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2010年、7月20日産まれ。
14回の8月31日。
13回の9月1日を経験したあなたへ。
どうしていなくなってしまったのでしょうか。
あなたは首を吊ったようです。
遺書にはこう、記してありました。
『鈴原さんのことが好き』
そう、記してありました。
『一緒にいたいから想いは伝えられない』
『私は異端者だから、あなたを傷つける』
『この世界に居場所はない』
そう、記してありました。
私がこの目で認めたのはそれのみです。
封書はまだまだあるようでしたが、残念ながら私に公開されたのはそれのみでした。
他の封書には自死に至った要因が記されているのでしょうか?
いじめとか、家庭環境とか、諸々。
しかしこの限りですから、私の目には、あなたは恋の病で無くなったように見えます。
なんてドラマチックなのでしょう。
なんて皮肉なことでしょう。
あなたは恋愛なんて真っ平御免という様に様々なことから目を背けていたのに。
あぁ、あなたは私のことが好きだったのね。
言ってくれればよかったのに。
「好き」の言葉は女子間ではそう珍しいものではありません。
もっとも、あなたにとってのその言葉は彼女らが言うものとの重みとは全く異なるもののようですけれど。
気持ち全部じゃなくても、冗談と流されてしまいそうでも、言ってくれればよかったのに。
少しだけでも吐露できたらこんなことにはならなかったのでしょうか?
その言葉に、私が怪訝そうな顔をすると思ったのでしょうか。
最愛の私を、傷つけると思ったのでしょうか。
生憎、私は表情を作るのは巧いので、その場しのぎの愛想良い、お人好しの笑顔を作ることができます。
見抜かれてしまっていたのでしょうか。
故に、言ってくれなかったのでしょうか?
でも、あなたへ対してはその必要はなかった。
あなたは私の居場所でした。
私はあなたの居場所になれていなかったみたいですが。
あなたの前では無邪気にいられました。
これから先のこと全部忘れて、今この瞬間に注力して、まるで幼子みたいに心の底から笑えました。
あなたは違いましたか?そうですか。
私はあなたの人生の、ほんの一部も知り得ない。
あなたの今までの苦悩を私は知らない。
寂しいですよ。もっと知りたかったのに。
不完全燃焼という言葉が似合いますね。
あなたがいなくなって、私の人生には穴があきました。
世界は再び、色彩を失いました。
あなたの死で、私のこれまでの人生の価値は脆弱なものになりました。
あなたに充てていた時間を、これからどう使えばよいのでしょう。
虚無です。虚空です。
あなたがいなくなってしまったことは即ち、
私の力不足のように思えてしまいます。
ほら、最愛の人が自責の念に駆られていますよ。
生き返ってくれないと困りますね。
あぁ、長くなってしまった。
もう一度問わせてください。
なぜあなたはいなくなってしまったのか。
何も言わなかったのか。
最後の2日間、あなたは何も連絡を寄越さなかった。
私は何度も、メールを送ったのにね。
8月31日の遊ぶ約束をあなたは無しにしました。
塾があると言っていましたね。
最後に見たのは誰の顔ですか?
よく話していた、いけ好かない男講師でしたか?
本当に残念だ。私に会えば良かったのに。
どこかのタイミングで、カミングアウトしてくれれば良かったのに。
「付き合ってほしい、じゃなきゃ死ぬ」
とか、
「接吻したい、お願いだから」
とかね。
惨めでもなんでもいい、私に醜態を晒すことなんて大した問題では無い。
あなたの最大の醜態は今ここにある。
好いた人に気持ちを伝えられず死んでいったこと。
人を責めるような人で失望しました?
それはお気の毒に。
今度はあちらで、幸せになれるといいですね。
次会えるのは何年後かな。
その頃にはもう、私のこと忘れちゃってるかな。
若しくは、それまでずっと独り身でいてくれて、私との再会を涙してくれるかな。
好きだったよ。
これからも、今までも、ずうっとね。