テラーノベル
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#シリアス
#イケメン
第1話
「やっばぁい! 遅刻なんだけど~」
あたし、茶山鈴奈十二月の寒空の中、雪道を早足で歩いていた。
目覚ましかけるのを忘れてたぁ!
あたしってば、なんてドジなのぉ~!
あたしが歩くたびに「ザッザッザッ」と雪を踏む音がする。
「もう、お化粧した意味がないなぁ……」
ほんのりのせた化粧が汗で溶けていくのをあたしは感じる。
冷たい風があたしの頬をかすめる。
「だ~か~らぁ、寒いんだってばぁ~」
あたしは環境に文句を言う。
「…………」
歩道を眺めた。
わぁっ、きれい……。
こんな日でも積もった雪が人々を魅了する。
でもこんなに積もってて、今日、お客さん来るのかな? こんな日まで営業するって、もはやド根性……。
あたしは勤務先のスーパーを目指してひたすら歩いた。
スカートの下から冷気がこれでもかと襲ってくる。
アパートから勤務先まで徒歩15分。
あたしは県記念公園の横を通り過ぎる。
福祉を目的とした複合施設が公園内にあり、レストランなどもあるが、雪の影響で今はひとっ子ひとり見当たらない。
公園にはたくさんの桜の木が植えられていて、毎年お花見の時期は賑わっている。
「……んっ?」
あたしはふと人の気配を感じて公園内を見た。
「え——」
目を開き、あたしは大きく息を呑んだ。
そこに男性がひとり立って、天を仰いでいた。
「なにこれ……」
足が止まる。
息をするのですら忘れてしまう——
ひらひら……。
空に美しい桜の花びらが、優雅に舞っていた。
十二月初めの冬に咲いた一本の桜の木。
桜には真っ白な雪が積もり、あたりを銀世界へと変えていた。
人離れした美しい男性が、優しい眼差しでその桜を眺めていた。
ふわり——
男性の鳶色の絹のような髪が、風に大きくなびく——
背が高く、桜を見上げるしなやかな身体。年はあたしより少し上だろう。
グレーのマフラーに黒のジャケットからは品の良さが滲み出ていた。
風が吹くたびに男性の周りを楽しそうに舞う雪と、桜の花びら。
……こんな景色、初めて見た……ド、ドラマの撮影みたい……
あたしの身体に電気が走った。
「…………」
ただただその光景に見惚れた。
「……!」
男性のラフなレイヤーが入った髪が揺れ、目が合う。
ドキッ!
心臓が跳ねた——
「なに見てんだよ……?」
誰も寄せ付けないような温度のない声が、男性から発せられた。
「えっ?」
驚きを隠せなかった。
その言葉、あたしに言ったんだよね?
「おれは他人からそんなに見られるのは好きじゃない」
男性が淡々と語った。
「あ、ご、ごめんなさい。なんかアニメ……じゃない、ドラマのワンシーンみたいで、思わず見惚れてました」
あたしは急いで男性から視線を逸らす。
男性がその様子を見て、少しだけ頬を緩めた。
その表情にあたしの中にあった警戒心が、少しだけ軽くなる。
「こんな真冬に桜が咲いて、雪が積もるなんてほんと奇跡だよな……」
男性の横顔が再び空を仰いだ。
「…………」
どうしてかわからないけど、あたしの心臓がなぜか速くなっていく——
コメント
4件
うわ、第1話からすごく引き込まれました!冬の雪景色なのに桜が舞うって、非現実的で美しい光景ですよね。現実的な遅刻シーンから始まって、あの男性との出会い——「なに見てんだよ…」の冷たい口調と、その後ほんのり緩む表情のギャップがもう気になりすぎます。雪と桜のコントラストが映像的に鮮やかで、これからどんな世界が広がるのかワクワクしながら読み終えました。続きが待ち遠しいです!