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いつも通り授業を受け、1日はあっという間に終わりを迎えようとしていた。帰りのリムジンに乗るとき、楓ちゃんは黙っていたけれど、手や足、顔などに何かにぶつけたような、傷つけられたような痕があった。
「今までの代償が回ってきただけだから大丈夫。」
と言っていたけれど、心配な気持ちになる。部屋に戻ってからも沈黙が続いている。
「……花月、人の記憶とか痛みってさ、一生残るものかもしれないんだね。」
「え…?」
「今日ね、クラスの子たちに無視されたり突き飛ばされたりしたの。すごく痛かった。すごく悲しかった。すごく辛かった。でも……それって、私が今までやってきたことだったんだって身をもって分かったよ。何も考えず、人を傷つけることを楽しんでいた。傷けられる人たちのことなんか考えたことも無かった。だから、暇つぶしくらいにしか思っていなかった。私は、今までの報いを受けている。だから……何かされることにも納得できる。でも……今まで私が虐めていた人たちは何の理由もなく、私の暇つぶしのためだけに虐められていて、きっと理不尽だと思ったよね。そうやって人生を滅茶苦茶にされていたんだね。」
「教室に居づらかったら……いつでも私たちのところに来ていいんだよ?」
「……ううん、多分もう、逃げるためには行かないよ。たとえクラスメイトの子たちが私を許してくれる日が来ないとしても、どんなに辛いことをされたとしても、全部自分で受け止めたい。それが……私が皆に唯一見せられる誠意だと思うから。」
そう言う楓ちゃんは今までとは違い、凛としていた。
なんだか子離れができていない母親になった気分になる。寂しいような嬉しいような。
「花月、私は今、自分の足で立ててるかな……?」
前に楓ちゃんが言っていたことを思い出す。守られるのではなく、自分の意志で生きたい。窮屈のない自由な人生を送りたいという言葉。
「うん。きっと自分の足で立って、自分のための人生を送れているよ。」
「花月、私決めた。年が明けたら家に帰るよ。」
「え……?」
「実は前から考えていたの。いつまでも皆に迷惑をかけるわけにはいかないし、たくさんのことを学べたからもう帰っても大丈夫だって。それに、聖と花月がくっついた今、私がここに残る意味も無いからね。」
突然の楓ちゃんの発言に頭がついていかない。
楓ちゃんが家に帰る…ということは、あの理事長のところに戻るってこと……?
「でも…心配だよ。」
「もしかしてお父様とのこと心配してくれてるの……?私はもう今までの私じゃないよ。自分の意志も言う、都合よく利用して逃げないし甘えたりもしない。花月と聖がこの世界を変えてくれると言うなら、私はあの学校を……あの学園を変えていきたい。私はお父様を超える。それは簡単なことではないのは分かっている。でも…私みたいな最低な行為を犯してしまう生徒が減るよう、皆が楽しいと思える学園にしたいの。」
誇らしげに夢を語る彼女はとても美しく、涙が出てしまいそうだった。
「楓ちゃんがやりたいことや夢を言ってくれて嬉しいよ。」
聖さんが国王になったら、私は王妃となる。その時、この世界を変えようとするのは私たちだけだと思っていた。でも……こんなに近くにいてくれたんだ。
「ねえ、楓ちゃん。私、貴女がいれば何も怖くないって思える。」
聖さんと私は外からできることを、楓ちゃんは中からできることを行っていけば、この世界が変わる日も近いかもしれない。