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君の1ヶ月。俺の人生。【Re:make ver.】

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君の1ヶ月。俺の人生。【Re:make ver.】

1 - 君の1ヶ月。俺の人生。

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2023年03月19日

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この小説はnmmn作品となっております。irxs、赤桃、桃赤に当てはまります。見覚えのない方や意味の知らない方はお引き取りください。


⚠︎死ネタ、事故or病気などの表現あり。キャラ崩壊があるかもしれません。何でも許せる方のみどうぞ。





俺には好きな人がいる。優しくてフワフワしてて可愛らしい女の子、ではなくて、かっこよくて少しヤンチャでグループの最年少のアイツ。

その俺の好きな人が、他愛もない会話の中でサラッと放った言葉に俺は現在進行形で固まっている。恐らくこの上なく間抜けな顔をしているだろう。信じられずにもう一度聞き返してしまうのも許して欲しい。

「えっと…なんて?」

「だから!俺あと余命1ヶ月なの!」

あっなるほどね。うん余命1ヶ月なんだ。へ〜、まぁそういうのってよくある話だよね。うんうん。

「、、、は?」

やっぱり俺には理解しがたかった。


ー君の1ヶ月。俺の人生。ー





「んじゃ、そういうことだから。ないくん何頼むー?」

「えーじゃあ寿司セットで…じゃなくて!!!なんでお前そんな平然としてんの!?」

その名の通り親子連れや学生の集団、老夫婦などで賑わうファミリーレストランの一角で、この場所にはあまりにも似合わない話題をさも当然のように流した君に、俺は思わずさながらないこアニメのようなノリツッコミをしてしまった。

「え?だってそれ程深刻なことかな?人っていつか死ぬものだし。」

まぁ今まで伝えられてなかったのは悪いと思ってるけど…と全く見当違いなことを呟くコイツに頭が痛くなってくる。あれなんで俺こんなやつのこと好きになったんだっけ???いや、こんなやつだから好きになったのか。今となってはどうでもいい話だけど。

「えっと…まぁ一応わかった。他のメンバーはその事知ってるの?」

「ううん、ないくんだけ。というか、他のメンバーには言わないで欲しいんだ。」

「えぇっと…それはなんで?こういうことはなるべく早めに言った方が良いと思うんだけど…。」

「うーん俺、もう絶対に助からないっぽくってさ、病院にもあんまり行ってないんだよね。」


聞くところによると彼の病気はかなり珍しいものらしく、治すには相当なお金と根気が必要らしい。

「っお金なら俺が!」

「…ダメなの。」

なんで!と責めようとしたのに、君の瞳があまりにも沈んでいて俺は口を噤むしかなかった。

「お金だけじゃだめなんだよ。……ドナーが、見つからないんだって。」

「、、ドナー…」

「まぁそういうことだからさ、他のメンバーにも心配かけたくないし、言わないでおいてくれない?」

「…わかったよ。」

ならなんで俺には言うの?という言葉を口にできる程俺も強くは無い。

その後も、至っていつも通りの笑顔や声、仕草でとても1ヶ月後に死んでしまう人間には見えなかった。そのせいで不自然にりうらのことをチラチラと見ていることもバレてたようで、帰り際には「嘘とかドッキリではないからね笑」と苦笑しながら忠告されてしまった。ドッキリだったらいいのに、と内心期待していたものだから、俺はまた「はぁ、?」と気の抜けた返事をした。






ピンポーン

「ないくんいるー?入るねー!」

「え、は?りうら!?」

あくる日、チャイムを鳴らした意味はなんだったのか、勝手に合鍵を使って入ってきたのはやはり最年少の彼だった。本当は怒りたいところだが、昨日の話を聞いたからかはたまた好きな人だからか、俺はどうしてもこいつを許してしまう。

「ねぇないくん!りうら、そろそろ死んじゃうって言ったじゃん?」

「あ、うんまぁ昨日聞いたね。」

「だからさ、ないくんに俺のやりたいこと手伝って欲しいんだよね!」

「やりたいこと…?俺でいいならいいけど…」

突然の訪問にも驚いたが、こちらもまた突拍子もない事を言い出した。こんな形でも、彼と過ごす時間が増えて嬉しいという邪な想いがよぎったことは見ていないフリをした。

「良かった!じゃあさ…りうらとデートしようよ。」

「で、でーと!?」

まるで自分の可愛さを把握しているかのような(多分している)上目遣いでキラキラと瞳を輝かせるコイツにまた頭が痛くなった。いや、本当は胸が高鳴ったことを誤魔化したいだけ。こいつは本当に俺の心を掻き乱していくんだ……





