kn × sm
⚠️R18表現あります
仕事を終えた俺は、きんときと同棲している家に帰ってきた。夜陰、ピカピカと光るスマホには、0時を過ぎた時間が記されている。
ガチャッ
家のドアを開けると、そこにはいつもと違う、真っ暗な世界が広がっていた。いつもならきんときはこの時間は必ず起きている。明日の朝早くにでも用事かなにかあったか、などと考えながら、リビングに繋がる道を歩く。
その後、いろいろ寝る準備を整え、きんときが既に眠っているベッドに入り、目を閉じ、夢の世界に入っていく。
ぱちゅっ、ぱちゅっ
ふわふわする頭が明確になるにつれて、音がどんどん近づいてくる。なんだこれ。
少しずつ思考がまわってくると、意識が確かなものになってきた。ふと目を開けると、そこには肌色のなにかが映った。そしてそれと同時に信じられない衝撃が体を襲った。
「んんん゛っ!…な゛…っは?なにこれぇっ…!」
「あ…起きたんだ。」
「っは?なんだっ…お前…っ。はぁ゛んっ…。」
俺が目を覚ましたことに気づいても、きんときは腰にうちつけるそれを止めない。
なんで?あれ?こいつはなにをやってるんだ?
眠りについた後から記憶が全く無い。行為中に気絶したとかではないと思う。
ふと今寝ているダブルベッドのそばにある窓をちらっと見る。カーテンの隙間から見える外はまだ暗いようだ。
「何よそ見してんの、ねぇ。」
ハッと意識をきんときに戻すと、急に顔が近づいてきて唇に触れる。彼に屈するのが悔しくて、必死に口を固く結ぶ。でも、開けることを促すよう唇を舐められ、いつものように思わず開けてしまう。そうなってしまえば、一瞬のうちに俺の口内はトロトロだ。上も下も満たされて、脳が溶けちゃいそう。酸素を補給しようと、喉をできる限りかっぴらいて、隙間から少しでも吸おうとする。
あ…やっと離れた。息を吸えた。しかし、その嬉しさと同時に、少し口寂しさを感じてしまった自分に苛立ちを覚える。
「…ハーっ、ハーっ。きんろきぃ…長いっ…。」
「俺だけに意識向けなきゃ。今のはスマイルが悪いでしょ?」
「…ぁう゛…いっみ、わからんっ!もういらないっ!やめっ、う゛…。」
ああ…そうだ、昨日は帰宅するのが遅くなったんだ。というか最近は帰るのが遅いのが日常になっていた。仕事で出世した結果、以前より忙しくなり残業することが多くなったのだ。でもなぜこんなことになっているのかは分からない。昨日は、確か、きんときが寝ているのを確認して、すぐ寝たはずだ。一体なんでこんなことになってるんだよ…。
《》
「それ、浮気でもされてんじゃないの。」
きりやんが俺に向かって冷たく言い放った。きりやんには、俺がスマイルと付き合っていることは言っていない。あくまで名前を伏せて“彼女”として相談に乗ってもらっている。
「俺の知り合いに、会社内で浮気してた奴とかいたよ。GPSで会社にいるって分かってても、ちゃんと仕事してるかどうかは分かんないでしょ。しかもさ、なに?最近スキンシップ全くしてないんでしょ?そんなのもう確定じゃん。」
畳み掛けられた俺は何も言えなくなり呆然としてしまう。
「…でも、さ、元々向こうは付き合い始めた時からそんなにスキンシップとか恋愛的な行為に貪欲じゃなさそうなんだよ。だから、やっぱり帰るのが遅いのも忙しいだけだと思う。現に、あいつ、会社から帰ってきてすぐ寝ちゃうし。」
「じゃあもう知らね〜よ。お前が彼女にちゃんと愛されてるか不安だって言うから、その理由聞くと浮気されてんじゃねって思っただけだよ。そんなごたごた言うんだったら早く本人に聞けや。」
きりやんはそっぽを向いてぷりぷり怒ったように振る舞う。
俺は内向的な人間だ。だけどそれでいて重たくて嫉妬深い。だから恋人に強く要望を伝えられず、勝手に独占欲を働かせている。しかしスマイルも内向的であり、さらに恋愛的なことに疎いようで、夜の行為は俺からしか誘ったことがない。彼からの愛の言葉も非常に少ない。そんなさなか、彼の帰宅時間が、ある日を境に急に遅くなったのだ。彼に内緒で持たせているGPSは、彼の会社を印していた。しかしきりやんの言う通り浮気の線は捨てられない。
きりやんに「相談料だ、奢れ。」と言わたので、会計を済ませて、そのまま別れ帰路に着く。
どうせ今日もスマイルの帰宅は遅いだろうと思いながらも、微かにスマイルが家に居ることに期待を寄せドアを開く。しかしやはり想像通り、家の中はシーンとして真っ暗だった。ひどく落胆しながら、風呂に入って、寂しいダブルベッドの上に飛び込む。そして、まだ寝るには時間が早いかと思い、ベッドの上で暇を潰す。
ガチャッ
え?
