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トド村
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主
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先輩が話し始めた。なんか今日は調子狂うなぁ。
先輩に話の主導権握られちゃったし。
いつもならこういうのは大体わたしからなのに…
掻き回された調子を治そうと思いながら、何の役に立つのかもわからない色んなお茶を、とにかく目に入ったものから順番にすする。
それに今日は言うって決めたんだ。先輩に「好き」って。
けど先輩がわたしのことを信頼してるって言ってくれて、わたしはびっくりした。
驚いた。嬉しかった。
ちょっと受け入れるのに時間がかかった。
人間ってあまりにも嬉しいことがあると思考停止しちゃうのかな、と思った。
だって今も信じきれていないから。
ほんとですか?って訊こうと思ったけど、失礼だからやめた。
あの時の、わたしを見つめる先輩のまなざし。
真剣だった。とても嘘とは思えない、信じられない、真剣な瞳。
どこまでもまっすぐに、わたしのことを見つめていた。
だから本当なのだろう。
わたしだって先輩のこと信頼してるし。
だからきっと、これから先輩が何を話そうとわたしは信じる。
先輩は、嘘はつかない。
わたしは先輩の言葉を待つ。
「実はね」
ごくり。固唾を飲む。
「私、彼氏がいたことがあるの。元カレって言うやつかな」
………………えっ?
ちょ、ちょっと待って…?
先輩、彼氏いたことあるの…?
えっ、それって…
「えっ、えっと、あの、ちょっと、てことは、先輩のはじめて、私には取れないってこ…と……はっ!」
思わず自分や口を自分の手でおさえる。
何言ってるんだわたし!!!!
「えっ、いやあのちょっと、あ、なな、なんでも、ないですっ…!」
あまりにも遅くて、情けなさすぎる否定をして、余計に惨めになってくる。
先輩、どうか聞かなかったことにしてください…
でも先輩は引くでも焦るでもなく、代わりに口元を緩ませて、柔らかな笑顔をこちらに向けた。
「…ふふっ」
なんで。なんで先輩笑ってるの?
「雛西はさ、私のこと、すき?」
えっ。
予想もしなかった先輩の言葉に、わたしは硬直してしまう。
先輩は柔らかな笑顔のままわたしをまっすぐに見つめる。
答えを急いでいる様子はなく、
「聞かせてほしい」
という気持ちが言葉もなくなぜか伝わってきた。
先輩の優しい眼差しが全てを物語っている。
わたしは大きく息を吸って、まっすぐに先輩を見つめる。
先輩のあたたかみで少しずつ和らいできた表情を微笑みに変える。
「…好き、です」
ことん、と落ちるように優しく、その言葉は驚くほど自然な響きでわたしの口から発された。
「…そう」
先輩が息を漏らすように微かに言う。
「良かった…」
先輩はちょっと涙ぐみそうな笑顔でこちらを見る。
「もう、ひとりじゃなかった」
先輩はひとすじ涙を流す。
「私も、好き」
先輩が潤んだ瞳でこちらを見つめて言う。
言ってくれた。
好きって。
先輩の瞳から流れた涙が反射でできらり、と光る。
光が一瞬だけわたしの眼へ向かって煌めく。
わたしにはそれがすごく美しいもののように見える。
先輩の涙は、この世界の希望を凝縮したように美しい。
そんな神聖なものなのだと、わたしは大した理由もなく、思う。
いや違う。
大した理由もなく、こんなことを思わせてくれる先輩がすごいんだ。
ああ。
慰めてあげたい。
この、清らかさの塊のような人を。
考えるよりも先に、手が伸びる。
わたしは指で先輩の涙を拭き取る。
「…聞かせてください。先輩のこと」
「風花…」
