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キラキラ光るその髪に、僕は心を奪われた。虚空を眺める瞳に映るものを知りたいと思った。真っ白な肌に固まった表情。すべては僕の理想そのもの。能面より表情があり、能面より表情がない。よくわからない矛盾した存在。なぜ?問いかけても反応はない。やはり君は、僕の手製の偶像なのかもしれない―――そう、感じた。
「お母さん、あれなぁに?」
3月3日、おばあちゃんの家で初めて雛人形を見た。存在は知っていたけれど、男子三人に父・母で構成される僕の家には兜しかなかったから、間近で見るのは初めてだった。横で僕の手を握っていた母は言った。
「あれは、雛人形。女の子の成長を願うものなのよ。例えば、、、そう!射理達でいう兜みたいなもの、、、!」
雛人形を射理は二度見した。だが、視線はすぐ足元に落とされた。
そうじゃない。僕が伝えたかったのはそういうことじゃない。五段目にいる二人の男性についてだ。弓を構えた二人の男性は、凛々しくもどこか寂しげな顔をしている。お雛様とお内裏様の周りは厳かな雰囲気だが、その二人だけ纏う空気が違う。
(・・・誰かを待っているのかな?それとも、ただの護衛か、、、、)
弓を構えているのだから、二人の護衛に違いないと思った。でも、何か違う気がすると違和感を感じつつも、射理はその部屋を後にした。
「・・・カタン」