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智絵里が目を覚ますと、キッチンからいい匂いが流れてくる。

昨夜は一花の病院に行った後、飲み会だった恭介を待たずに寝てしまった。それなのに、恭介は既に起きて朝食を作っている。

|寝惚《ねぼ》け|眼《まなこ》のまま布団の中で丸まっていると、恭介が覆い被さってくる。

「いつまで寝てるつもり? 朝食出来たけど」

「……飲み会の翌朝なのに、なんでそんなに元気なの……」

「だってほとんど飲んでないし。ウーロンハイと言って、烏龍茶飲んでる」

「……なんで飲まないの?」

「人前で酔うのって好きじゃないんだよ。いつでも隙のない篠田で通したいからさ。まぁ智絵里もお酒飲めないし、俺が隙を見せるのは智絵里の前だけでいいんだ」

恭介は智絵里の上から下りると、隣に肘をついて寝転がる。その様子を見ていた智絵里は、寝返りを打つと恭介に抱きついた。

「昨日は先に寝ちゃってごめんね……」

「俺は逆に寝ててくれた方が安心するけどね。どうだった? 赤ちゃん」

「うん、産まれたばかりですごくかわいかった……」

「いいなぁ、俺も行きたかった」

「退院して落ち着いたら是非って先輩が言ってたよ」

「じゃあその時はお祝い持って行かないと」

恭介は智絵里の頬にかかった髪をよけると、彼女が浮かない表情をしていることに気付く。

「何かあった?」

恭介に言われて智絵里は目が泳ぐ。

「言いたいことは言ってよ。受け止めるって言っただろ?」

そう言われて、智絵里は力が抜ける。

「恭介は子どもは好き?」

「まぁ、好きかなぁ。真ちゃんかわいいし。智絵里は?」

「うん、普通に好き。このまま恭介と結婚して、子どもが出来て、家族が増えたら素敵だなって思う」

「そうだね……」

一花には言えなかったこと。恭介にしか言えないことがあるの。

「……ただね、自分があんな目に遭ったから、もし自分の子どもが私の目の届かないところで何かあったらって考えると怖くなるの……もし守ってあげられなかったらどうしようって……。恭介にプロポーズされて、母親の一花に会って、未来が想像出来る様になったら急に怖くなった……」

「そっか……」

恭介は智絵里の体を抱きしめ、そっと頭を撫でる。

「確かに不安になるよな……。ずっと見ていられるわけじゃないし、その子が話してくれるかもわからない。でも子どもの変化に気付ける親になりたいって俺は思うよ。もし子どもが助けを求めたら助けたいし、一緒に戦える親になりたい」

「……一花も同じようなこと言ってたかも……」

恭介の唇が額に触れる。

「智絵里もさ、一人で抱え込まないでよ。どんなことも共有するって約束。俺たちもちゃんと話し合えるように、なんでも言い合っていこうな」

「……うん」

「さて….温かいご飯を食べるか、それとも一回イチャイチャするか、どっちがいい?」

「……温かいご飯を食べて、洗濯して、掃除しないと」

「……だよね。そう言うと思ってた」

「で、その後にイチャイチャはどう?」

「……智絵里ってさ、一回突き落としてからの返しがハンパないよね」

「嫌ならいいんだけど」

「冗談です。いっぱいイチャイチャさせてください」

恭介といると、感じている不安が軽減する。それは彼が欲しい言葉をくれるからだと思うの。

喜びだけじゃない。悩みも不安も分かち合えることが、こんなにも心を安定させてくれる。

熱く甘く溶かして

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