人外研究所って繁忙期みたいのがあったらめちゃくちゃブラック勤務になりそう(知らんけど)
来る日も来る日も画面を見続ける日々。ここ数日でトラブル続きで僕ら上層部の研究員はブラック労働。
死んでるはずなのに過労死しそうだ。
トラブル引き起こした研究員を恨むよ。
僕が過労死しそうなぐらい疲れているのなら、僕以上に仕事を背負っている二人も死にかけているはずで。様子を少し確認すると、二人とも完全に目が死んでいる。
霊音「侑磨くーん、今何徹目?」
侑磨「三日からは数えてません。後黙ってください」
吸傘「あ”ぁ”ーーーーー!うるが足りないぃ!」
侑磨「うるさいです」
侑磨くんは静かにキレて、吸傘は疲労でうるが足りないと発狂している。なんだここ、地獄絵図か?
デスクには積まれた書類の山と雑に捨てられているエナドリの缶。部屋には僕と吸傘が吸った煙草の匂いが充満している。
漫画の中でよく見るブラック会社そのまんまだが、漫画と違うのは下っ端がブラック労働をしているのではなく上層部が働いているところだろう。研究所の下っ端は情報管理のため雑務ばかりやらせることがうちの方針だ。
吸傘「誰だ~こんな作業体制にしたのは~…」
霊音「僕☆」
吸傘「クッソ、労基に通報したい」
霊音「だめだめ。そんなことしたら色んな罪で研究所がなくなっちゃうー」
そう、ここは人外研究所。人外の研究施設。字面だけでやばいことが伝わる。
法律なんてものは関係ない。研究員がやりたいことをやる。そんな場所である。
侑磨「代表的なのは誘拐拉致監禁、傷害、詐欺とかですかね」
霊音「他にも余罪が大量にあるけどねー」
吸傘「儂らの命の源だから無くなるのは困る」
侑磨「実験体は多分保護されますし、僕たちは捕まって牢屋に入れられるでしょうね」
霊音「檻に入れてた実験体と立場が逆になるなんて皮肉なもんだねぇ」
僕ら三人は何も考えていない。つまり脳死で会話している。
吸傘「うるに、うるに会いたいぃ……」
吸傘がそう言うとずるずると何かが引きずる音が。
霊音「え、何があった?」
侑磨「……吸傘さんが溶けました」
霊音「うえ~?めんどくさいなぁ」
書類の山で溶けた吸傘の姿は見えないが向かい合わせの侑磨くんがそう言っているから溶けたのだろう。めんどくさいことになったなぁ…
ここでうるちゃんに合わせれば溶けた吸傘は戻る、がうるちゃんに合わせると仕事しなくなるのが目に見える。合わせても合わせなくても仕事が進まないのは確定だ。
霊音「どうしようかなぁ」
侑磨「早くどうにかしてください。仕事が進まないです」
霊音「えー…僕に言われてもなんだけど」
吸傘「うべぇぇぇ」
まずい。溶けすぎて吸傘がおかしくなり始めた。いや、まぁ前からおかしかったっちゃおかしかったんだけど。
霊音「とりあえず、お湯でもかければ戻るんじゃない?」
侑磨「カップラーメンでもあるまいし戻るわけ………やってみますか」
霊音「え、まじで?」
おふざけで言ったのに通ってしまった。これは…侑磨くんも疲れてるな
もうこの空間は駄目かもしれない。唯一の常識枠でさえおかしくなっている。
侑磨「ちょっとお湯持ってきますね」
霊音「待って、本気でやる気!?」
侑磨「本気も何も霊音さんが言ったんじゃないですか」
霊音「冗談!冗談だから!」
お湯を取りにふらふらと立ち上がった侑磨くんを必死に止める。駄目だ、完全に目が狂っている。
ただでさえ仕事がたまっているのに一人は溶けて、一人はそれを戻そうとお湯を取りに行く。この世の終わりみたいな光景になっている。これが現実か。
この状態の対処法は一つしかない。しかし、これを使うともれなく仕事が進まなくなる。
仕事を犠牲にするか、このまま自分だけでも仕事を進めるか。どっちを取っても今後辛いのは変わらない。だが、今はこの地獄から抜け出したい。
と、いうことで銘くんたちを招集する。
霊音「あ、もしもし?」
銘『なに』
霊音「ちょーっとランスくんとうるちゃん連れてこっち来てくれない?」
銘『は?やだよ。自分で呼べ』
霊音「そこをなんとか!僕ここ抑えるので精いっぱいなんだよ!」
銘『はぁ、何があったんだよ…』
霊音「まぁ、いろいろ」
僕もこの状況は説明できない。誰がこの状況を説明して納得すると思う?
