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あくる日、真緑莉子は刺された。

電車で私立の中学校から帰宅する途中、ドア付近の手すりに掴まって立っていたところ、ナイフを持った赤の他人に、走ってきた勢いで横腹を刺された。所謂無敵の人に、無差別的に攻撃された。

外の景色をぼうっと眺めていたので、数秒何が起きたか分からなかった。周囲の悲鳴と、お気に入りの白いセーラー服に広がった鮮やかな赤で、遅れて痛みを理解した。

まだ14年しか生きていないというのに。人生とはこうも呆気なく終わってしまうらしい。

目の前で男が莉子の血で汚れたナイフを構え続けているせいで、莉子に近付ける乗客は誰一人おらず、それどころか一斉に別車両へ避難していく始末だ。

最期の最後まで独りぼっちらしい。

友達が一人もおらず、家族も仕事で家を空けがちな莉子は、今そのことは関係ないと分かっていながらも一層の孤独を感じ、やるせないやら馬鹿馬鹿しいやらで微笑を浮かべた。男の手がブルブル震えているのに気付き、どうせ刺したのなら堂々としてろよ、とおかしな方向に苛立ちさえ覚えた。

しかし次第にそんな感情も遠のき、視界が暗くなっていく──

ゲコ。

闇の中でふと聞こえてきたのは、なぜか蛙の鳴き声だった。

ゲコゲコゲコ。

遠のく意識と反比例してそれは大きくなっていく。

本当になぜ蛙なのだろう。特に好きでもないし、最近蛙を見た覚えもないのに。

というか、こういう時は普通走馬灯が流れるはずなのに、それを差し置いて蛙の鳴き声がすると、全てがどうでも良かったかのように思えてくるからやめてほしい。家族や友達の光景が見たい。友達はいないけれど。

ゲコゲコゲコゲコ……

蛙は耳をつんざくように、意地を張ったように鳴き続ける。

鬱陶しさを感じつつも、同時に莉子は何か、大事なことを思い出そうとしていた。この声、どこかで聞いたことあるような。学校にある池でもないし、家の近くの田んぼでもないし、もっと身近なところで──

そうだ、小4の時に飼っていた蛙だ。道端で死にそうになっていたから拾って元気になるまで育ててやったのに、一年足らずで水槽から逃げ出して行方知れずになった恩知らずの蛙だ。名前は確かゲコゲコうるさいから、ゲコちゃん。

だとしてもゲコちゃん、どうして今更こんな時に──


「莉子さん、起きて下さい」

ぽん、と額に手を当てられた感触がして、莉子はハッと目を開けた。案外まだ視界ははっきり見えた。

最初に目に飛び込んできたのは、人間の手ではなかった。水かきがついた4本指の緑色の手。まさか。手の主を見上げて、莉子は息を呑んだ。

偶然なことに、目の前には蛙の着ぐるみを纏った人が背を屈ませていたのだ。

いやいくら何でも偶然すぎるだろ。それになぜ名前を知っているのか。防犯上、登下校中は名札を外してあるはずだが。

「良かった、まだ死んでいませんね」

蛙の顔を模した着ぐるみの頭部から深緑色のボブを覗かせて、その女性は優しく微笑んだ。

そうか、自分はまだ死んでいないのか。莉子は他人事のようにそう思いながら、女性をじっと見つめ返した。

淡い緑色、マイペースそうな垂れ目、華奢な身体、フレンドリーなようでミステリアスな雰囲気。種族が違うにもかかわらず、全てがひしひしとゲコちゃんを感じさせる。ゲコちゃんはメスだったので性別も同じだ。何より声がさっきの鳴き声の波長と一致している。

