当に優しい男だと思う。

とにかく迷惑をかけてしまったことを謝らなければ。


「りん、ど…」


「どうしたの、兄ちゃん。」


「迷惑、かけてごめん…」


「え?迷惑なんかかけられてないよ?」


なんで竜胆はこんなに優しいんだろう。

こんな優しい弟に酷いことばっかりしてる自分が本当に情けない。

あ、だめだ。泣く。


「かけた。もうずっと迷惑ばっかかけてる…ごめん、ごめんなさい…」


「ちょ、兄ちゃん!?ほんとに大丈夫だから泣かないで!どうしちゃったの〜…?」


「ごめっ…ゆるして…ごめんなさい…」


「大丈夫だよ!?俺何も怒ってないし…大丈夫だから落ち着いて…また過呼吸なっちゃうよ。ね?」


過呼吸なったら余計に迷惑かけちゃうな。

一回落ち着かなきゃ…


「ん…う、ごめん…」


「よしよし。大丈夫だよ。もう少し寝てな。眠いでしょ?」


確かにまだまだ眠かったし、お言葉に甘えてもう少し寝ることにしよう。




「…ふぅ。ほんと兄ちゃんどうしちゃったんだろ…」


何とか落ち着いたみたいで安心したけど、どうにも心配なことがある。

まず明らかに普段と様子が違いすぎること。

それに、俺に怯えているような気がすること。

一番気になるのは、ずっと謝っていた兄ちゃんだけれど、その目は俺じゃない何処か…虚空を見ていたような気がすること。

もしかしたら、最近不機嫌が続いていることとも何か関係があるかもしれない。

兄ちゃんに素直に聞いたところできっと教えてはくれないだろうから、どうにかして探りを入れてみるしかないだろう。

関係があろうとなかろうと、このまま兄ちゃんを放置していたら絶対にダメだと俺の勘が言っている。

今日から兄ちゃんの様子を注意深く見てみることにしよう。



1話 完



<あとがき>


お久しぶりです🎶(この先ほぼ雑談です)

作品としての投稿はなんと1年半振りになります🥹(最終投稿日:2023/12/27)

今までずっと他界隈,他ジャンルの小説を書いていたのですが、久しぶりに竜蘭を読み返してみたら見事に再熱してしまいました😽

ネタとして書き出していたものを形にしようかとも思ったのですが、なぜか自分の小説を読み返してしまったんですよね…

あまりの酷さに言葉を失いました😌

書きたいところだけ書くとキャラクターの心情やらそうなるまでの過程やらが何も伝わってこないということを改めて実感しましたね…

たまたま読み返した『贖罪』が特に酷くて、蘭がなぜ薬に頼るようになったのか、なぜ竜胆への態度が変わったのかが全く伝わってこないんですよね…😞

それであくまで自分用に心情やら状況やら を書き出してたらなかなか面白いかもしれないなと思って改めて書き直そうかな〜となった次第でございます👏🏻

でも問題として一つあげるならば、このままメモ通りに書き進めていくと28話くらいまで書くことになってしまうんですよね😿

一話単位の文字数を多くすればなんとか20話以内には収まるかな…?って感じです😞

雑談はこの程度にしまして…


投稿をサボっている間にも作品にコメントを書いてくださる方がちらほらといて大変嬉しかったです😭💕

(返信漏れがない限り、基本的にコメントは必ず返信をさせて頂いております😽)

いいねやフォロワー様は有難いことに毎日のように増えていて、いい加減何かしら投稿しなきゃな…とは思っていたものの、どうにも似たり寄ったりの作品しか書けずに悶えていたところでした😿

皆様の応援のおかげでまた戻ってくることができました。

本当にいつもありがとうございます🫶🏻💕

恐らくまた次回の投稿までにかなりの期間が空いてしまうと思うのですが、どうかやさしく見守って頂けたらと思います…🙏🏻


最後までご覧頂きありがとうございます♪長々と失礼いたしました!!

次は2話か新連載でお会いできたらいいなと思います😽🙌🏻

またね


この作品はいかがでしたか?

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