通りすぎるようにあっさりと、先輩はわたしの下の名前を呼んだ。
!!…呼んでくれた。嬉しい。
飛び上がりたいほどうれしいけど、今は外だから我慢我慢。
「うん…ちゃんと話すよ」
「先輩…ありがとうございます…」
「あっ、ていうかごめん、ちょっとトイレ…」
先輩はそう言うとてくてくとトイレの方向へ歩いていった。
色々なことが起きすぎて頭がこんがらがる…
わたしが好きって言うはずだったのに。
先輩に先取りされちゃった。
それがすごく悔しい。でも同時に、すごく嬉しくて、しあわせ。
今はそれで、胸がいっぱい。
わたしは何から何まで、頭のてっぺんからつま先まで、しあわせで満たされていた。
ほわほわする感覚。体が隅から隅まで暖まっていく感覚。
眠気に似てるけど、そうじゃない。
はっきりとわかる。先輩のおかげだって。
はああ、しあわせ…
顔赤くなってるかもなー、わたし。
両手で頬を触る。
あったかい。
ふと、あの時の耳を赤くしていた先輩もそうだったのかな、と思う。
触ってみたい。
先輩の耳だけじゃなくて。もっと奥に秘めた部分。
段々と自分の先輩への愛情が性欲と独占欲へと塗り替えられていることに気づいた。
いくら先輩がわたしのことを好きと言ってくれても、そこまで許してくれるのか…
わたしは欲望が抑えられないんだけど。
あーいけないいけない。お茶しに来たんだもんね。
今は自分の欲より先輩と一緒にいることのしあわせを噛み締めよう。
わたしは顔をぱんっと叩いて気分のスイッチを入れ替える。
………
………………
………………………
にしても先輩遅くないかな?
もう10分は経つけど…
先輩、お茶冷めちゃうよ。
長めのトイレかな?
……
………………
………………………
…………んんっ!!おっそい!!!
遅すぎでしょ先輩!もうわたしお茶飲み終わっちゃったんだけど!?
15分くらい経っても来ないのは遅すぎないかな…?
ちょっと心配になってきたかも。
わたしは心配になってトイレに確認しに行った。
婦人用トイレの個室は5つあり、そのうち4つは閉まっている。先輩はここにいるのかな。
「せんぱーい、いますかー?」
わたしは呼びかけてみる。
けれどもその声は冷たいドアに弾き返され消える。
いない。
おかしい。先輩はどこへ行ってしまったの?
ふと、わたしは開いた一室のドアに目を向ける。
中を少し覗いてみる。
「…あっ!」
つくづくデジャヴを感じる。
トイレという密室、先輩とわたし、そして……先輩の優しい香り。
確かに残っている。先輩の香りがそこに。
窓の外だ。
窓のサイズはそこそこ大きく、先輩でもわたしでもかがんで入れそうな大きさ。
わたしは先輩のフローラルの香りを信じて窓をくぐる。
そこはお店の裏側で、すぐ1、2メートルも前には建物の壁がある、いわゆる路地裏。
……これは”おかしい”。
先輩の香りだけじゃない。言葉に表し難いけど、なんかスースーするあれ。
それと先輩の香りが混ざって変な感じになってしまっている。
先輩がその香りに毒されてる、みたいな。
香りの感じはともかく、私は香りを頼りに脚を動かす。
狭い路地を歩いて、角を曲がる。
そのとき。
「……先輩っ!?」
先輩がそこにいた。
けど、”先輩だけ”じゃない。
「ふうかっ…!うぅっ…!」
「あー来た。この子が恋人ちゃん?」
「はなっ…してっ…!」
先輩より結構大きい男の人がいる。
しかも…二人ともぴったりくっついて。
男の人が無理やり先輩とキスをしようとして、口を近づける。
「やめて!たすけてっ…」
先輩はバタバタと動いて抵抗するが、体の大きいその人にはなんの効果もない。
「落ち着けよ、瀬戸…」
「おちついて…なんてっ、いられると思うっ!?」
「…仕方ねえな、ここまで暴れられたらもう、アレだな」
そう言うと男の人は先輩の下半身に手を伸ばす。
だめ。だめだよ。だめ!!!