それなら莉子の名前を知っていることにも納得が行く。それ以外の理由については今のところ納得できそうにないが。

「もしかして、ゲコちゃん?」

尋ねずにはいられなかった。違ければ逆にこちらが不審者だ。女性の目が丸くなったかと思うと、それは明らかに嬉しそうに三日月型になった。

「大当たりです」

言葉というよりは、その正直な表情で確信した。

この人はゲコちゃんだ。信じ難いが、ゲコちゃんであることに間違いない。

「ゲコちゃん……」

数々の疑問を喜びが上回った。身を乗り出し、その懐かしい身体に触れようとする。

「いッ……」

だが直後、悔しくも激しい痛みに襲われて顔が歪んだ。そんな莉子を見てゲコちゃんはすくりと立ち上がった。莉子に背を向け、犯人と向かい合う。その間際、一瞬冷ややかな真顔が見えた。一方で口を開けば、特に怒りを感じさせない呑気な口調だった。

「貴方は人を殺すことがお好きなんですか?」

何てことを聞くんだ。ゲコちゃんの180cmほどの高身長で見えなくなった男の反応が気になり、痛む傷を押さえながら莉子は身を傾ける。

「別に好きじゃない!ただこうするしかなかったんだ!」

「こうするしかない、とは?」

顔を赤くして声を張り上げる男に、心底分からないといった具合にゲコちゃんは首を傾げてみせる。いちいちそんなことを聞く必要があるのだろうか。どうでもいいから早く取り押さえるか運んで逃げるなりしてこちらを助けてほしいのだが。

「自殺したかった。でも勇気が出なかった。だから人を殺して死刑になろうと思った」

犯人というのはやはり自己顕示欲が凄い。聞かれるなりベラベラと語る。莉子は確かにさっき、どうせ刺したのなら堂々としていろよと思ったが、堂々と理由を並べ立てられるとそれはそれで腹立たしいものがある。

ゲコちゃんも同じことを思ったらしく、嘲るように顔の前でヒラヒラと手を振った。

「いやいや、何を仰いますか。殺す以外にも方法はあると思いますよ。例えば私に殺されるとか」

その声色は冗談か本気か分からなかった。背を向けているのでどんな表情をしているかは分からなかったが、なんとなく、何てことない顔をしているように思えた。だからこそ恐怖感が増していた。

「い、いっ、今更無駄だ」

男の声が震える。

「そ、それに、理由はそれだけじゃない。俺だけが不幸で、皆が幸せそうなのが腹立たしかったんだよ。皆ばっかりずるいんだよ。お、お前だって俺のこと何も知らないくせに、正義面して卑怯だぞっ」

「卑怯なのは貴方ですよ」

「な、何?」

「貴方だけ人を殺せるなんてずるいですよ。皆不幸かもしれないのに。貴方を殺したい人だっているかもしれないのに。例えば私とか、私とか、私とか」

言い過ぎたら刺されるのではと危惧していたが、今はゲコちゃんの方が平気で刺しに行く気がして、それはそれで心配だった。

とはいえ、ゲコちゃんはナイフを持っていない。

「なッ舐めやがって!!殺せるもんなら殺してみやがれ!!」

遂に逆上した男は、威嚇のつもりかナイフを前に突き出した。

ゲコちゃんは微動だにしない。それどころか「やれやれ、命知らずですね」と呆れたように首を横に振り、まだ相手を煽る。

嫌な予感がする。殺すのも殺されるのもやめてほしい。なるべく平和に、穏便に──なんて事件現場で願ったとて、とうに手遅れなのだが。

そもそも蛙が人間になって現れた時点で異常事態なのだ。全部夢かもしれないし、今だけは夢だということにしておくから、もうどうにでもなれ。

莉子は強く瞬きをした。

その一瞬で、ナイフは宙を舞っていた。

天井に向かって真っ直ぐ伸びる細長い右足を見て、ゲコちゃんが蹴り上げたのだ、ゲコちゃんの武器は足なのだと理解した。にしてもどこに蹴ってるんだ、今度は落ちてきて危ないだろと思うや否や、これまた長い腕を伸ばし男より先にナイフを掴み取った。そして男がそれを取り返そうとするより先に、それにしても綺麗な手足だなと莉子が見惚れる間もなく、目にも止まらぬ速さで次の一手を繰り出した──正しくは、次の一足を蹴り出した。

