「はあ…またですか」
後ろに手をついて、スペインはため息をついた。
今居るのが別世界だと理解することにはさほど時間がかからなかった。彼は過去にこんなことを何度も体験していたからだ。
「…今までと違うのは二つ。solo,他の国がいないこと。dos,説明パネルがあること。まあ、あんまり役に立たなさそうだし放っておいてもいいだろうけど。」
立つと、スペインはあたりを見回していった。
「えーっと…南はこっちか?」
適当な方向へ足を向ける。しかし何分もしないうちにスペインは足を止めた。振り向き、後ろの影に問う。
「…誰だい、あんた?」
「……」
影は黙ったまま何も言わない。渋々、といった顔でスペインは言った。
「俺はエスパニョール。あんたは?」
「…レアル。」
(…レアル?そんな名前があるのか)
レアル、というのはスペイン語で王室のことを指す。しかし目の前の奴は全く王室といった見た目をしていない。しかも驚くべきことに__見た目が酷似している。
「何処から来た?」
「別世界。」
即答。レアルは思いがけぬ返答に驚いたのか、少し瞼を上げた。
「……へえ?」
カーマインの瞳でスペインを見つめる。眉を上げ、スペインの顔を指した。
「実に興味深いな。どうやら貴君の言う『別世界』とやらにも似た見た目のやつがいるらしい。」
完全に信用しきっていない。瞳は暖色系ながらも冷たい光を放っていた。
「ああ、その通りみたいだ。…ところで、最近何があったか、些細なことでもいいから教えてくれないか?」
「…先日、ヴェストファーレン条約が結ばれた」
「ってことは…」
一瞬視線を足元に送り、また見上げる。
「今は1648年」
「は?何で分かる」
「いや、なんか俺がいた世界と共通点多いし。試してみただけ。んじゃ」
立ち去ろうとするスペインを、レアルは大声で呼び止めた。
「待て!!」
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