テラーノベル
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ジャングルの簡易テント内で、ラジオのノイズが途切れ途切れに響く。
Roy Jacksonは泥だらけのブーツを脱ぎ、汗でべっとりしたシャツを脱ぎ捨てた。
ダイヤルを回すと、クリアな声が流れてきた。 「…人類史上、未だかつてない偉業が達成されました。アメリカの宇宙船が月面に着陸。二人の勇敢な宇宙飛行士が、月面に足を踏み入れたのです。世界中が感動しています…1969年7月20日の月面着陸から数週間経った今も…」Royは目を閉じた。
アメリカは熱狂し、世界中が注目している。月面に立つ英雄たち。
だが、ここベトナムではどうだ。泥と汗にまみれ、死の戦場にいる。
英雄たちと俺たちには共通点がある。祖国から遠く離れた場所にいること。死と隣り合わせのこと。
そして、祖国のために仕事に従事していることだ。
だが、この差は何だ。彼らは世界中から注目され、大きな名誉がある。未知への挑戦、探求を行う権利がある。俺たちに名誉は?
出国する前に反戦の大規模デモのニュースを見た。何のために戦地に赴くのか、従事する前から疑問に思っていた。ここで許される権利は、恐怖から逃げるための酒と薬だ。これで心を壊して帰っていく同僚を何人も見た。
彼らには恐怖はないのだろうか。「死への恐怖と未知への恐怖」——強い精神と使命感があれば克服できるものだろうか。
故郷に帰れることを、多くの者が「あと何日」とカウントダウンしながら耐え抜いてきた。一方で、任期終了間際に死ぬことを恐れる者も多く、特に最後の数週間は慎重になる兵士も多かった。俺はベトナムに来て大体10ヶ月。あと一ヶ月程で帰国できるが、周りとは違っていた。
帰国した後も不安は続く。故郷は都市部の貧困地域で、治安が悪く差別主義者の温床だ。居心地がいいと感じたことは一度たりともないし、戦場を経験すればこの掃き溜めも良く思えるものになるだろうと思っていたが、そんなことはない。
家に金がなく高校には行っていない。文字の読み書きも徴兵が決まってから独学で始め、今も続けている。
軍のマニュアルや地図の読解には大きく貢献してくれたが、職探しに貢献してくれるのかは分からない。Royはラジオを切った。外のジャングルからは、虫の鳴き声と遠くで兵士たちがはしゃぐ声が聞こえてきた。
何の前触れもなくRoyは上司のSergeant Harlan “Hank” Whitakerに呼び出された。Whitakerは年配の白人男性で、南部訛りが強く、Royのような黒人兵士を冷徹に見下す目があった。
誰かが問題でも起こして尻拭いでもされるのか。帰国までは目立たず大人しくしていたいのだが。 「Jackson、除隊間近だな。だがお前にしかできない仕事だ。上層部から極秘の協力要請が来た。科学者と技術者のエージェント集団を指定の場所まで護衛しろ。18人。斥候隊と合流するのが目的だ。道中、何があっても救助や応援を呼ぶことはできない。お前のジャングル経験を買われて隊長だ。確認しろ。」 Whitakerは大きめの茶封筒の極秘資料を渡した。
「俺は基地に残る。現場の指揮はお前に任せる。エージェントが無事到着したら、彼らの指示に従え。……ただし、米軍の命令は俺が下す。分かったな。」
Royは渡された封筒を開封し、資料に目を通す。
まず目標地点に疑問を持った。そこは戦線からも大きく離れていて、カンボジアの北部だった。何故緊張状態の今? しかも何のために?