銘『チッ、わかったよ。ただし、後で酒買って来いよ』
霊音「買う!買うから早く連れてきて!」
ナチュラルにお酒を買う約束させられた。まぁ、別にいっか。
これでこの地獄からは抜け出せる。
そう思って気が抜けたのかもしれない。眠たくならない体のはずなのに急な眠気を感じた。
まだ電話は繋がっている。電話越しに銘くんがランスくんたちを呼ぶ声とそれ答える声が小さく聞こえたところで完全に意識が途切れた。
「…いね……起きろー?」
頬が叩かれる感覚で意識がはっきりとしてくる。
うっすらと目を開けると部屋の電気の光で眩しい。
銘「起きろー…って起きてんじゃねぇか」
目の前にはこちらを覗き込む銘くんの顔。寝起き早々目にありがたい。
ちょっと待って、何かに頭乗せてるけど下の柔らかいものなにこれ。すぐそばに銘くんの顔があるということはもしかしてもしかすると銘くんの膝の上ですか?今膝枕状態ってことですか!?
霊音「お、はよう…?」
銘「ん」
どういう状況なのか理解ができないでいると、銘くんが柔らかい笑顔で頭を撫でてくれる。
こんな笑顔見たことないんだけど。え、夢?これ夢なの?夢だったら覚めないでほしいんだけど。いや、それともただのデレ?
銘「ふはwめっちゃ間抜け顔してんじゃん」
え、まって、可愛い。可愛さが限界突破してる。
吸傘「お、霊音起きたのか」
吸傘の声がする。てことはこれは現実か。
銘くんの方へ向けていた顔を横に向けると吸傘がしゃがんでこっちを見ている。もちろん、後ろにうるちゃんもいた。
吸傘「銘がな、霊音が普段寝ないはずなのに今回に限って気絶してるように寝てるから心配してたんじゃぞ」
霊音「は、まじで?」
銘「ばっ…おま、言うなよ!」
確かに睡眠を必要としてないから普段から寝ることはないけど。
銘くんのほうへ向き直し、真っ赤に染まった顔に手を添える。
霊音「心配してくれたの?ありがとね、銘くん」
銘「ちが…っ、心配してない!///」
霊音「んふふ、嘘だ~」
銘「嘘じゃない!というか起きたんならはやくどけ!」
霊音「え~、もうちょっとこのままでいさせてよ」
どけとか言いながら無理矢理どかさないところが可愛いよなぁ、と思いながら照れている銘くんで遊ぶ。
すると、横から呆れているようなため息が聞こえてくる。
吸傘「儂は何を見せられているんじゃ…」
霊音「僕と銘くんのイチャイチャ現場♡」
吸傘「よく目の前でいちゃつけるな…」
もう帰ろう、とうるちゃんにおんぶをせがむ吸傘。吸傘も吸傘で人のこと言えない気がするけどね。
銘「なぁ」
霊音「ん~?」
銘「仕事、いいのか?仕事疲れでおかしくなってたんだろ?」
霊音「…あ」
忘れてた。二人を止めてるときに寝ちゃったからまだ仕事溜まってるんだった。もー、絶好の癒し時間なのに嫌なこと思い出させないでほしいよ。
霊音「仕事、かぁ」
銘「なにその婚期逃した人みたいな言い方」
霊音「なんか嫌に具体的だね」
正直言ってやりたくない。
だってさ、普段はこんな事してくれない銘くんが膝枕してくれてるんだよ?今この時間楽しむか仕事で辛い思いするかだったら断然こっちの方がいいよ。
侑磨くんとか吸傘もやる気なさそうだし。二人ともめちゃくちゃ楽しんでそうだし。
て、ことで。
霊音「銘くん、遊ぼっか」
銘「は?」
起き上がり、ぽかんとした顔の銘くんをお姫様抱っこする。
最初は何が起きたのか分からない様子だったが、何をされるのか理解したのか腕の中で暴れ始める。
銘「おま、まさか…っ!?」
霊音「吸傘、侑磨くん、僕ちょっと銘くんと遊んでくるから今日は仕事しなくていいよー!」
吸傘「お、ほんとか」
侑磨「了解です」
銘「おい、やめろ!離せ!」
バタバタと腕の中で銘くんが暴れるので逃げられないようしっかり体を抱きしめ、自分の部屋へと歩みを進める。
銘「はなっ…」
霊音「銘くん、酷くされたいの?」
銘「……」
にっこり笑って問いかけるとすぐ静かになる。ふっ、扱いやすい。
仕事頑張ったんだからこれくらいの癒しは求めていいよね。まぁ、明日からまたやらなきゃなんだけど。
すみません。バカ長くなりました。許して
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