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全身を駆け巡る、溢れ出さんばかりの膨大なエネルギー。まるで体内を嵐が吹き荒れているような、初めて感じる猛烈な魔力の波動だった。
「サブCode《Icarus》。魔力制御はお前に任せる!」
『サブCode《Icarus》発動します。思考認証による移動が可能になりました。それに伴う魔力コントロールをサポートします』
溢れ出した魔力の闇が全身を包み込み、まるで夜空に溶け込む影のように、俺自身も闇の一部となったのを感じた。そして背には魔力が具現化した漆黒の翼が現れた。
空へと舞い上がるイメージを思い浮かべる。
それを汲み取った翼が俺の身体を一瞬で空へと浮上させた。
地上から十数メートル。
しかし恐怖は無い。
まるで地面に足が付いているかのような安心感すらある。
彼方の光源へと意識を向け、今出せる最高速度で宙を駆ける。
視界に映る景色がもの凄い速度で流れていき、身体に纏った闇が雨を弾く。
その勢いで空間自体を斬り裂いて飛んでいるのではと思えるのは、強く感じるはずの空気抵抗を全く感じないからだ。
『三体の天使たちの動きに変化がありました。
どうやらこちらに気付いたようです』
「もう気付かれたのか!?」
『ご自身は気付かないのかもしれませんが、これだけの魔力を放出しているのですから、天使たちが自分の天敵ともいえる存在に気付かないはずはないかと思いますよ』
ああ、そもそもその脅威を消す為にこの世界に来てるんだから、それを感知する力が高くて当然なんだろうな。
街の方から三つの小さな光が浮き上がってくるのが見えた。
下位天使の数は三体と言っていたので、あれがその天使で間違いないだろう。
となると、やはりあのでかい光球が【力天使】ということか。
俺は移動を止めて空中に止まる。
天使たちがこちらに気付いたというのであれば、むしろおびき寄せて街から遠ざけた方が良いだろう。
『天使たちの持つエネルギー量が増幅されていきます。
「angel’s breath」の発動準備に入ったものと推測します』
「天使の攻撃魔法か?」
『魔力を声に乗せて放つ衝撃波で、音によって音速を超えるという物理法則を超越したもので、200dBを超える衝撃波の物理攻撃と、魔力を含むことによる風魔法攻撃という両面の性質を備えています。
威力が三体同時で強化されていたとしても、衝撃波ごと完全に防ぐことが計算上は可能です。ただ――』
「ただ?」
『その衝撃波は天使を中心として球体状に発生しますので、すでに魔法障壁の破壊されている天使たちの足下にある街は、人も建物も跡形もなく消し飛ぶことになると推測されます』
「作戦変更!!魔法を使われる前に全部ぶっ倒す!!」
『天使のエネルギー上昇が停止しました。
必要なエネルギー量の充填が完了し、「angel’s breath」の発動態勢に入ったものと思われます。
予測発動時間まで約五秒。
発動までに三体全てを倒すことの出来る確率は0%です』
くそっ!こんなことなら最初から小細工を考えずに突撃しておけば良かった!
どうする?一体でも残せば街に被害が出る。
『4……』
間に合え!間に合え!間に合え!
こちらも音速を超えたのではないかと思う程の超スピードで天使たちに迫る。
『3……』
しかしあいつの言う通り、発動前に天使に辿り着くことは出来そうだが、とても全員を倒す時間は無いだろう。
ならば、取るべき手段は――
『2……』
俺は天使を倒すのを諦めて、進路を一気に街の方へと変更する。
『1……』
「サブCode《Aegis》!!」
『サブCode《Aegis》発動します』
街を背に天使と向き合う。
俺を睨むように見つめる六つの瞳。
そして目の前に出現する暗黒の盾。
天使の放つ光にかき消されることなく、空中にはっきりとした闇の輪郭を形作る。
「最大出力!!」
光を浸食して巨大化していくイージスの盾。
空間を二分する闇の亀裂が街の天空を覆い尽くす。
『AAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』
一瞬だけ美しい歌声が聞こえたような気がした。
そして訪れる沈黙。
「angel’s breath」は、その音も、その衝撃も、その全てが闇に飲み込まれるように消滅していき、あれほど降っていた雨は、いつの間にか綺麗に止んでいた。