わたしは吹っ飛ばされたみたいに爆発的に走り出した。
考えなしに男の人に突っ込む。
わたしはとにかく先輩を放してもらうことに必死で、男の人にタックルをする。
「ぐっ!ちょっと待てよ!」
男の人がよろめいた瞬間に先輩が器用に腕から抜け出す。
わたしは無我夢中で叫ぶ。
「先輩にこれ以上……関わらないで!!」
わたしはそのまま男の人にキツい蹴りを入れる。
それはもちろん…男の人の子孫の存続に関わるところ。
「ぐおおぉぉぉっっ!!!!!」
とんでもない悲鳴をあげて、その場に跪く。
「うおぉ…おお…がぁ…」
痛みに耐えるような悶絶を聞いてるうち、逆に可哀想に見えてきた。
哀れだ。
なんて哀れなんだ、この人は
そのとき、頬に冷たい感触。
数秒も経たずにその感触は何倍にもなって襲ってくる。
…雨だ。
「雛西…」
「行きましょ、先輩」
わたしは手を差し伸べる。
先輩はゆっくりとその手を取って起き上がる。
そのとき、ゴロゴロと近くで雷鳴がした。
あ、まずいかも。
そのまま雨が流れる滝のように降ってくる。
「走りますよ!」
わたしは先輩の手を取ったまま走り出す。
先輩は何も言わなかったけれど、わたしの手を握る強さが全てを物語っていた。
手と手をぎゅっと握って離れない。
わたしたちは離れない。
とにかく走るのに夢中で、傘を持っている周りの人たちの異質な視線がわたしたちに刺さる。
でもそんなことは気にしない。
気にする余裕はない。
気にしたくもない。
わたしは雨に打たれながら、なんとか自分の家まで駆ける。
気づけば二人の手はくっつけられたみたいに強くつよく結ばれている。
「早く上がってください!」
大急ぎでタオルを渡して、先輩を家に上げる。
「そこの椅子座っててください!今お風呂沸かしますので!!」
「服洗濯しますから脱いじゃってください!んでこれ着てください!!」
「あ、ありがとう…」
わたしは慌ただしく動く。
そうこうしてるうちにお風呂が沸いた。
「入っちゃってください!シャンプーとかは全部わたしの使って!一段目にあります!!」
「ん、じゃあ借りさせていただきます…」
なんとか先輩をお風呂に入れる。
よし、とにかく第一段階はコンプリート。
雨が窓を叩く音に合わせて指をとんとん、としながらお菓子を用意する。
一通りやり終えて、ソファにもたれる。
ふう…疲れた。
ちょっとぼーっとしていたら、ワンテンポ遅れてゆっくりと疑問が湧き上がってくる。
あの男の人は誰?なんで先輩が?
……もしかして。
「先輩の元カレ…??」
思い当たる節はそこしかない。
先輩の名前を知っていた上に呼び捨て…
「この子が恋人ちゃん?」というわたしへの発言。
ややこしい…どういうことなの?
先輩がシャワーを使っている。シャー、と音が聞こえる。
わたしはその優しい音にちょっとずつ眠気を誘われ、まぶたが重くなってくる。
わたしも早くシャワー浴びたいな…
先輩とふたりきりで…
☆プチあとがき☆
話の区切り方下手すぎ!!
700文字とかの回もあるのに
なんですか今回4000文字って!?
はいそんなわけで!
急なNTRかと思った人いますかね?
そんなことするわけないじゃないですか!私は純愛物大好きな人ですよ!!
次回はついにお待ちかね(かは知らんが)のセンシティブ展開が来るかもですよ!!
でも何も手つけてないので投稿遅れるかもしれません!!
今書きたいものが分散して一点集中できてないんですよね!
「プリキュア」とか「超かぐや姫!」の百合とか!!
気長に待っていただければ幸いです!!
では!
コメント
1件
ああ、もう…すごく良かったです…!先輩が「好き」って言ってくれたシーン、思わず息を止めてしまいました。それに、あのトイレでの先輩の元カレらしき男の登場…まさかの展開で心臓がバクバクしました。でも、雛西さんが先輩を守ろうと走り出したところ、本当にカッコよかった…!雨の中、手を繋いで走る二人のイメージが鮮やかに浮かんで、切なくて温かい気持ちになりました。先輩の涙が「希望の結晶」みたいに美しいって思う感性、すごく好きです。続き、本当に楽しみにしてますね!