⚠︎︎太中前提芥中
太宰さんが離反した。
その知らせが来てから数日後、僕の部屋に男が一人訪ねて来た。
男の名は中原中也と言い、太宰さんの相棒兼恋人らしい。
男は好戦的で自信に溢れてた笑みを浮かべて「今日から手前の世話係になった」と言った。
僕は太宰さんの隣に立つことを認められていたその男を憎んでいた。
故に、声を荒らげて反対した。
「貴様なんざに太宰さんの代わりが務まるはずがない!!」
「首領からのご命令だ。務まる務まらないの話じゃねぇよ。諦めろ。」
「只運良く気に入られただけで、僕と同じように捨てられた癖に…!!」
「嗚呼、そうだな。俺らは捨てられたんだ。でもなァ、何時までもそうしてたって彼奴は認めちゃくれねぇぞ、芥川?」
「っ貴様に彼の人の何が解る!?何も知りもしらない癖に偉そうに…!!」
「彼奴の事なんかちっとも何も解ンねぇよ。考えてる事も思ってる事も全部。」
否定されるかと思いきや、真反対に肯定され調子が狂う。
「解ってるつもりだったんだけどなァ……まァそれも俺が勝手にそう思い込んでただけだったらしい」
男の声が部屋に吸い込まれるように消えていく。
今迄好戦的だった男が、急に弱々しくなったように感じた。
「まァ今となっちゃ全部関係ない話だがな。彼奴はもう組織の奴じゃねぇ。邪魔になったら消す、それだけの話だ。」
先程の何処か弱々しい声とは違い、淡々とした感情の籠っていない声がやけに響いて聞こえた。
ふと、違和感を感じた。
男と太宰さんは相棒であり、恋人だった筈だ。
そして、僕の記憶上二人はそれなりに愛し合っていた筈…。
それなのに何故、此処迄冷静で居られるのだろうか。
何故、こうも簡単に切り捨てる事が出来るのだろうか。
そんな疑問を他所に男は続ける。
「なァ芥川、太宰に認められる迄でもいい。だから、取り敢えず今は首領のご命令通り、俺に従ってくれ。これじゃァ俺も首領に合わせる顔がなくなっちまう」
そう言ってカラカラと笑った。
「……そうなるなら最初から断ればよかっただろう」
「断れねぇよ。抑、俺が自分から世話係引き入れるっつったんだから。」
「何故引き入れた」
「手前のこと引き入れようとする奴が居なかったから」
「……」
何となく引き入れられない理由が分かり、男の顔から視線を外す。
「それに何となく似てると思ってな。ほら、捨てられた奴等同士、仲良くしようぜ芥川」
そう言って男は僕に手を差し出した。
この手を取ってもいいのだろうか。
迷っていると男と目が合った。
男は目が合うと優しく微笑んだ。
先程まで憎くて仕方がなかったその笑顔を見て、何故か胸が暖かくなったような気がした。
何となく、この男に従ってもいいと思った。
そうして、少しの沈黙を経て僕は差し出された男の手を握り返した。
「……手前細過ぎねぇか?ちゃんと食ってんのか?」
男……中原さんが驚いた様にそう言う。
「まだ餓鬼なんだからしっかり食わねぇと…仕方ねぇなほら着いてこい」
そう言って握った儘だった僕の手を引っ張り歩き出す。
「中原さん一体何処へ、」
「俺ん家行くぞ、後堅苦しいから下の名前でいい」
「何故中也さんの家へ?」
「どうせ何も食べてねぇんだろ?今の時間じゃ他の店はもう空いてねぇだろうし…仕方ねぇから作ってやる」
そんな会話をしていると何時の間に中也さんの愛車に乗せられていた。
「中也さん、お気持ちは有難いのですが僕にそこまでしていただく義理は…」
「言ったろ?俺は手前の世話係だ。大人しく世話されてろ」
「…有難うございます」
完全に子供扱いされている……。
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1度終了です!!
因みにこの後芥川は中也さんの手料理を大量に食べ(させられ)、風呂に入り(入れられた)、寝かしつけられました。
1ヶ月間で顔色が少し良くなったとかよくなってないとか……
次回は多分きっと荒覇吐視点……か中也視点です。
お楽しみに!!
それではご視聴ありがとうございました!
さよなら〜
コメント
8件
か、神すぎる…!尊いッ!!
ストーリー構成がお上手すぎるっ、 中也さん尊いッ