ジャングルの行軍任務を拝命して2日後、エージェント達がRoyの元へ到着。翌日の早朝から出発した。
ヘリコプターで輸送可能なギリギリのところまで乗車し、その後は徒歩で向かう。密林の道のないジャングルを、Royが最前線に立ちマチェットを振りかざしながら、辛うじて人が通れるようにしながら進んでいく。
エージェント達はジャングルに全く慣れておらず、足元に隠れた穴や根っこで転倒したり、泥沼の泥濘で滑ったりしていた。
一人が持参した水を切らし生水を飲もうとしたところを、部下の兵士が咄嗟に止めた。「マラリア、デング熱、赤痢——感染リスクが高いんですよ。」 3、4時間ほど移動して川に出た。
運がいいことに氾濫はしておらず、人の足でも渡れそうであった。このペースでいけば暗くなる前に比較的安全な場所に簡易キャンプがたてられる。そう思ったが、ことはそううまくいかなかった。
エージェント達は自分たちの装備が川の水に濡れることを極端に嫌がり、ボートを展開するべきだと進言してきたのだ。
30分程口論になり、仕方なくエージェント達とその装備の為のボートを展開し、兵士たちは足で渡った。
想定外の出来事に時間を消費し、焦りを感じた。全員が渡り終えボートを収納し終えたころには日が沈み始めていた。
真っ暗闇の中、発電機と工事用照明を使いなんとかキャンプを建て一夜を過ごすことができた。
だが電力にも限りがある。エージェント達のエゴがなければ余計なリソースを消費しなくて済んだものを…
任務から3日目の夜。簡易テントでラジオを聴くRoy。
ラジオからはまた月面着陸のニュースが繰り返し流れていた。
アナウンサーの声が、興奮を抑えきれない調子で響く。
「…ニール・アームストロング船長のあの有名な言葉を、世界は今も忘れていません。『これは一人の人間にとっては小さな一歩ですが、人類にとっては大きな飛躍です』——月面に初めて足を踏み入れた瞬間、人類は未知の領域に踏み出したのです。英雄たちの勇気と探求心が、歴史に刻まれました…」
Royはテントの入り口から顔だけを出し、空を見上げた。
木々の隙間から覗く空は重く曇っていた。雲の向こうに月があるはずだ。
あの言葉が胸に刺さる。
一人の小さな一歩が、人類の大きな飛躍になる。
だが俺たちは? ここで踏み出した一歩は、泥に沈み、血に塗れて終わるだけだ。
英雄たちは名誉と未来を掴んだ。俺たちは、ただ「あと何日」で帰れることを数えて、耐えるだけ。
月に向かった一歩と、ジャングルで死ぬ一歩。
同じ「人類のため」のはずなのに、この差は何だ? Royはラジオを消した。
雲の先の月に思いを馳せながら、深い憂鬱に沈んだ。
5日目の昼前、目的地近くの原住民の集落に到着。
予め資料には付近に集落があることが記載されていた為、現地の言葉が分かる部下を一人連れてきていた。エージェント側にも何人か分かる者がいた。
さっそく最近の周りの状況とここを通った斥候隊の行方を聞くように命じ、その間、自分は集落の中を探索することにした。
敵意がないことを表すために武器を部下に預けた。とは言えベトコンが潜んでいる可能性もゼロではない。万が一の為に拳銃は携帯しておくことにした。
まず目に入ったのは建築様式だ。今まで見てきたジャングルで生活している人たちは高床式住居で屋根には草やヤシの葉を使用していた。
だがここは自然の岩場を利用していた。山の崖にある点在している天然の洞窟を居住区としていて竹や木材で足場の補強や洞窟の入り口間を繋ぐ橋を作っていた。
彼ら民族特有のペイントがそこかしこの岩に描かれていたが、自分には何を意味するものなのか皆目見当もつかなかった。
そしてよそ者を冷淡な目で見てくる住人。女性や子供は特にこちらを警戒しているようだった。正直無理もない。見ず知らずの人間が勝手に自分たちのテリトリーに入ってきて好き勝手しようとしているのだから。
居心地の悪さを感じさっさと探索を切り上げた。
現地民から情報を得るよう命令した部下から情報を共有してもらった。確かに2週間前に我々のような部外者がここを訪れていたという。資料の内容と符合する。
