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青桃 カプ表現あり 若干曲パロ
地雷🔙
青視点――
雨上がりの夜だった。
部屋の窓を叩く雫の音を聞きながら、
俺は、
机の上に置かれた小さなドライフラワーをぼんやり見つめていた。
『これ、枯れても綺麗なんだって』
そう言って笑ったのは、
もう隣にいない“ないこ”だった。
⸻
付き合い始めた頃、
ないこはよく笑う人だった。
他愛もないことで腹を抱えて、
夜中まで通話して、
「会いたい」って真っ直ぐ言ってくれて。
俺はそんなないこの笑顔が好きだった。
けれど、
人気が出て、活動が忙しくなって。
少しずつ、
ふたりの時間は減っていった。
返信は短くなり、
通話も減り、
「おやすみ」の声すら、
どこか遠く感じるようになった。
⸻
「最近、無理してへん?」
ある日そう聞いた俺に、
ないこは少し黙ってから笑った。
『してないよ』
優しい声だった。
でも、
優しすぎる声は、
時々嘘を隠してしまう。
俺は気づいてしまった。
ないこが、
自分を傷つけないようにしていることに。
⸻
秋の終わり。
冷えた空気の帰り道で、
ないこは立ち止まった。
街灯の光が、
その横顔を滲ませる。
『……ごめん』
その一言だけで、
全部わかってしまった。
『まろといる時間、嫌だったわけじゃない』
『でも、今の俺じゃ……ちゃんと笑えない』
震える声だった。
泣きそうなのは、
きっとお互い様だった。
⸻
別れてからも、
俺はないこを忘れられなかった。
コンビニで好きだったお菓子を見れば思い出す。
冬の匂いで思い出す。
イヤホンから流れた曲で、
声まで蘇る。
“多分、私じゃなくていいね”
そんな歌詞が、
笑えないくらい胸に刺さった。
⸻
部屋には、
あの日もらったドライフラワーが残っている。
少し色褪せて、
でもまだ綺麗で。
まるで、
終わった恋みたいだった。
「捨てればいいのに」
そう思うのに、
どうしてもできなかった。
捨てたら、
本当に終わってしまう気がしたから。
⸻
ある日、
街で偶然ないこを見かけた。
隣には、
知らない誰か。
でも、
ないこはちゃんと笑えていた。
あぁ、
そっか。
その笑顔を見た瞬間、
俺はようやく理解した。
自分は、
ないこを苦しめながら繋ぎ止めたかったわけじゃない。
幸せでいてほしかったんだ。
たとえ、
その隣が自分じゃなくても。
⸻
帰り道。
冷たい風に目を細めながら、
小さく笑った。
「……まだ好きやなぁ」
その声は、
夜の街に静かに溶けていった。
桃視点――
夜の帰り道。
イヤホンから流れた曲に、
思わず足が止まった。
“多分、私じゃなくていいね”
その歌詞が、
笑えるくらい今の自分に似ていて。
ないこは小さく息を吐いた。
頭の中に浮かぶのは、
もう別れたはずの人。
――まろ。
⸻
別れを切り出したのは、
自分だった。
活動が忙しくなって、
余裕がなくなって、
好きなのに上手く笑えなくなって。
まろの優しさに甘えるたび、
苦しくなった。
だから終わらせた。
あの人を、
傷つけたくなかったから。
……なのに。
⸻
「ないこくん」
隣から名前を呼ばれて、
はっと顔を上げる。
今付き合っている人が、
不思議そうにこちらを見ていた。
『どうしたの?』
「……いや、なんでもない」
笑わなきゃ。
ちゃんと前を向かなきゃ。
そう思っているのに。
コンビニでまろが好きだったお菓子を見つけるたび、
笑い方が似てる人を見かけるたび、
冬の匂いがするたび。
心が勝手に、
あの人を探してしまう。
⸻
今の恋人は優しい。
ちゃんと好きだと言ってくれるし、
隣にいてくれる。
それなのに。
手を繋がれた瞬間、
頭に浮かぶのは別の手だった。
『寒いなぁ』
そう言って、
ぎゅっと握ってくれたまろの温度。
忘れたかった。
忘れなきゃいけなかった。
だから、
新しい恋をしたのに。
⸻
部屋に帰って、
机の引き出しを開ける。
そこには、
捨てられないままの写真。
ふたりで笑ってる、
馬鹿みたいに幸せそうな写真。
「……なんで残してんだろ」
消せばいい。
捨てればいい。
もう終わった恋なのに。
指先が震えて、
結局今日も閉まい込むことしかできなかった。
⸻
ある日。
街で偶然、
まろを見かけた。
少し伸びた髪。
変わらない笑い方。
でも、
隣には誰もいなかった。
声をかけようとして、
できなかった。
今さら、
なんて言えばいい?
自分から手放したくせに。
⸻
まろがこちらに気づいて、
少し目を見開く。
一瞬だけ、
時間が止まったみたいだった。
「……元気?」
先に笑ったのは、
まろだった。
優しくて、
昔と変わらない声。
その瞬間。
ないこの胸の奥で、
ずっと蓋をしていた感情が、
ぐしゃぐしゃに溢れた。
あぁ、
やっぱり無理だ。
他の誰かじゃ、
埋められなかった。
忘れたつもりだっただけで、
本当はずっと。
ずっと、
まろじゃなきゃ駄目だった。
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#病弱
コメント
3件
またまた素敵なお話しありがとうございます✨ 切ない…うるっときました😭←泣いてるやん めっちゃ好きです💕
ああ、これすごく切なくて、胸がぎゅっとなりました……。「笑えなくなった」って言葉が重くて。ドライフラワーがそのまま関係性の象徴みたいで、どちらの視点からも相手を想う気持ちがまっすぐに伝わってきました。再会シーンの緊張感、すごく好きです。続き、気になります。