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鈴木灰音🐬🥞
ゴンザレスドス衛門@半活動休止
Vol.1 エレン視点
【世話焼き】
食堂で、リヴァイ班の皆さんと食事をしていた時だ。
隣のテーブルから、何やら言い争いのような声が聞こえてきた。
「お前、もう少し食えよ」
「人には人の胃袋の大きさがあるんだ。自分の価値観を押し付けるな」
見ると、そこにはハンジ班の面々が。
言い争っているのは、どうやらモブリットさんと…
確か、アーベルさんと言っただろうか。
「またあのふたりか…仲が良いのか悪いのか、分からないね」
「いつもああなんですか?」
「うん、モブリットさんとアーベルさんは同期だから。
お互い遠慮が無い、みたいな」
そうペトラさんに教えてもらった。
確かに、技巧室で何やらふたりで話している姿を見たことがある。
「壁外調査中も、大体ふたりでひとりみたいな立ち回り方。
まあ、実際はアーベルさんがモブリットさんの世話を焼いてる感じだけどね」
「モブリットさんが世話を焼かれる側なんですか?…意外です」
「モブリットさんの方が、世話焼きでしっかり者って印象があるからね」
さらに話を聞くと、モブリットさんはうなじを削げないんだとか。
ただ単に力が弱いというわけではなく、力が弱いことに加え力の使い方が下手。
だから、それを心配してアーベルさんがいつも側にいるらしい。
加えてアーベルさんの方が少し歳上らしいので、
もしかしたらそれも関係しているのかもしれない。
「けど、普段はあんな感じで少しギスギスしてるけど、戦闘時になったらすごいんだよ。
モブリットさんはうなじが削げない代わりに、足の腱を切ったりしてサポート。
足止めしたところで、アーベルさんがすかさずトドメを刺す」
「連携がうまく取れているんですね」
「うん、合図も無しにね。付き合いの長さも、大きな武器になる」
隣のテーブルでは、ふたりがまた別の話題で揉めている。
そんなふたりを、オレは少し羨ましく思った。
Vol.2 ハンジ視点
【危険なふたり】
私は、今とても悩んでいた。
次の調査任務で、リヴァイにアーベルを貸してほしいと言われたのだ。
こっちからは代わりにグンタを貸してやるから…とのこと。
だが、私は最後まで抵抗した。
ケイジかニファなら貸してもいいが、アーベルはダメだと。
私がここまでアーベルを貸したくないのには理由があった。
モブリットと離したら、どうなるか分からないからだ。
昔、同じような流れでアーベルを別の班に貸したことがあった。
だが、アーベルは大丈夫だとしても問題はモブリットだ。
そのアーベルを他の班に貸した調査任務中に、彼は大怪我を負った。
巨人に掴まれて、肋骨を折られたのだ。
私が早く気付いたから良かったものの、もし少しでも遅れていたら…
そう思うたびにゾッとする。
私達の不注意でモブリットを死なせた、なんて言ったら
きっとアーベルも、その次の壁外での任務で死ぬであろうからだ。
やっぱり、いち早くモブリットの異変に気付けるのはアーベルだけ。
もう彼を貸すわけにはいかない。
私はそう結論を固め、リヴァイに伝えにいく。
「ごめん、やっぱりアーベルは貸せないよ」
「ああ、だと思った…今エルヴィンから聞いたんだ」
「何を?」
「なるべくモブリットとアーベルを離れさせるな…ってな」
優秀な兵士は死なせたくないという、エルヴィンの意向だろう。
モブリットもアーベルも、どちらも優秀な兵士だ。
それにしても、ふたりの習性がエルヴィンにまで
知れ渡っているというのは 面白い話だ。
「ちなみに、リヴァイはなんでアーベルにこだわったの?」
「決まっているだろ、あいつは何でもできるからな」
…うちの班員を雑用係みたいに使われるのは、些か不満だが。
Vol.3 ニファ視点
【有能兵士】
これは、私とケイジがハンジ班に入りたての頃の話だ。
巨人研究に興味があって入ったはいいものの、その実態は
一日の殆どがハンジ分隊長の世話ばかり。
肝心の巨人研究が全く出来ず、私達はやきもきしていた。
「ケイジ…この班でやっていけると思う?」
「いや?思わない」
「正直だね…私も、やっていけるとは思えないかな」
そう言いながら、私は膝を抱える。
今私達は、ハンジ分隊長が散らかした部屋の掃除を任されていたのだが、
あまりに終わりが見えないので挫けている最中だ。
先輩方ふたりも買い出しに行ってしまっていて、分隊長も会議中なため
私達で終わらせなくてはならないのだが…
そう思っていると、つい先程買い出しに行ったはずのふたりが
もう帰ってきた。いくらなんでも早すぎると思うが…
「お二人とも…随分と早いですね」
「ああ、早く終わらせられるように近道を覚えてるから」
「もうどこに行かされるかも、大体分かってるからな」
流石、長くハンジ班にいるだけはある。
私も見習いたいところだが…あいにく、もう心が折れかけている。
「あー、ひどい惨状だな。オレらがやっておくから、
お前らはこれ棚に閉まっておいてくれ」
「は、はい!」
そう指示され、私達は買い出しで買ったらしい物品の数々を棚に仕舞いに行く。
あの部屋の片付けよりかは、幾分楽な仕事だろう。
だが物が多ければ多いほど仕舞うのも大変なわけで、そうすぐには終わらない。
やっと仕事を終え、他に出来ることはないかと部屋に戻る。
「終わりました…って、もうこんなに片付いて…!」
先程まで地獄のような有り様だった部屋が、すっかり綺麗になっていた。
「お疲れ様ー、もう帰っていいぞ」
「えっ、でも…」
「休息も大事な仕事だ。後は私達に任せてくれ」
そう促され、私とケイジは巨人研究室を後にする。
「…なんか、すごいね」
「おれらが恥ずかしくなってくる仕事ぶりだ」
ハンジ班を選んだ以上、くよくよしてはいられない。
私達もあんな風になれるように、精一杯努力しよう。
Vol.4 モブリット視点
【敵わない】
…あいつは、私よりもよっぽど優秀な兵士だ。
うなじだってちゃんと一回で削いでみせる。
座学も、今はとても優秀。非凡な発想に長け、新兵器の開発にも貢献。
私が敵うわけがない。
私は副隊長なんかじゃない。形だけだ…
本当に副隊長に向いているのは、あいつなのではないかといつも思う。
お前は私に出来ないこともすぐにやってみせる。
飲み込みも早いし、戦況を理解するのも早いから、他の兵士に指示を出すこともある。
思えば内地で女型と戦った後も、お前が上官の指示を仰いだんだし、
超大型と鎧と戦う時も、お前がラウダとラシャドに指示を出していた。
…兵士長から聞いた。お前は、ニファが撃たれた時の銃声に気を取られているところを
中央憲兵に頭を撃たれて死んだ。
戦況をいち早く把握しようとしたのが、裏目に出たんだ。
そう、お前は優秀すぎるが故に死んだ。
優秀なやつほど早く死ぬ。
だが、私はなぜお前が死んでしまったのか分からない。
もしかしたら…お前は銃声に気を取られたんじゃなくて、
敵が人間になるという事実を受け止めきれずに死んだんじゃないのか。
人一倍優しいお前に、人が殺せるわけない。
優しいやつも、早く死ぬ。
なら、お前は…
優しくなくても、よかったんじゃないのか。
コメント
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アーベルに狂わされた結果、一日で書き終わりました。 他のも書かなくてはいけないのに我慢できませんでした。 アーベルさんは本当に罪な男!(責任転嫁)