目的地までの案内を頼んだが全員に断られたという。彼ら曰く、そこはこの世とあの世を繋ぐ穴なんだとか。近づくだけでも命に関わるのだと。本気でその場所を恐れているようだった。
仕方ないので今日はここで夜を明かし、明日地図を頼りに自力で向かうことにする。
朝、現地民に止められながらも出発した。そう遠くないはずだ。道なき道を行き目的地にたどり着いた。
すぐ悪臭に気づいた。その元を見つけるのに時間はかからなかった。
変わり果てた斥候隊の兵士Aだった。ドックタグと資料の顔写真と一致する。
全員が緊迫する。
彼の周囲には空の薬きょうが散乱し、弾倉が空になるまで銃を乱射した形跡が見られ恐怖に顔がひきつったまま死亡していた。
奇妙なことに外傷は見つからず死亡した原因は素人目には分からなかった。
Royはすぐに部下たちに警戒態勢を取らせた。小銃に弾倉を挿入しすぐに発砲できるようにし二人一組に分け、周囲の安全を確認する。
エージェントの何人かは死体を調べていた。
数分後、部下から無線で連絡があった。兵士Aの死体の近くに彼のではない装備を見つけたというのだ。
確認すると、それは斥候隊の兵士Bのものだった。周囲に彼の姿は見当たらない。「無線で本部に連絡を入れろ。設定は絶対にいじるな」というメモと無線機が残っていた。
どうやら自分たちに残したメモのようだ。Royは無線の電源を入れた。
しばらくすると「作戦の進捗更新を確認。今日中に付近に輸送ヘリコプターが着陸できるヘリポートを作れ」と男の声が受信した。
Royは「周囲の安全を確認できていない、今日中にヘリポートを作ることはできない」と報告したが、返答は「計画に変更はない。すぐに作業にとりかかるように」だった。連絡は切れた。
怒りの感情が沸き上がり返答しようとしたが繋がらず、無線の知識がないため断念した。
部下たちを戻してヘリポートに適した場所を探し、雑草や木の根、岩を取り除いて平地を作った。作業は真っ暗になるギリギリで終わった。
俺たちの事を何だと思ってるんだ。
エージェント達が言うには兵士Aは発狂死したそうだ。恐ろしい何かに襲われたのか又は幻覚をみたのか、極限環境で神経が参ることは珍しくないが彼の場合は特に異常だ。
作業を終えた部下たちも夜の暗闇に落ち着かず緊張しているようだ。
夜中の3時過ぎだった。みんな起きていた。ヘリの音が近づいてきた。発煙筒で位置を知らせると、エージェントの追加チームが降りてきた。
ハザードスーツを着たインテリ連中数名と沢山の機械だった。
彼らはすぐにテントと機械を設置し始めた。大きな発電機が稼働し、建設用照明が真っ暗なジャングルに光を灯す。
Royは今までのストレスでエージェントの一人にありったけの感情をあたり散らした。「お前ら、何を企んでるんだ! 軍も国も信用できねえ!」「そもそも誰なんだお前ら」「何のためにこんなことを!!」
一通り罵倒し終えるとエージェントは表情を変えず
「今は自分の仕事に専念しろ、隊長」
とだけ返ってきた。
エージェントの一人が声をかけてきた。「次の任務だ。目的地に侵入する。君たちは我々の護衛をしろ」。
本当の目的地はこの周辺地域にある「洞窟」だと判明した。侵入口の在りかも確認済みだという。道理で手際が良かったわけだ。
洞窟内は異様だった。
入口をくぐった瞬間、ジャングルの蒸し暑さと湿気が一瞬で剥ぎ取られるように消え、代わりに乾燥した冷気が肌を刺した。
温度は急激に下がり、息が白く凍るほどではないが、肺に刺さるような冷たさがあった。
ライトを照らすと、地面は緩やかな下り坂になっていて、壁と天井はまるで完璧に研磨された黒曜石のように滑らかで、黒く光を吸い込む。
表面には微かな幾何学模様のような直線が、無数の角度で交差し、規則正しく並んでいる。
だが、それらは動いたりしない。ただの静かな線——機械的な精密さで刻まれたものだ。
何より異常だったのは天井の高さだ。Royの懐中電灯の光を最大限に伸ばしても、天井は届かない。20メートル、いやそれ以上はあるだろう。人間が通ることを想定していない——いや、人間など眼中になかったような、途方もない高さだった。
壁同士の間隔も異様に広く、10人並んで歩いても余裕がある。まるで巨人が歩くための回廊だ。