「今日は楽しかったね!ないくん」

「うん、そうだな。」

遊園地なんて来たのはいつぶりだろうか。大の大人が結構はしゃいでしまった気がする。それもこれも、隣にいる想い人のおかげだけれど。

「というか、デート相手が俺なんかでごめんねw折角の花の大学生だし、もっと可愛い女の子とかがよかったよね、」

「え、何言ってんの!付き合わせてるのはこっちだし…ワガママ聞いてくれてありがとう!」

そんなふうに本当に嬉しそうに言わないでよ。君がわざわざ俺を相手として選んでくれたんじゃないかと思ってちゃうじゃん。あ〜あ、これがほんとのデートだったらいいのに…

「いやいや、全然いいよ!俺も久々に楽しめたし!」

「そう?よかった!ならさ、次は……」




りうらのやりたいことはそれからも続いた。ある時は突然海外に行きたいと言い出したり、ある時はスカイダイビングに付き合ったり(これは正直クソビビった)、2人でだけでなくメンバー6人で遊びに行くこともあった。だけど依然として余命のことは俺以外には伝えていないようだった。りうらは本当に後悔のない余生にしたいらしく、俺が行けない時は1人でも色々なことをしに行っているらしい。

「ふふっ、これ楽しかったなぁ〜」

スマホのカメラロールを開けば、りうらとの思い出で埋めつくされている。短期間でここまで濃く人と関わったのは初めてかもしれない。写真の中の彼は、やっぱり今までと何も変わらなくて、

「あと少しで死ぬなんて信じられないけど…」

あの衝撃の余命告白を受けた日から既に3週間経っているため、単純計算だとあと1週間というところだ。今日は一応医者に行く日らしく、俺は久しぶりに一人きりで休日を過ごしていた。最近はほぼ毎日りうらと一緒にいたからか、なんだか人恋しく感じてしまう。たった3週間でこんなにもりうらに絆されてしまった自分にもはや呆れるほどに、俺は彼の事が好きだった。きっかけなんて覚えてないけど、そんなもの要らないくらい、今は彼との毎日が輝いていた。

ピンポーン…

そんなことを考えていたら、突然インターホンの音がなった。なんだかいつもより控えめに聞こえるのはきっと気のせいだろう。


「ってあれ、りうらじゃん。今日はいつもみたいに勝手に入ってこないんだねw」

そう言ってから、彼の目が潤んでいるのに気づき、ハッと息を飲む。

「、、りうら?病院…どうだったの、?」



「……ッドナーが、ドナーが見つかったんだって。」

「えっ…てことは、治るかもしれないってこと!?」

「、、でも俺…そんなお金ないし。本当に治るかだってわかんないし…」


いつも人前では強がるくせに本当は誰よりも怖がりな君。他人のためならなんだって頑張るくせに自分の事になると途端に諦めの早い君。最年少のはずなのに、現実にどこか冷めた目を向けている君に、俺は希望を与えたかった。一緒に過ごすことで君の救いになればなんて思ってたけど、やっぱり俺じゃだめだったのか。俺には君を心の底から笑わせてあげることはできないのか。そんな黒い思考が頭をよぎる。それでも俺は、君を諦めたくなくて。


「そんなの…治るに決まってるだろ!お金なら俺がいくらでも出すし、俺、もっとりうらと生きたいよ!だって俺……ッ」

何故だか今更ながらに君の死を実感して心の奥がぎゅっと掴まれたように痛い。瞳から溢れ出てくるものを抑えられなくて、ただ君に生きていて欲しくて。感情を乗せるのが下手くそな俺は心の叫びを連ねることしかできない。

「ッ俺だって…俺も、、もっと生きたいよ…!なんで俺なんだろうって、りうらの何が悪かったのって……ずっと思ってた…」

「……うん」

「ねぇないくん、俺、頑張ってみてもいいのかな、?」

「!……いいに決まってるだろ、、」

初めて見た君の涙に何故か俺は安心して、でもやっぱり君には笑っていて欲しくて。何もできない自分が悔しくて、涙が余計に溢れて止まらなかった。







「ないくん、ほんとにありがとう!絶対治して、元気になって、すぐにお金も返すから…!」

「別にいいよ笑、俺はりうらとこうやって一緒に居れれば充分だから。」

無駄に溜まっていた俺の貯金がまさか想い人の命運を分けることになるだなんて思ってもいなかったけど、こんな事になるなら今までの無趣味で味気ない生活も良かったのかななんて思える。病院へ支払った帰り道。りうらは感謝と申し訳なさでいっぱいなようで、さっきからずっとこの調子である。まぁお礼をされることに悪い気はしないからいいけど。

「……あ、あのさっ」

「んー?」


少し緊張したような、変にぎこちないりうらに驚く。まさかまだ可笑しな秘密でもあるんじゃないだろうな…

「ずっと言いたかったことがあって…あのね、ないくん。俺…ないくんのこと、、」



……ん???ちょっと待てよ。これはおかしい。このセリフ、このパターンよく聞いたことがあるような。まさか、少女漫画で言うところのいわゆる…こ、くはくとか言うやつなのでは!?いやいや、そんなまさか…りうらに限ってこんなベタな感じでしてくるわけ…そもそも!昨日までは寿命残り1週間だったような彼がそんな事考えてたとは、、

「……///」

……ある、!!あるかもしれない!!今までにない真剣な表情の君に、思考が止まったのはもちろんのこと、思わず足も止めてしまう。

「…な、なに?」



期待してもいいのだろうか?君と愛し合う未来を。想像しても、いいのだろうか?彼から余命を告げられてから、すっかり諦めていた恋情がドキドキと脈打ち、俺の頬を赤く染めていく。

君が次の言葉を紡ごうとしたとき、

視界の横で光るライト、そして甘い空気を引き裂くような大きなクラクション。クラクション…?


