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「またね、先生」
雨音がうるさくても俺の耳にはしっかりそう聞こえた。踏切が開いて君がゆっくり歩き出す。
滅多に閉まらないここの踏切が、ついさっき俺たちの前で閉まったのは、神様の仕業だろうか。
水色の傘から見える君の後ろ姿が遠ざかっていく。暫く見ていると、ふと君が振り返った。目が合うと、君が暗い天気に負けないくらいの笑顔で、右手を大きく振った。
胸が鳴っていた。俺はつい笑みを零して、手を振り返した。君は満足そうにまた笑って、背を向けて歩いていった。
太陽みたいに眩しい君に、俺はいつからこんな風になったのだろう。いつから俺は、君の笑顔に目を奪われてしまったんだろう。
確か、始まりは”あの夏”だ。