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伊織がHUNTERに残る事を決めてから暫くして、榊原の一件が功績として讃えられて大きく評価されたことで、上層部からの通達により【HUNTER】は大きな組織として全国各地に拠点を置く事が決まった。
表向きは【特別捜査本部】の所属となり、裏では【HUNTER】としてこれまでと変わらぬ仕事をすることになるが、これまでは伊織たち三人だけでやっていた事を、これからは警察関係者や裏で繋がりのある人間たちが加わり戦力となる。これは大きな進歩で、これまでHUNTERのボスとしてやって来た忠臣は努力が報われたようで誰よりも喜んでいた。
それに伴い便利屋【utility】をたたむ事になり、伊織たちの職業を警察官に改め、これまでよりも堂々と動けるようになり仕事はやりやすくなっていた。
そして、
「もう一度聞くが、伊織、円香さん、本当に、それで後悔は無いんだな?」
「勿論。二人で考えて、決めたんだ」
「はい。私はやっぱり伊織さんのやりたい事を、やってもらいたいんです」
「どんな仕事が来ても止める事は出来ないのも、理解しているのかな?」
「はい。お仕事の内容には口出ししません。私は、彼を支えるだけです」
「……そうか。伊織、円香さんに感謝しろよ? 俺たちの仕事にこうも理解を示してくれる人はそういないんだ」
「分かってますよ」
「しかし、円香さんの両親にはどう説明するつもりだ?」
「話せるところだけ話して、納得してもらうつもりです……それしか出来ねぇし」
「そうか。まあ、便利屋より警察官の方が、理解を得られるだろうから、タイミングは良かったな」
「そうっすね」
「いいなぁ、伊織は。円香ちゃんみたいな可愛くて理解ある子と一緒になれて」
「雷、お前も見つけろよ、そういう奴をさ」
「うわ、上からウザっ」
「じゃあ言うなよ」
「うそうそ。まぁ、いつか機会があればその時はね」
「お前ならすぐ見つかるよ。それじゃあ、円香の両親に話してくるよ」
「ああ、行って来い」
「頑張ってね~」
忠臣と雷斗に改めて報告をした二人はそのまま雪城家へと向かい、円香の両親には話せる部分だけを掻い摘んで話し、警察官としてこれからも治安を守っていきたい思いを伝え雪城の姓を継げないことを謝った。
「そういう事情なら、仕方ないな。君も誇りを持って仕事をしているだろうから。雪城の事は気にしなくて良い。寧ろ迷わせてしまう事になって、悪かったね」
「いえ、そんな事はないです。ご理解くださって感謝します」
「円香」
「はい」
「伊織くんを支えて、良い家庭を築いていきなさい。分かったね?」
「はい!」
本当の事を話せないという後ろめたさはあるものの、認めて貰えた二人はほっと胸を撫で下ろした。
こうして様々な問題が解決していき円香は暫く休学していた大学に戻るか悩んでいたのだけど、伊織を支えていくことや花嫁修業に専念することなどを考え両親とも相談した結果、退学する事にした。
結婚の許しを得てからひと月後、結婚式は約半年後に決まり、円香の両親の希望で結婚するまでは二人雪城家の一室で生活をする事になった。
伊織は新たな環境になった事もあって毎日忙しく過ごし、新人教育を任されていることも相俟って数日帰れない日も多々あった。
その間円香は家政婦たちから家事のノウハウを叩き込まれ、伊織が帰らない日も淋しさを感じる暇もないくらい毎日忙しく動いていた。
「ただいま」
「お帰りなさい、伊織さん! 今日は帰って来られたんですね」
「ああ。流石に一週間職場に拘束は有り得ねぇ。人はいるんだからさ、いい加減休みが欲しいっての。それに明日はドレスの打ち合わせだろ? 休み貰ったから俺も一緒に行く」
「良かった、伊織さんとも相談して決めたかったから嬉しいです」
「それじゃ、とりあえず風呂行ってくる」
「お食事は?」
「軽く済ませてきた。疲れて食欲ねぇし、風呂出たらもう寝たい」
「分かりました、それじゃあ飲み物だけ用意しておきますね。今日は早めに休みましょう」
「ああ、ありがと」
明日はウエディングドレスの打ち合わせという事もあり、伊織は忙しい中休みをもぎ取り帰宅する事が出来、久々に二人で夜を過ごせる事になった。
伊織がお風呂にいる間、円香はそわそわしていた。
(久しぶりに伊織さんと過ごせる……下着、気合い入れちゃった……変かな?)
鏡で自身の姿を確認しながら、ふと以前にもこんな状況があった事を思い出して可笑しく思っていると、
「何鏡の前でニヤついてんだよ?」
「い、伊織さん!?」
「何だ? もしかしてお前、やらしい事でも考えてたんじゃねぇのか?」
「そそそ、そんなこと、考えてませんよ!?」
「そうかぁ? その割には下着、気合い入ってんじゃねーの?」
「そ、そんな事ないです! これは、その……気分を変えただけです!」
「へぇ?」
「……も、もう! 伊織さんの意地悪!」
「悪かったよ。ほら円香、こっち来いよ」
からかった事を謝りながらベッドに座った伊織は円香を呼び寄せる。
「私、もう怒りました! 今日は一緒のベッドで寝ません」
頬をふくらませ、隣にある自身のベッドに向かおうとする円香だったけれど、
「駄目だ。お前は俺と一緒に寝るって決まってんの」
腕を引かれた円香はそのまま伊織のベッドに倒れ込んでしまった。