ブブーーッ!!!!

次の瞬間、俺は咄嗟に君を庇うようにして抱きしめた。

キキキーッ、ドンッ、、





「うっ……」

気づくと俺たちは地面に倒れていて、俺は今までに感じたこともないような鈍い痛みに顔を顰めた。なんでこんなに頭が痛いんだろう…というか俺今何してたっけ、あ、そうだ。りうらの病院に行って、その後りうらが告白みたいな空気出し始めて、大きなクラクションが鳴って…そこまで考えてハッと青ざめる。りうらは?りうらは大丈夫だろうか。せっかく未来に、明日に希望を持てたところだと言うのに。こんなところで傷付いている場合ではないのに。そう頭で焦っていても、体は全く言うことを聞かず、足をピクリとも動かすことができない。


「ないくんッ……!!」

そう上から聞こえたのは他でもない、俺の大好きな人の声。あぁ、りうらが無事で良かった。閉じかけていた瞼を懸命に開けると顔を真っ青にして俺に呼びかける君の姿があった。何か返事をしようと思うのに上手く口が動かない。

「ないくんごめんっ…!りうらの事庇ったせいで、」

何言ってるんだか。男なら、好きな人を守りたいと思うのは当たり前じゃないか。むしろしっかり守ることが出来たんだから褒めて欲しいくらいだよ。

「ねぇ!返事してよッ、、!!」

ごめんな、今返事しようと頑張ってるんだけどさ。なかなかうまくいかなくて笑。あー、泣かないで。なんで君が泣いているんだろう。俺は楽しそうに笑っている君が好きなのに。


「なか、ないで…」

やっと出た声は酷くかすれていて、自分の声じゃないみたいだった。

「グスッグスッ、もうすぐ救急車来るって…!もう少しだから、、ッ」


段々と痛みも感じなくなってきて、視界がぼやける。手足の感覚はとっくの前になくなっているのに、こめかみからドクドクと流れる血の流動だけは鮮明で、俺はもうここまでなんだろうと悟っていた。きっとりうらも気づいているんだろう。

「大丈夫だよッ、。人は、いつか死ぬんだから…」

いつの日か君が言っていた言葉だ。あの時は冷たいと思った言葉だけど、今ではこの言葉の優しさを感じることができる。君と過ごした1ヶ月で、一日一日の儚さと大切さを俺は知ることができた。毎日は皆に平等で、皆に残酷だ。1ヶ月後に余命宣告をされている青年も、毎日をこなすのだけで必死な社会人も、同じ一日を背負っている。でもまさか、俺が言う方になるなんて思わなかったけど。



「ダメだよッ、ダメだよないくん…」

ポロポロと綺麗な涙を惜しげなく流す君が、世界中の何よりも美しいと思った。



「ねぇ、りうら…さっきのつづき、、きかせてよ…」

「っ!!いやだ!言ったらないくん、諦めちゃうんでしょ!?頑張ってよ…一緒にいるって言ったじゃん!」

目の前が白くなっていく。あぁ最後に見る人が君で良かった。本当は、笑っていて欲しかったけど。

本当は、もっと君と生きていたいけど。

きっとこれが最後の言葉になるんだろう。

「ふふ、そっか…。わかった、、ちなみに、俺はさ」


「…りうらのこと、大好きだよ」




「っ…!!俺頑張るから…!絶対治してないくんの分まで頑張るから…!!」

俺は最後までかっこよかった好きな人の言葉を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。




拝啓、俺のことが大好きな君へ。

あの後俺は、なんとか辛い治療を乗り越えて、今は元気いっぱいいれいすメンバーと駆け回る日々を送っています。

俺が、いつ死ぬことになるかは分からないけど、あの1ヶ月間が人生で1番心に残り続けると確信しているのです。

君がいない世界でも、俺はそれなりに楽しめるようで、それが少しだけ寂しいです。それでも、今日もこうして君に逢いに来ているのですから、許してください。

きっと空の上からでもまだ俺を好きでいてくれている君に、あの日言えなかった言葉を今日も送ります。


「俺の方が大好きだよ、ないくん。」


りうらより。






あとがき

ここまで読んでいただきありがとうございます!この作品はチャットノベルで投稿している作品のリメイク品となっております。気になる方は私の投稿を遡っていただけると嬉しいです。

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