「せいぜい豚箱で生身を鍛えるとよろしいかと」

ドヤ顔で放たれたとどめの台詞、その向こうで、扉に勢い良く身体を打ち付ける音が響いた。見ると、男は腹を押さえてぐたりと気絶していた。どうやら一足で軽々と吹っ飛ばされたようだ。

流石蛙、凄まじい脚力だ。こんな人並外れた能力、蛙じゃなきゃ出せるわけがない。莉子は感心する他なかった。手が上がらない代わりに心の中で拍手した。

ゲコちゃんは敢えて残したままにしていた右足を下げながら後ろに回し、その反動でくるりと莉子を向き直る。随分と晴れやかな顔をしていた。

言いたいことは沢山あるが。

「殺さなくて良かったよ」

ひとまずそれだけ告げて莉子が苦笑してみせると、ゲコちゃんは両手をめいっぱい伸ばして勢い良く抱きついてきた。

「莉子さぁ〜ん!!莉子さんの前だったので踏み留まれました〜!!褒めて下さい〜!!」

そんなのは踏み留まって当然のことだと思うが。莉子がいなければ一体どうしていたのか、想像もしたくない。

「それにしても私のことを覚えて下さっているなんて!しかも変わり果てた姿でもすぐに分かるなんて!流石私のご主人様、愛が深いですねぇ!!」

ついさっきまで飼っていた事実自体を完全に忘れてたけどな。

嬉しいのは分かるが、こちらが怪我人であることを忘れているのかと思うほど、いくら何でも興奮し過ぎだ。莉子はわざと興奮を下げる為に、『異様な外見過ぎて嫌でも結び付けるしかなかった』と少し嫌味なことを返そうとした。したのだが。

「いおおあ……え?」

呂律が回らなかった。

頭が、身体が、急速に冷える。そういえばさっきから腰も冷たく濡れているような。恐る恐る足元を見ると、やはり大きな血溜まりができていた。

結局救えてないじゃないかよ。

莉子は激しく絶望し、がくりと頭を下げた。

「えっ莉子さん!?大丈夫ですか!?」

全然大丈夫じゃない。だから早く助けてほしかったのに。退治して気持ち良くなるより、真っ先に救命措置を取ってほしかったのに。

再び視界がブラックアウトする。ゲコちゃんの慌てた声が、魔法のように元来の鳴き声に変わっていく。

ゲコゲコ……ゲコゲコ……

それは泣いているように聞こえなくもなかった。

今更泣いても無駄だ。暗闇の中、莉子も今更のように、蛙は救命措置も救急車も知るはずがないのだと気付いた。

飼っている時に教えておけば良かった。何だそれ、蛙の英才教育か。訳の分からないワードを最後に、莉子は完全に気を失った。




次に視界として認識したのは、自分の部屋の壁だった。白いから一瞬天国に来たのかと思ったが、壁から視線をずらすと見慣れた棚があり、先月買ってまだ1ページしか読んでいない文庫本が置かれていた。

自分の部屋を完全再現した天国があるというのならまさに実家のような安心感だろうが、天国はそこまで甘くない気がした。それに莉子は“死んだら無”派だ。神も死後の世界も転生も信じていない。

ただ一匹、目の前に現れてしまったゲコちゃんを除いては。

そうだ、ゲコちゃんはどうしたのだろう。自分の容体よりゲコちゃんの行方が気になり、ベッドから上半身を起こした。

そこで驚いたことが三つ。

まず一つ、デジタル時計が朝の8時を示しているが、その下の日付表示が10月31日になっている。刺された日と同じである。時計が壊れているのかと思ったが、電池を交換したばかりだし、仮にそうだとしたら自分の傷はどうなっているのだろう。