足音がほとんど反響しない。音は吸い込まれるように消え、代わりに低く一定した振動だけが、足の裏から骨に伝わってくる。空気は重く、息をするたびに肺が圧迫される感覚。
ライトの光さえ、壁に当たると奇妙に弱まり、影が濃く長く伸びる。
「…ここ、誰が作ったんだ?」
部下の一人が震える声で呟いた。誰も答えられない。
確かに不気味だ、近くの集落の原住民達によって作られたとは到底思えない。掘削技術に加工技術、現代の科学をもってしても作るのは難しいだろう。
エージェントたちでさえ、初めて見るような顔で周囲を見回していた。
すべてが無機質で、冷たく、感情のない完璧さだった。
生き物が作ったものではない——そんな確信が、全員の胸に沈殿する。
突然、ライトの光が壁際に座り込んだ死体を照らし出した。資料にあった斥候隊の一人Private Lee “Shorty” Kimだった。
外傷は一切ない。目は見開かれ、口は半開き。だが血も傷もない。ただ、顔に刻まれたのは、理解を超えた純粋な恐怖だった。兵士Aと同じだ……
全員に緊張が走る。
膝の上に落ちていた小さなノート。ページは震える手でめくられ、最後の1ページだけが異様に乱暴に書かれていた。
鉛筆の先が何度も紙を突き破るほど強く押さえつけられ、文字は大きく歪んでいる。
「明りを消してはだめだ」
一瞬、洞窟内が静まり返った。
「こいつ、こんなところで……」
部下の一人がノートを奪い取ろうとしたが、Royはそれを押さえた。
「待て……これ、俺たちへの警告だ。光を消すなって……」 その言葉がきっかけだった。
誰かが呟いた。「じゃあ、このライトを消したら……俺たちもあんな風に?」
次の瞬間、誰かが懐中電灯を落としそうになり、慌てて握り直す。
「消すな! 絶対に消すな!」
「でも発電機の燃料が……いつまで持つかわかんねえぞ!」 そして——闇の端で、それが現れた。
ライトの光が届かない境界線で、濃密な闇が凝縮し、ゆっくりと形を成した。
巨大な黒い影——翼のようなものを広げた不定形の塊。体は部分的にしか実体を持たず、触手のような突起が無数に蠢き、表面は光を拒絶する腐食性の粘液のように見えた。
そして、中央に浮かぶ三つ葉の燃えるような目。赤く、輝き、Royの視線を直接貫くように睨みつける。あの目は、ただ見つめるだけで魂を焼き尽くすような熱を帯びていた。
影が這うように近づく。触手の一つが、近くの兵士に触れた瞬間——兵士の皮膚が溶け始め、悲鳴が途切れる。外傷はない。
ただ、即座に硬直し、倒れる。Shortyと同じ、純粋な恐怖の表情で。
「…あれは……闇そのものが……生きてる!」
誰かが叫んだ。 恐怖は爆発した。
無作為に発砲する者、ライトを振り回して影を追い払おうとする者、入口へ逃げ出す者。
「味方に当たる! やめろ!」Royは叫んだが、声は闇に飲み込まれる。
銃声が反響し、耳を劈く。
数人で取り押さえようとするが、誰もが震え、ライトの光が揺れる。
影は光に触れるとわずかに後退するが、すぐに闇の奥から再び迫ってくる。
Royはノートを握りしめ、歯を食いしばった。
もう後がない。
ノートをポケットに押し込み、先へ進むしかなかった。ひたすら坂を下って行く。
気配はまだする。追ってきている。トンネルの最深部で、Royはついにそれを見つけた。
巨大な台座の上に、黒く光沢を帯びた多面体が鎮座していた。
不規則な角度を持つ結晶体は、完璧な幾何学形で、内部に赤い線が静かに走っている。
光を当てると、表面が奇妙に歪み、Royの視線をねじ曲げる。まるでこの石が、周囲の空間そのものを計算されたように曲げているかのようだった。
周囲を包む闇の塊が、ゆっくりと蠢いている。
先ほどの影——三つ葉の燃えるような目を持つ闇の存在——が、この結晶体を守るように周りを覆っていた。 Royの心臓が激しく鳴る。
「明りを消してはだめだ」——Shortyの最後の言葉が脳裏に蘇る。
だが、ここで光を維持し続けることは不可能だ。闇は光を飲み込み、近づいてくる。 Royはとっさに台座に駆け寄り、その結晶体を掴んだ。冷たく、重い。指先が震える。
そして、全力で地面に叩き落とした。
ガシャン!
