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「 ス イ ー ト ピ ー 」
______ fj side
○月○日
「 俺達 、もう離婚しよう 。」
○月○日
「 俺 、辞めるわ 。」
○月○日
「 今までありがとうございました 。」
こんなに別れを告げたのは初めてだ 。
自分でもよくわからない何かが俺のことを
埋め尽くしてるような気がして 。
____
fj ) … 誰 。
?? ) この部屋いっつも薬臭ぇ 、
fj ) この声 .. はぁ 、お前かよ
ky ) せっかく来てやったのにそんな態度かよ
fj ) わがまま言うなら帰れー
ky ) はーいすみませーん
全てに別れを告げた日から約1ヶ月
俺はとうとう身動きも取れなくなった
視覚も無くなり頼れるのは嗅覚と聴覚だけ
そんなオレの様子を見にコイツは
毎日仕事終わりに病院に通っている
こんな人間の様子を見て楽しいのか
オレの姿は醜くないのか
沢山の疑問を抱きながら今日も
静まり返った病室で互いに笑い合う
ky ) お前普段何してんの?
fj ) 何するも何も動けないからね
ky ) 動けないっての不便だよな
fj ) そりゃあとてもね
ky ) 動けたらこんな事自分で出来るし
fj ) .. ありがとう
彼は毎日病院まで来て
俺の入浴の手伝い 、排泄物の片付け
部屋の掃除 、食事の手伝い
俺の出来ない事を全部やってくれてる。
ky ) ほら 、口開けて
fj ) … っぐ !
ky ) え 、何?
fj ) あっつ !
ky ) うわ 、御免 。冷ましきれてなかったわ
fj ) ちょ 、水
ky ) まじで御免 ..
fj ) .. っは 笑 いいってこんくらい 笑
ky ) いやでも 、
fj ) .. お前って 、ほんとイイ奴だよな
ky ) んなことねぇだろ
fj ) あ 、そーだ 。1つ願い事聞いて !
ky ) 1つだけでいいの ?
fj ) 別に 、今更望む事無いからさ
ky ) … 分かった 。で 、願い事って?
fj ) スイートピー 、今度持ってきてよ
kx ) えーっと 、スイートピー ?
fj ) そう 、花
ky ) なんでそんなもの
fj ) 好きなんだよね 、その花
ky ) ふーん 、変なの
俺はこの体のせいで実況も音楽も芸術も
何もかも全て出来なくなった
そうなる未来は以前から伝えられていた
だから 、何か他の事を探そうとした
初めて病室に入ったときからある
優しいピンク色のスイートピー
それを見てると何もかも忘れられる
見た目は見えないけれど
今でも花が好き
____ 数週間後
ky ) うぃーっす
fj ) どーもキヨでーす 、ってね
ky ) うわ 、なんだお前
hr ) 俺達も居るんだからねー
kk ) そうだそうだー
ky ) てか 、なんか人多くね
hr , kk ) ほんとだ
fj ) おかげで病室がどんどん狭くなるよ
今俺の病室には
バンドメンバー
仲が良かった実況仲間
そして 、1番の親友共
最終兵器俺達のメンバーが集まってる
ただでさえ狭い病室でこんな集まられると
どーしても暑苦しくて 、窮屈だけど
俺は幸せ者だって思える
yg ) いきなり辞めるとか言い出したから
ほんま心配でもう頭パンパンやったわ
fj ) それはすみません 、笑
言いたい事は沢山ある
でも 、体は許してくれないみたい
せめて最期 。これだけは ____
ky ) あ 、これ
fj ) ん ? あ 、スイートピー
ky ) ちゃんと買ったから金返せよ
fj ) 俺のもんでも勝手に売ってきな
ky ) 嘘嘘 、要らねーよ
fj ) それはありがたい
そうだ 、誰かペンと紙持ってる ?
sr ) あ 、持ってるよ
fj ) 1枚頂戴
sr ) いいよ 、どうぞ
fj ) ありがとう 、じゃあみんな反対側向いて
俺はsrからもらった紙に文字を書いた
目が見えないから感覚で書いてるけど
きっと読めないくらいに汚い
よし 、書ききった
気付いてねky
俺の心臓はドキドキしていた
これはきっと
命のカウントダウン
俺は泣きそうなのを堪えて
みんなを振り向かせた
fj ) よし 、こっち向いていいよ
fr ) 何してたの〜 笑
fj ) 秘密〜 笑
ky ) 許さないからな 。
fj ) ありがとう 、俺の大親友
ky ) うるせぇ
俺達は小声でこんなやりとりをした
こんな中でもカウントダウンは止まらない
fj ) ねぇ 、みんな 。俺超幸せ
こんないい仲間に囲まれて
こんないい生き方させてもらって
こんないい思い出沢山つくれて
俺に後悔なんて1つもないよ
フジとしての俺も本当の俺も
世界一幸せな人間だよ
ありがとう
_______ ky side
病室に響く不快な機械音
彼の綺麗な瞳はもう見れない
耳に残る高笑いも聞けない
キレの良いツッコミも聞けない
お前は 、幸せだったか
そんな事を思いながら彼の実況デスクに
飾ってあるあのスイートピーを眺めた
ky ) … なんだこれ
白い紙が花の間に挟まっていた
俺はそれを取り出して中を開いた
『 やさしいおもいで 』
そこには歪んだ字でこう書かれていた
スイートピーの花言葉
ky ) 変な奴
もしこの世界が彼のことを忘れても
俺は一生忘れない
俺が隣に並ぶまで 、幸せでいろよ ___