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月白
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耀聖(ようせい)
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「で、ですから、一部、ほんの一部の人間だけを始末しなければならないんですよー、他の大勢の為にー」
「だからその一部って何よ、アンタ等が選ぶわけ? 何の権限が有るって言うのよ!」
「選ぶと言うかぁ…… モンスター化する条件下にある人間を対象に、としか……」
「条件? 都合の良い言い回しでござるなぁ、どうせ自分達に有利な事でござろ?」
「ねえー」
「ち、違いますよー」
「んじゃ何でござる? その条件、どうなったらモンスターに変わるのか説明してみろ、でござるよ」
「そうよっ! 信じる者だけ救うのです、かしら? それってどっかの安っぽい新興宗教じゃないのよ! 馬っ鹿じゃないっ!」
「えっと、カニバリズム…… 同種食いを…… 所謂、食人する者を除くんです……」
「「は? 今時?」」
「はい……」
その後、シェムハザは自分達が顕現してからこれまで行ってきた虐殺について語ったのだ。
グリゴリの多くは相変わらずプルっていたが、『弱体治癒』の効果だけでなく、自らが実行した蛮行を悔やんでいたからかもしれない。
しかし、後悔はしていたとしても彼等の行動に迷いは無かったようだ。
顕現し集結したグリゴリ達は、真っ先にニューギニア島へ赴き、点在するアスマット族の集落を襲ったらしい。
部族の中には既にモンスター化し始めている者も散見された事で、彼等は全てを根絶やしにする事に躊躇を憶えなかったと言う。
続けて彼等はパプアのコロワイ族を、そしてアンダマンのセンチネル族をも絶滅させたのだそうだ……
使徒による人間の虐殺。
文字にすれば酷く簡潔だが、その場の惨劇を思い起こせば並大抵の絵面ではないだろう。
達観し卓越した倫理観が為させ得る狂気、そう呼ぶ他は無い……
そうして次のターゲットに移る前に、シェムハザの判断で日本へ、それもコユキ達の居所を察知してここ、花の都の大東京にやって来たのだとシェムハザは言った。
コユキは不思議な表情を浮かべて彼に聞いたのである。
「ふーん、何で?」
『神の救』は小刻みに痙攣しながら答える。
「次はアグホリ僧をと思いまして、実行前にアルマロスに断ってからにした方が良いかと…… ほら、怒ると恐いじゃないですか? 『神の呪』って」
「あーなるほど、アルマロスって確かシヴァ君だったわね、シヴァ君、何か関係有るのん、アンタとそのアナ掘り坊主共ってぇ?」(微下品)
シヴァが顔を露骨に顰めながら言う。
「あーすみません、アイツ等俺の信徒なんですよー、所謂狂信者ってやつでしてー」
「人食いなのん? マジで? アナ掘られ坊主って」(下品)
「マジですね…… 俺んな事やれって言って無いのにな…… それとアグホリですから、念の為」
「アグホリね、気色悪いじゃないの、おえっだわ」
「おえっです、すみません」
「んじゃ、アグホリ坊主たちは良いのん? 殺されちゃうみたいだけど……」
「人食いですからね…… 人類の為なら仕方ない犠牲? ですから」
「そっか……」
消極的では有るがシヴァの許可も出て、コユキはやや安堵の表情を浮かべながらシェムハザに向き直って言葉を続ける。
「シェムハザ君、シヴァ君もこう言っているからアンタ等が正しいと信じてる事をすればいいわ…… だけどせめて苦しまないように、変な言い方だけど、優しくやってあげてよね、カマ掘られのお坊さんたち……」(大変下品で確信犯)
「は、はあ、判りました……」
暗くなってしまった場の空気を変える様に、善悪がやや大きめの声で続く。
「まあ、悲劇とは言え、人類八十億の為の尊い犠牲でござる! 数的には僅かでござろ? せめて冥福を祈るのでござるよ、南無南無」
この言葉にシェムハザはキョトンとした顔で返す。
「いえ、アグホリ僧の後はアジア全体ですよ? 大体四十五億人ですかね、殺すのって」
「「は? え? はあ?」」
コメント
1件
うわ、このエピソードは重いですね…。シェムハザの「食人する者を除く」という条件から始まって、グリゴリたちが実際に虐殺を実行してきた歴史が明かされる流れ、すごく考えさせられました。コユキとシヴァの会話でちょっと空気が和らいだと思ったら、最後の「アジア全体で四十五億人」のオチ…あれは本当に梯子を外された気分でした。善悪の「数的には僅か」に対する返しとして、あまりにもスケールが違いすぎる。この「多数のためなら少数を犠牲にしていいのか」という倫理の話、物語の根幹に関わってきそうで続きが気になります。