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第5話酒場で食事を済ませた後、じいちゃんは服屋により、新しい服とフード付きのマントを買ってくれた。街に入る時の視線が気に入らなかったらしい。その後に街の離れにある森で散歩をした。その森はとても面白いものでいっぱいで飽きることがなかった。しかし夢中になりすぎたのが仇となり、じいちゃんと離れてしまった。
じいちゃんを探したが、見つからず夜になってしまった。さすがに怖くなった僕はそのまま座り込んでしまった。森の中、夜。昔の人さらいにあった時の記憶が蘇り、余計に動けなくなった。しばらく経つと人の話し声が聞こえた。僕は人がいることが嬉しくなり、思わず駆け出してしまった。それが間違いだった。
「〜でよー。」
「すみません!」
「あ?なんだ?ガキ。」
「!?」
僕は固まってしまった。声をかけた男は酒場でで会った男だったからだ。しかし、マントのおかげか向こうは僕だと気づいてないようだ。
「黙ってねぇでなんか言えよおい。」
「あ、その…!森に迷ってしまって。良ければ出口まで案内して貰えませんか?」
「…いくら?」
「え?」
「だーかーら!いくら払ってくれるんだって聞いてんだよ!!まさかタダでやってくれると思ったのか?」
「す、すみません。お金もってなくて…代わりに何でもします!お願いします!」
「誰がやるかよ。なにか頼みたいなら金を払え。話はそれからだ。」
「なあ、案内してやってもいいんじゃないか?」
「はぁ!?言い訳ねえだろ!大体俺は今日ジジイに殴られてムカついてるんだよ!…ん?」
「?」
「お前…酒場の時のガキか?」
「!!」
「やっぱり!黒髪のガキだ。…おいガキ。やっぱ金入らねえよ。代わりに、ちょっと遊んでくれ。」
その瞬間、腹部に強い衝撃を受けた。殴られたと認識するまで時間がかかった。胃から込み上げるものがあり地面に思いっきり吐瀉した。嗚咽が止まらない。視界が真っ暗だ。殴られるというのはこんなに痛いのだと久しぶりに実感した。
「ハハッきったねぇ笑お似合いだよ。まるでドブネズミだ。いや、それ以下か。」
ドブネズミ以下。それは黒髪である限りいつまでも言われ続けられるのだろう。小さい頃からよく言われた言葉だ。男は次々と殴ってきた。
1発。また吐いた。苦しい。
1発。顔を殴られた。歯が折れた。痛い。
もう一度、足が痛い。やめて。
もう一度。全部痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。やめてやめてやめて。
血の気が引いていく。段々と死に近づいていくのを感じた。僕はまだこんなに弱いのか。たかがスライム1匹倒したくらいでいい気になっていた。なんて無力なんだ。なんて非力なんだ。今までの努力はなんだったんだ。
「このガキ死ぬかなぁ」
「死んでも別にいいだろ。黒髪は死んだ方が世のためになるんだ。」
「それもそっか笑」
「おい、こいつ結構いい顔立ちしてるぜ。まるで女みたいだ。売れば結構いい値がつくんじゃね?」
「お、確かに。でも黒髪だぜ?誰も欲しがんねえよ。」
「髪は別に染めればいいだろ。物好きは喉から手が出るほど欲しがるぜ。」
「んー。よし。おーいポーション持ってこい! 」
僕…売られるのか?嫌だ。じいちゃんと離れるなんて嫌だ。助けて。誰か助けて。お願い。
「カイ!!!」
じいちゃんの声が聞こえる。じいちゃんがきたなら安心だ。すぐに酒場の男たちを倒してくれる。僕は安心感でゆっくり目を閉じた。次に目が覚めた時はきっと家だ。そうに違いない____。
しかし、目を覚ましたら家ではなく血だらけのじいちゃんの顔だった。