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「……じゃあ、もう少しでいいから、俺をちゃんと見てろよ。」
自分で言っておいて、内心めちゃくちゃ恥ずかしかった。
けど、もう誤魔化せねぇ。
最初はただの「お試し恋愛」だったはずなのに、まりあの表情が変わっていくたび、俺の気持ちも変わってきた。
それに、まりあが戸惑いながらも俺のことを考えてくれてるって、なんとなくわかる。
……だからこそ、もうハッキリさせたかった。
「お試し」とかじゃなくて、本当の意味で。
***
その日は、それ以上何も言わず、並木道を歩いて帰った。
でも、まりあが俺の横でそわそわしているのが伝わってくる。
さっきの俺の言葉、きっと考えてるんだろう。
俺も……同じだった。
まりあを「お試し」のままにするのか。
それとも──
***
次の日。
学校に着くと、すぐにまりあと目が合った。
「……おはよう、李斗。」
「おう。」
いつも通りのはずなのに、まりあの表情がどこかぎこちない。
俺のせいだよな、たぶん。
でも、それならそれでいい。
考えてくれるなら、そのまま答えを出してくれればいい。
……そう思ってたのに。
昼休み、俺は思わぬところでイライラすることになった。
まりあが、別の男と話してた。
相手は、生徒会の副会長とかいう真面目そうなやつで、まりあは楽しそうに笑ってる。
──なんだ、それ。
別に、ただ話してるだけだろ。
でも、なんかムカついた。
イライラする自分に気づいて、俺は思わず教室を出た。
「……くそ。」
廊下に出て、気を落ち着かせようとしたけど、胸のざわつきは収まらない。
何なんだよ、この気持ち。
まりあが誰と話そうが、俺には関係ねぇだろ。
……なのに。
「李斗?」
後ろから声が聞こえて、振り返ると、そこにはまりあが立っていた。
「……何。」
「さっき、急にどこか行っちゃったから…気になって。」
「別に。」
「でも、なんか怒ってる?」
「怒ってねぇ。」
「……ほんと?」
まりあがじっと俺を見つめる。
その視線が、妙に真剣で、俺は視線を逸らした。
「……お前が誰と話してようが、俺には関係ねぇだろ。」
「え?」
「だから、気にしてねぇって言ってんだよ。」
自分で言ってて、矛盾してるのはわかってる。
でも、これ以上まりあに悟られたくなかった。
「……そっか。」
まりあは少し寂しそうに笑って、踵を返そうとした。
その瞬間──
俺の腕を、ぎゅっと掴んできた。
「……は?」
「ごめん、李斗。」
まりあの声が、小さく震えてる。
「私も……わかんないの。でも……なんか、李斗が遠くに行っちゃうみたいで……すごく嫌だった。」
胸が、一気に締めつけられる。
「お前……。」
まりあは、ぎゅっと俺の腕を握ったまま、顔を伏せた。
「だから……お願い、もう少しだけ……そばにいて?」
──チッ。
そんな顔されたら、断れるわけねぇだろ。
俺は小さくため息をついて、まりあの頭を軽くポンと叩いた。
「バカ。……俺はどこにも行かねぇよ。」