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sideヒラ
俺からの言葉を聞き、フジは明らかに迷っているような表情を浮かべ 「そう、、だなぁ〜、、 キヨたちと合流できないかギリギリまで頑張って探してみない!?」と言った。
そうだよね。フジからすれば、そりゃ大好きな恋人と一緒に花火を見たいよね。
わかってはいたけど、やっぱり俺なんかよりキヨと一緒がいい…よね。
「わかった〜 キヨたちもうちょっと探してみよっか。」俺はフジの意見に賛成した。
だけど、花火が始まるまであと5分でキヨたちが見つかるとは思えなかった。
だけど神様はフジの味方をしているらしい。人混みをかき分けて道へ進んでいくと、そこにはキヨとこーすけの姿があった。
フジはまだキヨたちの存在に気づいていないらしい。
ねぇフジ。
そんなに俺じゃだめかな。
キヨに、敵わないのかな。
もうこのまま今日は、……今日だけでいいから。
2人で居ようよ。
そう思った俺は「ここにもいなそうだね。あっちの道探してみよっか〜」とフジに告げた。
それを聞いたフジは「おっけー!キヨたち見つけるぞーー!!」と意気込んでいた。
ごめんねフジ。本当はもう見つけているのに。俺はフジ を逆方向へ行かせるように誘導した。
正直、ずっと寂しかったんだよ。
今までは俺が色々なこと を相談してもらえていて、俺だけがフジの本当の気持ちを知っている「特別」だったのに。
最近はもうその特別はすっかりキヨに奪われてしまったような気がして、
5分なんて時間はあっという間で、花火を前にしてあたりの人の動きがどんどん静まっていく。
「フジ!花火始まるよ!こっちの階段の上、長め良さそうだからどうかな?」そう俺はフジに問いかける。するとすっかりキヨたちのことは割り切ったように、花火を楽しもうとするフジが「おっ!眺めいいじゃ〜ん!ラーヒーやる〜!」と言ってくれた。
フジが少しでも喜ぶことを出来てよかった。
……キヨたちを見つけたことをあの時教えていたら、もっと喜んでくれたのかな。
だけど俺は、やっぱりこの選択を間違ったとは思えないままでいた。
空いっぱいに広がる花火。
銃撃のような鋭い打ち上げ音と、花開くようにキラキラと光り輝く花火は、本当に見ててうっとりしてしまうほどにロマンティックだった。
俺たちの周りにいる人たちは、カップルなのだろうか。周囲の人々は手を繋いだり、肩を寄せあって花火を見ていた。
俺は周りにならうようにフジの手をそっと握り「綺麗だね。フジ。」と言ってみた。すると手を握られた事に少し驚いた様子のフジが「そうだね。俺久々に花火とか見た!!」と嬉しそうに話してくれた。
続けて「…キヨはどんな気持ちで、今この花火を見ているんだろうなぁ、」とフジが呟いた。
せっかく2人で居ても、やっぱりキヨのこと、か。
わかってはいたけど、今のフジの心に俺という存在は微塵もいないのだろう。
俺はもやもやとした感情を悟られないように 「どうだろう、俺たちのこと探してるのかなぁ〜」とあくまでいつも通りを装ってそう返す。
「だな〜。花火が終わって駅かなんかで合流できたら、こっぴどく言われそう笑 「迷子になるなよ〜って言ったじゃねぇか!笑」 って 笑」とフジが言うと、少し困ったような笑みを浮かべた。
そんな顔をされると、やっぱり自分のしたことは「間違い」だったような気がしてきた。俺がしたことは、今日も今までも傲慢すぎたのではないか、と。
「フジ、ごめん。」
今日のことだけじゃない、今までも俺はフジに数え切れない罪を重ねてきた。
そんな感情が急に溢れてきて、ぽろっと出てしまったのは謝罪だった。
だけどこの謝罪の意味がわかっていないフジは「なんだよ!笑なんで急に謝るんだよ〜!笑」と暖かい笑顔を向けてくれた。
フジはこの意味が分からないから、いつだって俺に暖かい笑顔を向けてくれる。
だけど、知られてしまったらきっとその笑顔も向けてくれることはなくなる。
だからずっと、知らないで欲しい。
俺がこんなやつだって、知られたくない。
もう既にフジの特別は俺のものではないかもしれないけど、この残された居場所すら失うなんて、俺は絶対に嫌だった。
こうやって2人でいられる時間を、今は存分に噛み締めていたい。
「フジ、ありがとう。一緒に花火見れて俺すごい嬉しい。」そう本心を伝える。
するとフジは「俺もだよ!ラーヒーと花火見れて嬉しい!来年は絶対4人で見ようよな〜!」といいにこっと笑い、俺の手をぎゅっと握り返してくれた。
そんな些細な行動に俺の心は暖かくなる。フジへの気持ちを抑えられなくなってしまいそうになるんだよ。
「 」
花火の音にかき消されてしまった言葉。フジの耳には届いておらず、「ん?ヒラ今なんか言った?」とフジはきょとんとした様子だった。
俺のこの気持ちは届くことはない。
キヨと俺じゃ勝ち目なんてないって最初からわかってるんだ。だからこの気持ちをフジに明かしたりもしない。
ずっと隠し通すよ、時が来るまでは。
俺はそっとフジのことを抱きしめた。
それにフジは驚きつつも、「どうしたんだよ!笑 今日のラーヒー!!笑 花火があまりにもロマンティックでセンチメンタルな気持ちにでもなったのかよ〜?笑」といい、優しい笑みを浮かべ、俺を抱き返してくれた。
それが友達として慰めのハグでも、俺はすごく満たされたような気持ちに包まれた。
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side キヨ
「がっつり迷子になってんじゃねぇか!笑笑」
花火開始5分前になってもフジとヒラが戻ってくる気配はなく、俺はただただ花火大会開始時間が近づいてくるのを待っているばかりだった。
「電話してみるか〜と思ったけどよ、あいつら携帯も何もかもここに置きっぱなんだけどぉ!笑笑」とこーすけが言う。
もはやこんな人混みで連絡手段もなしに合流するなんて不可能だ。
結局、開始時間になってもフジとヒラが戻ってくることはなく、今年の花火は俺とこーすけ2人で見ることになった。
花火が始まると、暗いはずの夜空が照らされてキラキラと光り輝いていた。
雲ひとつない、花火日和。
フジが居ないとはいえ、花火に圧倒された俺は「すげぇ〜…やっぱ花火大会っていう規模だと花火がでけぇな…」と呟いていた。
それを聞いたこーすけが「だよな〜〜こんなもん火薬でどうやって作ってんだよ!って話!笑」と返す。
その後は特に会話することなく、各々花火を楽しんでいた。
少しすると花火を眺めることに飽きてきて、当たりを見渡していたその時だった。
少し離れた階段の上にフジとヒラが居るのがちらっと見えた。
んだよ!こんな近くに居たのかよ〜人多すぎて全然気づけなかったわ!笑 と思った俺は 「おーいフジー!ラーヒー!こっちー!」と声をあげようとしたその時だった。
「え…?」
そこには、お互い和やかな笑みを浮かべ、抱きしめ合っている2人がいた。