乾いた庭の土の匂い
雲一つ無い綺麗な青空
太陽は今日も容赦なく世界を照らしている
父は学校の教師をしておりそこそこ裕福な暮らしをしていた
だから収集箱や道具も揃えることが出来た
私は蝶を収集することが好きだ
小さな一つ一つの蝶の美しさを眺めるのは
私にとってどんな時間よりも貴重だ
周りからなんと言われようと
どう見られていたとしても
そんな自分が少しだけ好きだった
em「……ゲホッ…ゴホッ…」
体が生まれつきそこまで良くなかった
外で蝶を追い掛ける子供を見ると
憎くて仕方がなかった
自分にできないことをたくさんしていたから
ただ脳に残る言葉はいつも同じ…
em「羨ましい……ギュッ…」
そしてその音を掻き消すように笑い声がきこえてくる
em「……」
母「いいですか、エーミール」
母「きっと貴方は長く生きられますからね…ナデ」
em「それは慰めですか?お母様」
母「いいえ…絶対です…ギュッ…!」
母「貴方はきっとッ…きっとッ…」
em「お母様、お体に障ります」
em「私もそこまで酷くはないのでご心配なくスッ…」
母「では…また何かあったら読んで下さいねニコ」
em「えぇ…バタン…」
母はいつもそうだ
こうやってドアを閉めたあと
自室にこもって泣いている
でも幼い頃からそれを見ても
心が揺らぐことは一切なかった
そしてある日思ったのは1つだけ
em「チッ…」
em「馬鹿らしい…」
em「チラ…」
そこにあったのは貧相だが綺麗な蝶である
蝶は美しい
人は汚い
同じ息をしている動物なのに
何故こうも違うんだろうか
em「……」
ガサッ!
em「今日もいらしてたんですね…」
__「あぁ!お前が全然会いに来てくれないから来てやったんだゾ!」
em「別に頼んでないんですが…」
それは隣の町の収集をする少年ではない
綺麗な金髪と赤いルージュのような瞳を持つ少年だ
彼の父はドイツの軍事国家にすべてを捧げた人で
その成績は優秀で中将を務めるお偉いさんの息子だ
そして彼もまた父親と似ているのだろうか
人をよく観察する癖があるらしい
彼の名は…
__「ニヤッ…!」
em「……ジー…」
gr「エーミール!!」
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コメント
1件
あ~~~〜〜〜メッチャクチャいいです! emさん主人公な小説少なめなので、めちゃ嬉しいです。