暇を潰すために読み始めた漫画に集中してしまっていて、ドアの音がするまですっかり時間を忘れていた。スマイルが帰ってきた。なんだか顔を合わせたくなくて、急いで寝室の電気を消し、毛布に顔を埋める。ドアの開閉音がした数十秒後、走って帰ってきたのかはぁはぁと息を切らした彼が寝室まできて、ベッドに腰掛けた。狸寝入りをしている自分に罪悪感を感じ、どくんどくんと心臓が波打つ。まだ寝るわけじゃないよな…?なぜ寝室に入ってきたんだ…?と疑問に思いながらも、自分は寝ている、と必死に思い込もうとしていると、彼の気配が近づいた気がした。息が顔にかかる。辺りはシーンと静寂に包まれる。
しばらくすると、ベットが軋む音がし、ふぅ、というため息が聞こえたと思ったら、彼が言葉を発した。
「危ねぇ…これは寝てるやつにすることじゃねぇよ。」
彼は小さい声でそう呟いたあと、ベッドから腰を上げ、寝室から出ていった。
今…キスをされそうになったのか…?
今起きた出来事が信じられず、混乱する。彼からキスされたことなんて今まで一度もない。嬉しさが込み上げる。毛布の中、俺は叫び出しそうだった。
そこからはもう一瞬だった。シャワーを浴び、小腹を満たした彼が、寝室に再び戻ってきて、俺と同じベッドに寝転ぶ。そしてすぐにスーッスーッと寝息を立て眠りについた。最初は我慢しようと思った。スマイルは絶対に疲れている。会社にはきちんと仕事で残業しているのだと理解するのも、先程の彼の行動で容易になった。しかし欲は止められない。気づいたら俺は彼に触れていた。
《》
「ねぇ、スマイル、ねぇ。」
「…んぁあ゛?なっんだ…っ。ん゛っ。」
「好き。好き。好き。好き。」
愛の言葉と共に腰に力を入れて彼の奥底に届ける。
彼の顔は今まで以上に真っ赤に染っていく。
「…っ、ぅ、うるせぇっ。」
「スマイル?ねぇ。」
どうにか自主的に彼からあの言葉を引き出したい。
「…ばかっ。…俺も、いや、待って。はぁ゛…止まってくれたらいうからぁ。」
「はい、止まったよ。」
俺は両手をあげて、何もしないと主張する。
彼の口はもごもごしていて、言おうとして言えない姿が愛らしくてたまらない。
「…す、好き。」
「ばっ、おまえっ…!んん゛!大きくすんなよっ…!」
思わず再び激しく打ち付ける。
「ごめんっ。スマイル、一生俺から離れないでね。」
スマイルの細胞全部に行き渡るよう、自分の遺伝子を送り付ける。
「俺も…っ、ん゛!」
イッたであろう彼を優しく抱きしめ、余韻に浸る。
そこで、俺はあることを思い出す。
「ねぇスマイル。スマイルからキスして?」
「…なんでだよ、嫌だよ。」
「いけるよ、あと数センチなんだから。」
「は?何言って…。あっ、まさかお前、起きてた…?」
混乱して慌てている彼に、ついふふっと笑ってしまう。
彼の目をじっと見つめて待っていると、はぁ…とため息をついて、俺に顔を近づけてきた。
「…目つぶれよ。」
「はいはい。」
ちゅっ
軽くリップ音がなり、唇と唇がぶつかる。
「これからは俺が寝ててもしてくれていいからね?」
「やらねぇよ。」
END
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