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響がリスカしててことねにバレるお話
「硝子の証明」
白里響は、高校生探偵と呼ばれる。
冷静で、完璧で、誰よりも鋭い。
誰もが賞賛する天才――
でもその光の裏で、彼はずっと一人だった。
夜。
机の引き出しを開けて、包帯を外す。
そこに浮かび上がった、幾筋もの赤い跡。
「……今日のは、深くしすぎたか」
響は、まるで自分の腕ではないかのように無感情でナイフを滑らせた。
皮膚が裂け、赤い血がゆっくりと滲み出す。
何も感じない。けれどその「何も感じない感覚」こそが、彼の中で異常の証明だった。
(事件の謎はすべて解けるのに、自分の感情だけがずっとわからない)
切った腕を眺めながら、響はふと目を伏せた。
その静寂の中、ふと携帯が震える。
《ことね:明日も一緒に登校しよー!》
画面の通知に、ほんの少しだけまぶたが揺れる。
(ことねには……知られたくないな)
次の日。
響は、包帯を隠すように長袖の制服を着て、ことねの隣を歩いていた。
「響、ちょっと顔色悪くない? 寝てないでしょ、また事件関係?」
「……まあね」
「ごまかしたー。無理しないでね? 私、響の顔色すぐわかるからね」
(そんなわけ、ないよ)
響は笑ったふりをした。
けれど――その笑顔を見て、ことねはほんの少しだけ、眉をひそめた。
―違和感
ことねは気づいていた。
いつもなら少しの冗談にも冷静に返す響が、最近どこかうわの空だということ。
目の奥が笑っていないこと。
そして――体育の着替えの時間、長袖のまま教室を出ていったこと。
(……おかしいよ、やっぱり)
ことねは、放課後も一緒に帰ると言って、響を連れ出した。
「今日、ちょっと寄り道しない?」
「……いいけど、どこに?」
「公園。静かなとこ、好きでしょ?」
ベンチに座り、ジュースを手渡す。
ことねは、思い切って聞いた。
「ねぇ、響……最近、腕……隠してるよね?」
響の手が止まる。
一瞬、空気が張りつめる。
「……どうして、そう思う?」
「言葉にできないけど、なんか変だなって。ずっと見てきたから、わかる」
響は視線をそらし、ジュースのフタを強く握りしめた。
沈黙のあと、ぽつりとつぶやいた。
「君って、本当に……厄介だね」
「えっ?」
「……でも、放っておいてくれる方が、きっと楽なんだろうけど。
君がそういう子じゃないのは、知ってる」
ことねは、黙って彼の袖に手を伸ばそうとした。
しかし、響がそれを止める。
「見ないでくれ」
「響……お願い、見せて」
「……無理だ」
その声は、いつもの彼とは違っていた。
張り詰めて、震えていて、壊れそうだった。
ことねは、そっと手を引っ込めた。
「わかった。でも……それでも、私は響の隣にいるよ」
その言葉に、響の目が見開かれる。
その夜、響は部屋でひとり、包帯を巻き直しながら、
初めて――自分の手が、少しだけ震えていることに気づいた。
―知った痛み、寄り添う温度
数日後の放課後。
ことねはある決意を胸に、響の家を訪ねた。
「お前……何の用だ、急に」
「今日は逃がさない。全部、話して。響」
ことねの声は、真っ直ぐで、揺れていなかった。
響は観念したようにため息をつき、自分の部屋へ通す。
「じゃあ……見るか?」
響は、自ら袖をまくった。
そこには、いくつもの薄い傷痕。
まだ癒えていない赤い線が、いくつも走っていた。
ことねの目が見開かれる。
「……どうして」
「理由なんて、ないよ。ただ、自分がここにいるって感覚が、ほしくて……
何をやっても、誰に褒められても、心に何も響かない。
だけど痛みだけは、まだ少しだけ、何かを感じる」
震える声。
張りつめていた感情が、少しずつこぼれていく。
ことねは黙って、彼の傷に手を伸ばす。
そっと、包帯の上から握った。
「じゃあ、私が代わりに教えてあげる。
響はちゃんとここにいる。
私の前にいて、私が心配してて、大切だって思ってるってこと。
それが響の“証明”だよ」
響は何も言えなかった。
ただ静かに、目元をぬぐった。
涙が一粒、頬を伝う。
探偵が泣く。誰にも見せたことのない顔で。
「ありがと、ことね」
その声は、初めて“生きている”響の声だった。
自分めっちゃリスカ好きなんですよねwこれからリスカ投稿多くなるかもです、!きょうやとか有栖らへんもいずれか登場させたいなぁ、、(きょうやにはリスカさせることになりそう)