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-—-よしきside
忙しない蝉声はいつしか冬らしい寒気によって消え去り、雪が積もったこの道を「忌堂光」と並んでケッタで進む。冬特有の寒威を感じさせないくらいに、雪が積もったぐらいではしゃいで学ランの前を乱暴に開けた姿が目に映った。
…見ているこっちが寒い。
「よう積もったなーよしき、雪合戦しよに」
「いやや、こんな寒い中…てかそんな開けてて寒くないん…?」
「おー全然平気やけど?」
「んなわけ…風邪ひくやろ」
「あーはいはい、おせっかいやなー」
「はぁ…まあ、バカは風邪ひかないって言うもんな」
「おい‼︎」
そうやってしばらく冗談を言い合って、ふざけ合い、やがて帰路につき別れる。それが光とはあたりまえだった。
翌朝、異様な身体のだるさに目が覚め起き上がろうとするがぐらっと視界が揺らいだ。気持ち悪い浮遊感と段々と熱を帯びていく体に、まさか…と嫌な予感はしつつも体温計を手に取り脇に挟む。
ピピッ ピピッ
「38.5℃…」
完全に風邪ひいた。重い体を引きずって部屋に戻り布団に放り投げてあった携帯を手に取る。
「学校…休まなあかんよな…連絡せんと」
仕事で朝早くに出て行った母より真っ先に光が頭に浮かんだ。
「風邪ひいた」
「休むわ」
送った直後また布団に潜り込む。だるさに再び目を瞑る。
しばらくして、聞き慣れた足音が部屋に響く。
ドタ、ドタドタ バタン
…これはアイツしかいない
「よしき、入るで」
ガチャッと扉を開けた前にビニール袋を片手に下げた光の姿が映る。
「光…なんで…?学校は…?」
袋をがさがさと漁る音に重なって「休んだ。」ときっぱりと言い、「はい」とポカルを差し出してくる。
「休んだって…そんな軽く…」
「俺ら普段出席率ええんやし別に問題ないやろ。それにさ、心配やったから」
…なんやそれ、そう呟いて顔を背け枕に顔を埋める。心配だった、その言葉を思い返しぶわっと顔が熱くなる。
あぁ、きっとこれは熱のせいじゃない
「そういえばよしきさー昨日俺のこと心配しといて自分が風邪ひいてもうてるやん(笑」
「いやなんでお前は平気なん…てか、一緒におったら風邪移してまうよ…」
「今更気にせんくてええわ。邪魔やなかったらこのまま居らせて」
「…邪魔やない」
「ほーか、やったら熱上がる前にはよ寝てしまぃ」
光の言葉に安心し、再び目を閉じる。
あぁ、本当に、光の側だとこんなにも息が吸いやすい。
お前が俺に対する気持ち、俺がお前に向ける気持ちが同じじゃなくても今はただこのまま、光の側で眠りにつきたい。