結晶体が砕け散る音が、トンネル全体に反響した。
瞬間、赤い線が激しく閃き、爆発的な白い閃光が周囲を埋め尽くした。視界が真っ白になる。
闇の塊が苦悶の咆哮のような音を上げ、光に溶けるように後退し、消えていった。 だが、それは同時に「何か」の解除でもあった。
台座の下から、低い唸りが響き始める。地面が微かに振動し、壁の黒曜石のような表面に、無数の細かな赤い線が浮かび上がる。
このトンネルそのものが、巨大な装置の一部だった。 テレビの砂嵐のような雑音が、頭の中に直接響き始める。
やがて、理解不能な言語が数十秒流れ——
「同時代性質を取得中、英語を設定。『聞き取り不能』」を起動した者に最初で最後の忠告と警告だ。使用するな。直ちにこの装置を破壊せよ。それが、唯一にして最後の理性ある選択だ。
無知のまま時間に介入するな。たとえ一瞬の好奇心であれ、使用すれば歴史は塗り潰され、君たち自身が『なかったこと』となるだろう。宇宙の秩序を根底から破壊し、無限の並行する破滅と狂気を生み出すだけである。数え切れぬ歴史の枝を失い、存在の連続性を永遠に断ち切られ。残るのはただ後悔と虚無である。
目もくらむ閃光の中、Royの意識は遠のいていった。 最後に浮かんだのは、あのラジオの言葉だった。
「これは一人の人間にとっては小さな一歩ですが、人類にとっては大きな飛躍です」——
俺たちのしたことが、人類の大いなる過ちの一歩にならんことを……
そう願う間もなく、Royの意識は途絶えた。
中間報告書(調整版)
対象オブジェクト:未命名(ナコト写本関連)
確保日時:1969年8月5日
担当:歴史介入研究チームおよび協力米軍部隊
ナコト写本の記述と一致する地域において、組織及び協力米軍調査チームがオブジェクトを発見・確保しました。
確保は1969年7月20日の月面着陸成功直後、国際的な注目と報道が集中していた時期に実施されました。この社会的混乱およびメディアの焦点が月面探査に向いていた隙を活用し、作戦の秘匿性と迅速な現場封鎖が実現されています。 発見時点でオブジェクトは既に起動状態にあり、現在はアイドリング(待機)モードで稼働中です。
エネルギー出力は安定しており、外部からの入力がなくても微弱な赤色光パルスを周期的に発しています。 起動シーケンスの痕跡が確認されており、一度何らかの活性化が行われた形跡があります。しかし、活性化による具体的な時空間変化の記録は一切残っておらず、改変が不可逆的であった場合、現実のどの部分が影響を受けたのか、あるいは影響を受けていないのかを特定することはできません。 ナコト写本の該当記述(断片XVII-3b)では、「時間の枝を断つもの」「光の鍵を砕いた者に最後の警告を与う」とあり、本オブジェクトの起動時警告が光の強弱、波長、音の周波数、言語の順で発生することは確認できましたが、警句内容は起動時の一度きりのため詳細は不明です。 本プロジェクトにおける金銭的・人的リソースの消費は想定の範囲内に収まっています。
現在、世界終焉シナリオを回避するための鍵となる可能性を最優先で調査中です。
私見-人類は月へ一歩を踏み出した。
その一歩が世界の目を奪っている間に、我々は別の「一歩」を踏み出した。
この装置は破壊するのではなく、制御する価値があるかもしれない。
——人類が自らの終焉を回避できる唯一の切り札として。
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読了しました。月面着陸の「英雄」とベトナムで泥まみれの兵士たちの対比が冒頭から胸に刺さります。特に「同じ人類のためなのにこの差は何だ」というロイの内面が生々しくて…。洞窟の異様な造形や「明かりを消してはだめだ」という警告、ラストの組織の冷徹な報告書まで、一本筋の通ったダークSFになっていて続きが気になります。設定の設計がしっかりしてて、世界観に引き込まれました。