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カーテンの隙間から差し込む朝の光が、ゆっくりと部屋を満たしていく。
先に目を覚ましたのは、ちょんまげだった。ぼんやりとした意識の中、最初に感じたのは――温もり。
背中に回された腕と、すぐ後ろにある体温。
「……あ……」
小さく息を漏らす。
そうだ、昨日。帰りを待って、不安で、でも抱きしめられて――そのまま眠ってしまったのだ。
ゆっくりと振り返ると、まだ眠っているターボーの顔がすぐ近くにあった。
普段はきりっとしていて、どこか近寄りがたい雰囲気すらあるのに、寝ているときは驚くほど無防備で、少しだけ幼く見える。
「……かっこいい……」
思わず、声に出してしまう。
こんな人が自分の恋人で、しかも自分をあんなふうに求めてくれるなんて。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
そっと手を伸ばして、ターボーの頬に触れようとして――
「……なにしてんの」
「ひゃっ!?」
低い声がして、慌てて手を引っ込めた。
いつの間にか目を開けていたターボーが、少しだけ笑いながらこちらを見ている。
「お、おはよう……」
「おはよ」
まだ寝起きの掠れた声。
それだけで、心臓が変に跳ねる。
「起きてたなら言ってよ…」
「今起きた」
くあ、と小さくあくびをしながら、腕の力を少しだけ強める。逃がさない、とでも言うように。
「…昨日、ちゃんと寝れたか?」
不意に真面目な声で聞かれて、ちょんまげは少しだけ目を伏せた。
「……うん。ターボーが……いっぱい、してくれたから……」
「いっぱいってなんだよ」
「……キスとか……ぎゅうとか……」
言いながら恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
ターボーはくすっと笑って、額に軽くキスを落とした。
「それで安心できるなら、いくらでもしてやる」
「……ほんと?」
「ほんと」
即答だった。
その迷いのなさが、また胸に響く。
「……昨日、ごめんね」
「なにが」
「不安になったりして……」
ぎゅっとシーツを握る。
「ターボー、疲れてたのに……」
言い終わる前に、顎を軽く持ち上げられる。
「そういうの、いらねえ」
真っ直ぐな視線。
「不安なら言え」
「……」
「我慢される方が、嫌だ」
その言葉に、喉がきゅっと締まる。
「……うん……」
小さく頷くと、ターボーは満足そうに息をついた。
「てか」
「?」
「俺昨日、風呂入ってねえ」
「あ……」
言われて、ちょんまげは目を丸くする。
「じゃあ…入ってくる?」
「いや」
ターボーはにやっと笑って、更に距離を詰める。
「一緒に入るか」
「えっ」
「どうせまだ時間あるだろ」
「ま、待って…朝からはちょっと…!」
慌てるちょんまげを見て、ターボーは楽しそうに笑う。
「一緒に入ろうって言っただけだろ。何想像してんだよ」
「えっ…いや…それは…!」
「冗談」
「絶対嘘……」
「半分な」
そう言って、少し膨れるちょんまげに軽くキスをする。
朝の柔らかい光の中で交わすそれは、昨日の夜よりもずっと穏やかで、優しかった。
「……ターボー」
「ん?」
「今日も……がんばろうね」
会社では社長と社員。
でもこうしているときだけは、ただの恋人同士だ。
「おう」
短い返事。
けれどその手はしっかりと、ちょんまげを抱き寄せている。
「でももうちょいこのまま」
「……うん」
素直に頷くと、ターボーは満足そうに目を閉じた。
腕の中は、相変わらず温かい。
不安なんて、もうどこにもない。
穏やかな朝の中で、二人はもう一度だけ、ゆっくりと同じ温もりに包まれていた。
END
#ターボー