テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
砲声が空を裂き、地面はひび割れた絵画のように波打つ。「まあ、きれいな舞台装置ね。血と泥と煙、カラフルに混ざって、誰も片付ける気配はないけど。」
私は泥にまみれたブーツで、また一歩を踏み出す。足元で兵士たちが転び、起き上がる気力すら失っている。まるで、私の専用小道具みたいに。
空は灰色に濁り、砲弾が落ちるたびに空気が震える。
「ほら、皆さん、拍手してくれてありがとう。こんなに賑やかな戦場は初めてでしょ?」
でも、その拍手は死者の叫びであり、叫び声は皮肉なBGMになって私を締め付ける。
フランスは、崩れかけた塹壕の向こうで必死に手を振る。
「泣き顔がまるで舞台顔負けね。…だけど、その涙、泥に混ざって、どこにも届かないわよ。」
イギリスの兄貴分は、海の向こうから冷ややかな視線を投げてくる。砲弾の雨に紛れて、まるで私をからかうように。
東ではロシアの巨躯が、雪や泥の中でゆっくりと動く。
「踏み込むたびに地面が怒ってるみたい。可愛い、いや、面倒くさいわね。」
蹴飛ばしたはずの足元がまた揺れる。皮肉ね、自分の力が逆に押し返されている。
そして、あの新参者アメリカ。無邪気に飛び込んで、銃口を向けてくる。
「舞台裏から見ていたくせに、急にセンターに出てきたわね。若いってだけで大胆なことをするものよ。」
でも、弾丸が近くを飛ぶたび、皮肉の笑いは少しずつ乾いた涙に変わる。
私は笑って言う。
「結構な騒ぎね、皆さん。私が主役だってこと、やっと理解した?」
血と泥、煙に包まれた戦場で、私は皮肉の冠を頭に据えたまま、前へ進む。
「でも、舞台はまだ終わらない。観客たち、もう少し私の演技を楽しんでくれるかしら?」
砲声の合間に、泥と血の匂いが鼻を突き、風が耳をかすめる。
戦場――私の舞台は、皮肉で満ち溢れていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!