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若井side
朝、めずらしく俺のほうが早く起きていた。
と言っても、ソファでスマホをいじってるだけ。
キッチンでは元貴がコーヒーを淹れていた。
「……なぁ、」
「ん?」
「この前のライブ映像、ファンが切り抜いててさ」
「あー、また“もとぱ案件”?」
「そう。俺が元貴のほうチラ見しただけで、“恋”ってタグつけられてんだけど」
「……事実じゃん」
「いや、違うし。いや、違くはないかもしんないけど、ちがっ……!」
「ふふっ、なに焦ってんの」
元貴はカップにコーヒーを注ぎながら、いつもの柔らかいトーンでそう言った。
若井は、むすっとした顔でスマホを放る。
「さ、そろそろ準備するよ〜。起きてるなら風呂、先入っていいよ」
その言葉に返すことなく、質問をかけた
「……なぁ、」
「ん?」
「俺ら、さ」
「またそれ?」
「……いや、今度はちゃんと聞く」
元貴が、カップを置く音だけが響いた。
「俺ら、何なんだろうな。って」
「……」
「別に明確にしたいとかじゃないけど、
誰かに“なんの関係?”って聞かれたら、
俺、どう答えればいいんだろうって思った」
「……」
「友達って言えば、ちょっと嘘で。
でも、“付き合ってる”って言えるほど、なんか……なってないし」
元貴は黙って、少しだけ微笑んで、
ソファの前までやって来た。
そして、若井のスマホを手に取り、何気ないふりで言った。
「じゃあ、“付き合ってる”って、何すればいいの?」
「……は?」
「俺たち、同じ空間でご飯食べて、音楽作って、隣で寝てるじゃん?」
「……」
「それ以上、何すれば“付き合ってる”って言っていいの? キス?」
「……!?」
「それとも、“好きだよ”って言えば確定する?」
「…………元貴、」
「別に困らせたいわけじゃないよ。
ただ、若井が“どうしたいか”を聞いてみたかっただけ」
その声は、あくまで静かで、優しくて、真っ直ぐだった。
俺は、しばらく黙って、目を伏せていた。
でもその手は、元貴の手のあたりを、ほんの少しだけ掴んでいた。
「…………俺は、」
「うん」
「“付き合ってない”って言われたら、それが一番イヤだなって、思った」
その答えに、元貴はふっと息を抜いて、
スマホを元の場所に戻しながら、優しく笑った。
「じゃあ、それでいいじゃん。俺も同じだから」
「……あ、ずるい」
「なにが?」
「言わせたくせに、自分からは言わないの」
「だって、言われたほうが記憶に残るでしょ?」
「くそ……やっぱお前、プロだな……」
「うん、若井を落とすプロ」
俺はうなだれて、ソファに崩れ落ちる。
元貴は満足そうにコーヒーを飲み干した。
「さ、シャワー浴びてこい。
今日のリハ、俺ら仲良すぎって言われるくらいやろうぜ」
「うっざ……けど、ちょっと楽しみになったわ」
📎To be continued…
コメント
3件
めっちゃ甘々可愛過ぎます! あとXのフォロリクってできますか?
はい好き