確認しようとパジャマ用のTシャツを捲って、二つ目。腹の傷が綺麗さっぱり消えている。まるで刺されたのが夢だったかのように──

「そっか、夢だったんだ」

一人で納得してぽんと手を打ち、安心してベッドに横たわり──そうして三つ目。

「……うわ、最悪だ」

すぐ隣で寝ているゲコちゃんにようやく気付き、莉子は額に手をやった。

夢じゃなかった。夢であってほしかったのに。

絶望を感じながらゲコちゃんの肩を雑に揺する。

「ちょっと、何してんの」

「んん……莉子さんそっちはマグマですよぉ……」

完全に寝ぼけている。着ぐるみのまま寝ているのがどうでも良くなるくらいツッコミどころが多すぎる。なぜ何の説明もなしに人のベッドで熟睡できるのだろう。つくづく蛙の神経が分からない。

分からないからこちらも気を遣ってやる必要はない、と莉子はゲコちゃんをベッドから突き落とした。

「ハッ!?ここはマグマですか!?」

衝撃でゲコちゃんの目が全開に開かれる。

「現世だよ、多分」

莉子の声で飛び起きると、両手を伸ばして飛びついてきた。

「ああっ莉子さん良かった!!生きてたんですね!!」

「一回死んだけどね、多分」

「……」

ゲコちゃんが黙り、代わりにギィ、とベッドが軋む音がする。

「……気のせいですよ☆」

「隠蔽するな、洗いざらい吐け」

莉子が睨むと、観念したように息を吐く。

「はぁ、知らなくていいこともあると思いますが……莉子さんは何でもかんでも知らずにはいられないバカ真面目ですもんね。昔からそうでしたね。仕方ないですね、説明してあげましょう」

「おい今何て言った?」

その質問を無視して莉子の前に正座すると、ゲコちゃんは誇らしげに人差し指を立てた。

「これは俗に言うタイムリープってやつですよ」

「え?」

「確かに莉子さんは一度死にました。でも私の能力のおかげで死んだ日の朝に戻ることができたんですよ。凄いでしょう。そういうことです」

「え?」

「だから、そういうことです」

「どういうことだよ」

説明不足にも程がある。ただでさえ内容が奇想天外で、それを頑張って聞こうとしてあげているというのに。

「もっと丁寧に具体的にお願い」

「まったく、知りたがりなんですから」

「自分の命に関わることなんだから当然だろ」

「命に関わることだからこそむやみに話したくなかったんですけどね」

ゲコちゃんはやれやれと首を横に振り、最初からそうしろよといった具合にペラペラと語り始めた。

「莉子さんの知っている通り、私は天国で味気のない時間を送っていました」

全然知らない前置きから始まった。

「莉子さんの味を求めていたあくる日。天使によって発表された、愛好町エリアから明日天国に送還予定の名簿に、なんと莉子さんの名前があるではありませんか。無論私は直談判しました。しかし全く聞き入れてもらえず……怒りと使命感に駆られた私は、小さい身体と自慢の足を駆使して天使の部屋に忍び込みました。机にあった高級ロールケーキを食べながら今か今かと待ち伏せし、天使が入ってくると同時にその羽に齧り付きました。止めに入ったもう一体の天使の羽にも齧り付きました。すると何ということでしょう、身体が輝き出し、綺麗さっぱり消滅したではありませんか。気が付くと私は、人間の姿で現世に舞い降りていました。どうやら『天使の羽を食べると天使の能力をコピーできる』という噂は本当だったようです。一体の天使が『人間になれる』という能力なら、もう一体の能力は『タイムリープ』でした。こうして私は新たな能力を駆使し、莉子さんの救出に見事成功したというわけです。お分かりいただけましたか?」

