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「……なあ、ライ」
「ん?」
「俺らって、学校では普通にしてたほうがええんかな?」
昼休み。
いつものように二人で弁当を食べていると、マナが突然そんなことを言い出した。
「急にどうしたの?」
「いや、付き合い始めたやん?」
「うん」
「でも学校では今まで通りやろ?」
「まあ……そうだね」
「なんか、ちょっと寂しくない?」
マナは箸を持ったまま、頬を膨らませる。
ライは思わず笑った。
「何笑ってんねん」
「いや、マナらしいなって」
「俺はもっと恋人っぽくしたいんやけど」
「学校で?」
「うん」
「無理」
「即答やん!」
マナが大げさに落ち込む。
「だって、恥ずかしいし」
「俺は平気やで?」
「マナが平気でも俺が無理」
「じゃあ二人きりなら?」
「……それなら」
「よし」
マナは満足そうに笑った。
そのとき、後ろから声がした。
「何が『よし』なの?」
「星導!?」
突然現れた星導に、二人は固まる。
「いや、別に……」
「ふーん?」
星導は二人を交互に見る。
「最近、前より距離近くない?」
「気のせい」
ライが即答すると、星導は少し笑った。
「まあ、楽しそうならいいけど」
「……」
「じゃあ俺、邪魔しないように戻るね」
「待って、星導」
「ん?」
「……何でもない」
星導は意味ありげに笑って、その場を離れていった。
「絶対気づいてるやろ……」
マナが小さく呟く。
「たぶん」
「まあ、ええか」
マナは再び弁当に向き直った。
「それよりライ、これ食べる?」
「何?」
「卵焼き」
「いいの?」
「うん」
「じゃあもらう」
「はい」
差し出された卵焼きを受け取る。
それだけなのに、少し嬉しかった。
付き合い始めても、特別なことばかりするわけじゃない。
こういう何気ない時間が、二人にとっては一番大切だった。
***
放課後。
二人は少し時間をずらして学校を出た。
「待たせた?」
「ううん」
「じゃあ帰ろ」
「うん」
人の少ない道まで来ると、マナが隣からライを見る。
「なあ」
「ん?」
「今日、手繋がへん?」
「……」
ライは一瞬黙った。
「嫌?」
「嫌じゃない」
「じゃあ」
マナが手を差し出す。
ライは少しだけ周りを確認してから、その手を握った。
「……あったかい」
「ライの手、冷たいな」
「マナが温かいんだよ」
「じゃあずっと繋いどこ」
「……うん」
二人で歩く。
付き合う前とは違う。
でも、どこか以前と変わらない。
それが心地よかった。
***
家に帰ると、二人はいつも通り夕食を食べた。
「今日の数学、難しかったな」
「マナ、途中から寝てたじゃん」
「寝てへん」
「寝てた」
「ちょっと目閉じてただけ」
「それを寝てたって言うんだよ」
「ライ、厳しいなぁ」
笑い合う。
そして夜。
ライが自分の部屋で宿題をしていると、ドアがノックされた。
「ライ、まだ起きてる?」
「うん。どうした?」
「ちょっと話したい」
マナが入ってくる。
「何?」
「今日、楽しかったなって」
「……うん」
「付き合ってから、毎日ちょっと違って見える」
「分かる」
「今までと同じように一緒にいるのに、不思議やな」
ライは少し笑った。
「俺もそう思う」
「でも、俺は今のほうが好き」
「……俺も」
二人の間に、穏やかな沈黙が流れる。
「じゃあ、そろそろ寝るわ」
「うん」
マナが部屋を出ようとする。
「マナ」
「ん?」
「……おやすみ」
「おやすみ、ライ」
ドアが閉まる。
一人になったライは、机に向かいながら小さく笑った。
家族になった日。
高校に入学した日。
自分の気持ちに気づいた日。
そして、マナに気持ちを伝えた日。
いろんな出来事があった。
それでも今は、隣にマナがいる。
それだけで十分だった。
これから先、どんなことが起きるかは分からない。
けれど。
「……これからも一緒にいられたらいいな」
小さく呟いて、ライは再び宿題に向き直った。
その頃、隣の部屋では。
「……俺もやけどな」
マナもまた、同じように笑っていた。
ナギサノサナギ
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コメント
1件
わあああ第11話読み終えたよ〜!!🌸✨ ライとマナの恋人同士の距離感が尊すぎて鼻血出るかと思った😭💕 学校では恥ずかしいけど二人きりなら…ってマナの甘え方が可愛すぎるし、星導に気づかれてるのバレバレなのも微笑ましい〜!! 最後の「おやすみ」のリレー、それぞれが同じこと思ってるのエモすぎん??? これからもずっと一緒にいてほしい…!!推せる!!⋆♡