「全然分からないし救えてないじゃねぇかよ」

莉子はベッドのマットを拳で殴った。これが夢じゃないのなら、現実は夢のごとく狂っている。

「まぁまぁそうカリカリせずに。今生きているんだから良いじゃないですか、私も莉子さんも」

何様のつもりだろう。

「大体ゲコちゃんが死んでたなんて知らなかったんだけど」

「あら、じゃあ何だと思ってたんですか?」

口に手を当ててわざとらしく驚いてみせる、そういう仕草がいちいち癪に障る。

「窮屈な水槽での暮らしが嫌になって、野生に戻ったのかと思ってた」

「そんなわけないじゃないですか、莉子さんとの毎日は幸せでいっぱいでした」

「じゃあなんで逃げ出したの」

「回し車で走っても走っても走り足りなくて、足が疼いてつい。若気の至りってやつですよ」

ゲコちゃんは照れたように天井を仰ぐ。今とさほど、というか全く変わらないと思うが。

「でも本当に、ちょっとその辺を走るだけだったんです。莉子さんを決して心配させないように、寝ている隙にこっそり抜け出して、起きる前に戻るつもりでした。しかし帰る途中、鳥に食われたのです」

──鳥に、食われた。

頭で繰り返して、それでもあまり理解できなくて、というより理解したくなくて、少しだけ身体が冷えた。

「あぁ、これは確かに知りようがないかもしれませんね。言葉のやり取りも痕跡もないですし、私の意思で逃げ出したと思われてもおかしくはありません」

今更気付いたようで、ゲコちゃんは悲しげに目を伏せる。それがどうにも見ていられなくて、莉子も静かに目を逸らした。

「決して出るなと言われていた水槽を出てしまったこと、今でも申し訳なく思っています」

「いいよ、もう過ぎたことだし」

「莉子さんの恩を仇で返すようなことをしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」

「うん、もう分かったから……」

そこでゲコちゃんの声色が変わった。

「ですが食われたことに関しては、私は一ミリも悪くありません」

思わず顔を上げると、目の色までも変わっていた。緑色は緑色なのだが、穏やかではなく、静かに燃え盛っているような。

「悪いのは鳥です。鳥という存在です」

「それはそうかもしれないけど……」

「鳥はこの世に存在してはいけません。一刻も早く滅びるべきです。まとめて地獄に堕ちるべきです」

「それはどうかと思うけど……」

「だから私が、全ての鳥を滅ぼします」

「それは絶対やめて!?」

そこで運悪く、ベランダの床で日向ぼっこしていた雀がちゅんと鳴いた。

「噂をすれば、飛んで火に入るクソスズメ」

舌打ちし、ゲコちゃんはすくりと立ち上がる。

「あっ、何を」

莉子が止める間もなく窓を開け放つと、逃げる間もなく足を振り上げ、思い切り雀を蹴り飛ばした。青空にきらりと飛んでいくスズメ。鳥としてではなく、サッカーボールとして。

ナイスシュート──なんて誤魔化したくなるほどの恐ろしい光景である。

「動物虐待反対!!」

莉子は発狂した。大人しい莉子には極めて珍しいことだ。

「なぁにが虐待ですか笑 殺してきたのはあっちでしょうが笑」

「あの雀には何の罪もないけど!?」

「雀であるだけで罪なんですよ。この世は弱肉強食、雑魚は淘汰される。これもまた自然の摂理というわけです」

「己の攻撃を正当化するな!!」

莉子はゲコちゃんのごとくキックを繰り出した。早速悪影響を受けているかもしれない。しかしゲコちゃんの速さには到底敵わず、容易くかわされてしまう。

「お、運動神経の悪い莉子さんにしてはなかなか良い蹴りですねぇ。私がもっと鍛えてあげましょうか?」

「ふざけ……」

「と言いたいところですが、今は鍛えるより先に、死なないようにしなければなりませんね」

言葉と裏腹に、ゲコちゃんはにっこり微笑む。

「一緒に生き延びましょうね、莉子さん!」

頼もしさより不安が勝つ。

「……いっそ死ねば良かったな」

「こら!何てこと言うんですか!」

「痛い痛い!!力加減!!」

ぽかぽか、なんてものとは程遠い強力なパンチを浴びながら、莉子はまたしても今更のように、そして他人事のように、なぜこんな蛙を飼ってしまったのだろうと思った。

つづく🐸

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